黒崎くんには秘密がある

有箱

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 翌日も見事な公演がされ、皆が騙されていた。それからも数日に一度開演され、疑いを知らない教室は波に飲まれる。

 私はというと、偽の現象だと知って以降SNSへの投稿はやめた。ただ、クラスメイトの書き込みは見るが。そこには恐怖と、逃げたいとの嘆きが多く添えられていた。実際、何人か転校した。狙い通りと言うわけだ。

 傍観者として観劇しながら、ふと新たな可能性を見つける。場面全体ではなく、黒崎くんの表情を注視した結果、浮いてきた。

 もし正解ならば、今のままではいられない。いや、いたくない。怖いものは怖いけど。
 
「……あ、もしもし黒崎くん。今家?」

 自室の布団に潜り、体を畳む。現在時刻は七時、居場所はパターンから推測済みだ。警戒を携えた肯定が戻る。条件を満たしたところで、頭で練習した問いを声にした。

「あの、もしかしてなんだけど、花川さんに脅されてたり……する?」

 メリットの見えない行為を、続ける理由が分からなかった。だが、これなら納得がいく。

「まぁ……」

 泡のような答えが耳に貼り付いた。表情を描かせる声に確信する。見ていた未来を現実に引き寄せ、決心と共に囁いた。

「わ、私が手伝ったら、早く終わるかな」
「えっ、いいの?」

 喜色の滲む、少し意外な声色に惑う。恐怖がぶりかえしたが飲み込んだ。撤回はしないよう、胸の奥に閉じ込める。

「あ、でも、もし失敗しちゃったらどうしよう」
「うーん。そしたら僕ら二人殺されるかもね」

 冗談でしょーーなんて笑えなかった。
 
 それからは、推理小説や化学を学び直し、私達は不可解な事件を編んでいった。クラスの反応が痛くはあったが、これは使命なのだと振り切った。秘密を知る私だけが、黒崎くんを助けられるのだから。
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