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はっと目を開くと、黒い空間にいた。意識が戻ったことに驚いてしまう。
だが、同時に負けも自覚し、現実に潰されそうになった。
「お疲れ様、水城くん」
「神さま頼む、俺は死んでもいい。だから穂乃香だけは助けてくれ!」
「うん、いいよ」
「え」
「おまけしてあげる。言えてはいなかったけど、答えは分かったんだろう?」
「あ、あぁ」
「じゃあ、正解を言い当ててよ。答えはだーれだ」
あまりにもあっさりと肯定され、逆に不審だ。
ただ、最終的には穂乃香が助かればそれで良い。だから、まずはゲームを終わらせよう。
「神さまは――」
名を呟くと、空間に人が現れた。最後に聞いた声の主だ。
見慣れない笑みを湛え、立っていたのは白賀だった。
「正解だよ。おめでとう」
「……なんで」
「あっさりおまけした理由のなんで? まぁ、どうせ全部忘れちゃうし教えてあげよう」
反応する隙も与えず、神さまは胸に手を当てる。にしても、奇妙な笑みだ。
「この子もね、ゲームをしていたんだ。気付かれないよう、君を四回殺せたら勝ちってルールでね」
「白賀も何かを変えようとしたってことか?」
「それは違うかな。この子の場合、個人的に誘ったから」
「なんでだ?」
「選択の為のゲームが必要だったから。都合上、君かこの子のどちらかが死ななきゃいけなくてね。だから、この子に委ねた。勝てば自分が生きて君が死ぬ。負けたらその逆になるって言ってね」
「………それじゃあ」
「あの感じだと、最後に選んだんだろうね、君の命を。でも良かったじゃないか。おまけはあれど君は勝った。だから望み通り妹と共に生きられる
「……神さま、やっぱあんた酷すぎだろ」
「かもね。ぶっちゃけると、君が勝とうが負けようがどっちでも良かったしね。だから、攪乱を前提に全員共通の点をヒントにしたりねー」
「え、それって」
「まぁ、話はここまでにしよう。全部仕方ないことだったのさ。私もこれが仕事だからね」
「仕事?」
「ああ。折角だ、最後に君に教えてあげよう」
白賀の姿が闇に溶けてゆく。
「神さまは神さまでも、私は死神さまだってね」
*
目を覚まし、時計を見る。時刻は七時を回っていた。久々の寝過ごしだ。日付を見ると、4/17とあった。
あれから一週間か。
この一週間、色々なことがあった。やっと一段落ついたからか、体に疲れが出ている。
一週間前、穂乃香の手術が終わった。無事成功し、退院の予定も立っている。
今回予知夢はなく、未来が見えなかったせいで随分神経を磨り減らしたものだ。喜びを迎えられ、本当に安心した。
だが、その三日後、悲劇は起きた。白賀が事故で死んだのだ。
現場は、俺もよく使う横断歩道だった。一歩間違えば、俺が死んでいたかもしれない。
そして、その二日後、後を追うようにシュカも死んだ。原因不明の死だった。
二つの命は、まるで俺たちの代わりになくなったかのようだった。
「なぁ穂乃香、白賀とシュカの分も、俺たち立派に生きていこうな」
「……うん、生きてく」
それから一年、どこか懐かしい夢を見た。真っ黒い闇の中、声が聞こえる。
"ねぇ、君。私とゲームをしようよ"
だが、同時に負けも自覚し、現実に潰されそうになった。
「お疲れ様、水城くん」
「神さま頼む、俺は死んでもいい。だから穂乃香だけは助けてくれ!」
「うん、いいよ」
「え」
「おまけしてあげる。言えてはいなかったけど、答えは分かったんだろう?」
「あ、あぁ」
「じゃあ、正解を言い当ててよ。答えはだーれだ」
あまりにもあっさりと肯定され、逆に不審だ。
ただ、最終的には穂乃香が助かればそれで良い。だから、まずはゲームを終わらせよう。
「神さまは――」
名を呟くと、空間に人が現れた。最後に聞いた声の主だ。
見慣れない笑みを湛え、立っていたのは白賀だった。
「正解だよ。おめでとう」
「……なんで」
「あっさりおまけした理由のなんで? まぁ、どうせ全部忘れちゃうし教えてあげよう」
反応する隙も与えず、神さまは胸に手を当てる。にしても、奇妙な笑みだ。
「この子もね、ゲームをしていたんだ。気付かれないよう、君を四回殺せたら勝ちってルールでね」
「白賀も何かを変えようとしたってことか?」
「それは違うかな。この子の場合、個人的に誘ったから」
「なんでだ?」
「選択の為のゲームが必要だったから。都合上、君かこの子のどちらかが死ななきゃいけなくてね。だから、この子に委ねた。勝てば自分が生きて君が死ぬ。負けたらその逆になるって言ってね」
「………それじゃあ」
「あの感じだと、最後に選んだんだろうね、君の命を。でも良かったじゃないか。おまけはあれど君は勝った。だから望み通り妹と共に生きられる
「……神さま、やっぱあんた酷すぎだろ」
「かもね。ぶっちゃけると、君が勝とうが負けようがどっちでも良かったしね。だから、攪乱を前提に全員共通の点をヒントにしたりねー」
「え、それって」
「まぁ、話はここまでにしよう。全部仕方ないことだったのさ。私もこれが仕事だからね」
「仕事?」
「ああ。折角だ、最後に君に教えてあげよう」
白賀の姿が闇に溶けてゆく。
「神さまは神さまでも、私は死神さまだってね」
*
目を覚まし、時計を見る。時刻は七時を回っていた。久々の寝過ごしだ。日付を見ると、4/17とあった。
あれから一週間か。
この一週間、色々なことがあった。やっと一段落ついたからか、体に疲れが出ている。
一週間前、穂乃香の手術が終わった。無事成功し、退院の予定も立っている。
今回予知夢はなく、未来が見えなかったせいで随分神経を磨り減らしたものだ。喜びを迎えられ、本当に安心した。
だが、その三日後、悲劇は起きた。白賀が事故で死んだのだ。
現場は、俺もよく使う横断歩道だった。一歩間違えば、俺が死んでいたかもしれない。
そして、その二日後、後を追うようにシュカも死んだ。原因不明の死だった。
二つの命は、まるで俺たちの代わりになくなったかのようだった。
「なぁ穂乃香、白賀とシュカの分も、俺たち立派に生きていこうな」
「……うん、生きてく」
それから一年、どこか懐かしい夢を見た。真っ黒い闇の中、声が聞こえる。
"ねぇ、君。私とゲームをしようよ"
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