黒猫は戻らない

有箱

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 一声鳴けば、目の前に美味しそうな食べ物が出てくる。パンやイモと呼ばれるそれにかぶりつくと、人間は満足そうな顔をした。

 人間というものは優しい――と僕は思っている。大抵は隣を歩いても怒らないし、可愛いと言ってもくれる。撫でられるのが苦手な場所もあるけれど、嬉しそうな顔と声があればどうでもよくなった。

 ただ、そう思うのは僕の毛が白くて綺麗だかららしい。友達の黒猫が「人間は恐ろしい」と言っていた。直接負わされたと言う怪我を見たこともある。
 実際、前に二匹で散歩していた時、いつもは見ない嫌な目を見た。それに「不幸」や「災いが来たぞ」などという、禍々しい言葉も聞いた。

 僕らは人間の言葉が大体分かる。細かい意味は理解できずとも、雰囲気で感情は読めた。僕らにはよく分からないけど、人間は黒猫が嫌いで、他の色なら良いらしい。
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