4 / 6
恐怖ー2
しおりを挟む
私を抱き抱えたまま男は移動する。扉を潜り中に入ると、すぐに一つの部屋が広がっていた。そして、そこにも木造の手足はあった。
上から吊るされているもの、床に転がされているもの、机に横たわっているもの――たくさんの手足が、力なくそこにある。まるで、切り落とされた私の足のように。
そしてもう一つ、私は見つけてしまった。瞬間、内臓が掴まれたかのように息苦しくなる。
私の目に映ったのは――映してしまったのは、のこぎりや妙な形の金属棒、それから多くの見慣れない武器だった。刃のついたものも、どう使うか分からないものまである。
男は私の恐怖など見てみぬ振りで、私を部屋の隅の台に――解剖台らしき場所へと下ろした。固いかと思いきや、そこは意外と柔らかかった。
「さて……」
男は横にあったらしき椅子に腰掛け、私を見下ろす。初めて目にした男――青年はかなり若く見えた。
青年はそれ以上何を言うでもなく、ただ私の全身を舐めるように見る。怒気を含むような顔は、鬼のようだった。
これからどうなるんだろう。解剖されて死ぬのかな。四肢を切られたまま生きるのかな。
近い未来での出来事を、幾つもシュミレーションする。ただ、どうなるにせよ絶望しかなかった。
「なんと言えばいいのか分からないんだけど……お疲れ様」
……え?
夢が入り込んだかのような言葉に、思考がストップする。労いなんて、私の記憶には一度だってない。
青年は頭を掻きながら、何やら考える仕草をしだした。
「えと、君にとって僕は他の主人と変わらない酷い奴かもしれない。ほら、現にお金で買ったわけだし……んん、上手く言えないな」
そして、言い訳染みた口調で言葉を紡ぎだす。固い表情とは裏腹に、声色が監視官とは違い穏やかだ。それに、内容もやはり夢の世界を錯覚させる。
「あ、忘れてた。まず最初にすることがあったね。ああ、やっぱり僕はどうも人と話すのが苦手らしい、うん」
最初にすること――含まれた不透明な何かに、一瞬緩みかけた恐怖が蘇る。反抗させない為の調教か、それとも全身のチェックか――。
「僕の名前はアーリュ。君のような子にずっと来てほしかった」
上から吊るされているもの、床に転がされているもの、机に横たわっているもの――たくさんの手足が、力なくそこにある。まるで、切り落とされた私の足のように。
そしてもう一つ、私は見つけてしまった。瞬間、内臓が掴まれたかのように息苦しくなる。
私の目に映ったのは――映してしまったのは、のこぎりや妙な形の金属棒、それから多くの見慣れない武器だった。刃のついたものも、どう使うか分からないものまである。
男は私の恐怖など見てみぬ振りで、私を部屋の隅の台に――解剖台らしき場所へと下ろした。固いかと思いきや、そこは意外と柔らかかった。
「さて……」
男は横にあったらしき椅子に腰掛け、私を見下ろす。初めて目にした男――青年はかなり若く見えた。
青年はそれ以上何を言うでもなく、ただ私の全身を舐めるように見る。怒気を含むような顔は、鬼のようだった。
これからどうなるんだろう。解剖されて死ぬのかな。四肢を切られたまま生きるのかな。
近い未来での出来事を、幾つもシュミレーションする。ただ、どうなるにせよ絶望しかなかった。
「なんと言えばいいのか分からないんだけど……お疲れ様」
……え?
夢が入り込んだかのような言葉に、思考がストップする。労いなんて、私の記憶には一度だってない。
青年は頭を掻きながら、何やら考える仕草をしだした。
「えと、君にとって僕は他の主人と変わらない酷い奴かもしれない。ほら、現にお金で買ったわけだし……んん、上手く言えないな」
そして、言い訳染みた口調で言葉を紡ぎだす。固い表情とは裏腹に、声色が監視官とは違い穏やかだ。それに、内容もやはり夢の世界を錯覚させる。
「あ、忘れてた。まず最初にすることがあったね。ああ、やっぱり僕はどうも人と話すのが苦手らしい、うん」
最初にすること――含まれた不透明な何かに、一瞬緩みかけた恐怖が蘇る。反抗させない為の調教か、それとも全身のチェックか――。
「僕の名前はアーリュ。君のような子にずっと来てほしかった」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。




愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる