神さまどうか、恵みの雨を

有箱

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復讐(2)

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 目的を鮮明にしたなら、次の行動は自ずと見えてくる。翌日、僕が向かったのは祈りの場だった。
 呪いの接近に、場にいた全員が嫌悪を晒しはじめる。祈りの担当者まで、作業を中断して一緒になっていた。
 だが、今は何もかも気にならない。言葉も態度も空気にし、一心に空間へ侵入する。

「僕にも願わせてもらえませんか」
「お前が? 聞いて下さる訳がなかろう。下がれ穢らわしい」

 神の身前らしからぬ様相で、顎を上下に追い返された。だが、敢えて祖母のように微笑む。

「もしかしたら、聞いて下さるかもしれないじゃないですか!」

 少し声量を上げただけで、村人は竦んだ。だが、怒りを持ち去る気はなかったらしく、僕を一発殴り去ってゆく。見世物でも眺めるような、細かな声々が耳を擽った。

「神さま、お願い決めました」

 村人に届かない声で呟く。

「神さま、どうか雨を!」

 続けて張り上げると、擽っていた声が止んだ。

『それでいいのか?』

 浅く首肯する。

『優しいんだな、村の為に願ってやるのか?』

 ゆっくり首を横に振る。真っ直ぐに見つめた空は、酷く青々しかった。数分後、黒雲に満ちているとは誰も思うまい。
 覚悟を決め、神さまにだけ届くよう願いを唇で紡いだ。

『お前はそれでいいのか?』
「はい、どうか恵みの雨を」

 語尾が切れると同時に、突然風が雲を形成しだす。急な天変地異に、途絶えていた声が騒ぎ始めた。一つ、二つと雫が土に円を描く。一人の村人が言った。
「彼はもしかして、神の申し子だったのでは?」と。
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