VS神さま

有箱

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 途切れていた意識が繋がる。冷静に目を開くと、俺は闇の中にいた。
 いや、闇ではない。ただの真っ黒な――昼も夜もない――空間だ。
 
 寸前の記憶が蘇り、腹部に手を添える。明らかなの感触がした。
 正解は見えないが、恐らく内蔵だろう。手は震えたが、混乱はなかった。
 
 なぜ、これほど冷静なのか。無痛なのはもちろん、別の理由がある。
 それは、ここに来るのが三回目だからだ。
 
 一体なぜ、こんな状態にあるかと言うと――。
 
「また死んだね! お疲れ様!」
「神さま……やっぱあんた酷すぎだろ……」
「いやいや、君が決めたことじゃないか。で、あと二回残ってるけど続ける? やめる?」
「……もちろん続ける」

 神さまとゲームをしているからだ。



 発端は一つの夢だった。

 幼い頃から時々、予知夢のようなものを見る。通常とは一線を引いた、やけにリアルな夢を見る時がそうだ。
 しかし、頻度は低く、今回も忘れた頃にやって来た。
 
 夢の内容は、双子の妹が死ぬと言うものだ。

 妹は難病で入院しており、数日後に手術を控えている。その手術が失敗し、帰らぬ人に――それが夢のお告げだった。

 妹は、俺にとって分身のような存在だ。
 幼い頃に親を失い、心許せたのが彼女だけだった。そして彼女もまた、俺を必要としてくれている。お互いに、いなくてはならない存在なのだ。
 
 結果、俺がとった手段は神頼みだった。神社や教会に出向き、家でも学校でも祈った。
 そうしてある日、夢に現れたのが神さまだった。
 
 神さまに姿はない。いや、少なくとも俺には見えなかった。やり取りの全てが、あの黒い空間で行われたからだ。

 性別も高低もない声で、自称神さまは俺に話しかけてきた。これこそ例の、脳に直接という奴かもしれない。

 "水城俊くん、妹を救いたいなら私とゲームをしよう。

 やり方は簡単、私が君の回りの誰かに憑依する。君は私が誰に憑いたか当てれば良い。
 対象は、君への大きな秘密を抱えている者、だ。
 
 正解が分かったら『お前が神さまだ』って指差しで答える。それが正しければ君の勝ち。無論、回答は一度きりでね。

 逆に、君が《四回》死んだ時、そこがゲームオーバーになる。
 
 これから君には、本日からの四日間で私を探してもらう。しかし、そこまでに答えが出なければ一度死んでもらう。

 と言っても、ただ死ぬだけじゃない。一度死ぬごとに一つずつヒントを与えよう。
 
 いわゆる四回目の死が本当の死になり、予定通り妹も死ぬ。
 しかし、その前に答えをピッタリと当てられれば、妹の運命を変えると言うわけだ。

 もちろん、この事は他言無用さ。違和感を抱かれても駄目だよ"
 
 提示されたルールは無茶苦茶だった。勝率も全く想定できない。
 しかし、否定以外の選択肢はなく、俺はそのゲームを受けた。
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