おいしい中華の作り方

有箱

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中編

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 念入りに手を洗い、第一に取り掛かかったのは解凍だ。我が家の場合、冷凍保存ばかりゆえ特に必要となってくる。
 まず、選ばれた精鋭たちを冷凍庫から取り出した。

 鳥むね肉に、冷凍豆腐と生うどん。それから、かぼちゃも忘れてはならない。すりおろしたニンニクと生姜も出しておこう。

 その中で、先陣を切るべきだと判断したのは鳥肉だ。揚げる前の一手間を施さなければならないこの子が、レンジ一番乗りに相応しいだろう。

 皿にキッチンペーパーをスタンバイする。これは解凍中に出てきたドリップを吸収する役割を持つ。纏っていたラップを外したら肉をドーンと置き、庫内に放り込んだら後はお任せだ。
 
 その間に、三番手であるかぼちゃを耐熱ボウルにインしておく。

 なぜ、二番手ではないかと言うと、間に豆腐が入るからだ。パックごと凍らせてある為、少し自然解凍しないと外れないのである。かなり強情なため、無理強いはお勧めしない。手が死ぬことになる。
 
 そして待機児童――ならぬ待機食材として、最後にじゃがいもを細切りする。
 この子に至っては、解凍ではなくレンジ調理の為だ。早く火が通るこの技術は、忙しい主婦には救世主のようなものだろう。
 
 さてさて、待っている間に次の行程に移るとするか。
 乾物カゴより登場されし、春雨くんと干し椎茸くんだ。

 長持ちする乾物は、買っておいて損のない食材と言えよう。こんな凄いものを生み出した偉人だれかには感謝だ。彼らを水に浸し、膨らんでもらうことにする。



 次に、春巻きの皮を生み出すべく、材料をボウルに放り込んだ。小麦粉、片栗粉、塩、水の四種を混ぜておく。

 一般的に市販品を使いがちな皮だが、結構簡単に作れてしまう。少量から出来るとあって、今じゃ専ら手作りだ。
 それから、生うどんを茹でるお湯を――。
 
 ここでレンジの呼び声が聞こえた。

 解凍した肉を取り出し、二番手の豆腐を突っ込む。完了したら、すぐさま次の行程へ。
 肉の下ごしらえ、これは唐揚げを絶品する為の重要な行程である。

 ここで登場するのがフォークくんだ。恐らくは想像通りの使い方をする。北斗〇裂拳を食らわせるのだ。

 ある程度蜂の巣にしたら――当然、目に見えて大きな穴は出来ない――大きすぎず小さすぎず、繊維を絶つ形で切って行く。それを大きめのボウルに投入し、ゆっくりと水を注ぐ。これで第一行程は完了だ。
 水を含み大きくなってくれることを期待し、次へと移った。

 後で加工できるよう、先に生うどんを茹でておく。冷めてまうやんと思うかもしれないが、その方が好都合なのだ。

 ここで再びレンジに呼ばれ、回収と見送りを行った。



 湯気を発する豆腐を水で冷ます。時間があれば自然に冷めるのを待つが、今日は時短で行きたい。火傷のリスクが高い食材ゆえ、取り扱いには十分注意だ。

 中まですっかり冷めたら、豆腐から水を絞り出す。ある程度絞ったらボロボロにし、油を敷いたフライパンにゴーだ。水と油の喧嘩音が聞こえる。ここで更に水分を飛ばしたら一旦保留としよう。

 因みに、この豆腐は肉の代わりである。冷凍豆腐が鳥そぼろもどきになると知った時は、大いに感動したものだ。
 
 次に、茹で上がったうどんをザルにあける。こうしている間に、レンジが一仕事終えたようだ。

 ホッカホカになったかぼちゃから、ふわんと良い匂いがする。なぜ芋栗カボチャと言うものはこれほど人類を魅了するのか。
 どうれ、このまま一口――うん、美味い。それが肥満の元になるぞとは言うまい。摘まみ食いだって立派な仕事だ。

 続けて伸びてしまいそうな手の行先を変え、じゃがいもを送り出した。
 かぼちゃが温かい内に砂糖を入れ、よく混ぜる。シンプルながら間違いなしの、かぼちゃ餡の完成だ。今から、おやつタイムが楽しみである。
 
 さてさて、肉の方に戻ろう。



 ボウルの水を捨てると、期待通り大きくなった肉が現れた。今から、この子達に味をつけてやりたいと思う。

 出しておいたニンニクと生姜を調味料と合わせていく。醤油の香りが鼻を擽った。豆と言うものはこんなに美味しい調味料まで生み出してしまうのだから本当に偉大である。

 少しばかり肉を揉んだら、再び放置タイムだ。肉ちゃん、あと少し待っていなさいね。
 
 えっと、次は。そうだ、椎茸と春雨を忘れていた。
 すっかり色づいた水から出し、椎茸スライス&春雨ざくぎりの二技を炸裂させる。無事に決まったら、先ほどのぼろぼろ豆腐広場にダイブだ。

 この時、戻し汁は捨てずに取っておく。旨味が出ている汁だ、活用しなければモッタイナイ。

 レンジが鳴いた。丁度じゃが芋も出たがっているようだ。絶妙なタイミングに一人ドヤッとしながら、ほこほこのじゃが芋も投入した。

 これから、この子達は一体化し、春巻きの具になる。じゃがちゃんは、たけのこの代用として使うのだ。アレンジレシピではあるが、これが以外と旨い。

 火を付けて、軽く炒めながら調味料を入れてゆく。食材に火は通っているので、味が回ったら火を止めても良い。これだから、レンジ調理は欠かせない。



 即効で巻いては手が悲鳴を上げるので、冷ましている内に次なる作業へ移行だ。

「お母さん、僕手伝うことある?」

 勉強に勤しんでいた息子がやって来た。調理の音にお腹を空かせ、状況観察も兼ねて来たのかもしれない。トントンとかグツグツとか、料理の音は魔法の音だから。

「それじゃあ、このうどんを潰してお餅みたいにしてくれる?」

 袋に入れ、しっかりと口を結んだものを渡す。

「うどん、潰しちゃうの?」

 息子は不安げにしつつも、結び目でなくうどんを鷲掴みにした。この容赦のなさは期待出来そうだ。

「うん、美味し~いものに変身するから楽しみにしててね」
「分かった、頑張る!」

 意気込むと、どうやって潰すつもりなのかリビングへと戻っていった。案の定、凄まじい音が聞こえた。
 
 息子が格闘している内に、私は春巻きの皮を錬成しよう。
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