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メッセージ
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スマホが鳴った。ベッドから手を伸ばし、徐に掴む。
"RINE 香澄:写真が送信されました"
通知を見て、思わず朗笑した。画面をタップし、アプリを起動させる。
目に飛び込んだのは、花の写真だ。色は白で、一つの枝から小さな花をたくさん咲かせている。
スクロールすると、いつも通り、そいつに関しての情報が綴られていた。
"名前はエリカ。花言葉は『博愛』。でも、色によってもそれぞれ言葉があるんだよ"
それから、更に下へとスクロール。完全にフリーなメッセージが表れた。
"そろそろ5日になるけど、体の方どう? 早く元気になって欲しいな"
優しさの滲む文章に、これまた一人笑む。
"俺もこんなに長引くと思わなかったよ 次行ったら色々ヤバそう"
"確かに、この時期に休むと大変かもね。でも大丈夫だよ、私がいる"
返信を見届けアプリを閉じた。室内がやや生温く感じ、少しだけ窓を開ける。春先の風が心地よく吹き込んだ。
少し先の未来を想像し、再び目を閉じた。
*
俺は今、自宅療養している。とは言え、重篤な病などではない。
風邪を甘く見ていた結果、拗らせただけだ。その上、更に別の風邪も貰い、長期休暇を要する破目になってしまった。
大切な入学直後の時期を、自宅療養なんて悲しい話である。
俺と香澄は幼馴染みで、唯一無二の親友だ。とは言え、彼女とは基本学校でしか会わない。
幼い頃はよく家を訪ねていたが、六歳の頃、香澄の家庭が複雑化してから減った。父親が変わり、遠出や交友が禁じられるようになったらしい。
とは言え、十歳くらいまでは香澄の部屋へ不法侵入し、密かに遊んだりもしたが。
香澄の家は、常に季節の花が咲き乱れていた。母親の趣味だそうだ。その影響か、香澄自身も花を愛していた。
基本、自信なさげな彼女だが、花に関してはいつも生き生きと語ってくれる。それは学校でも同じで、中学の時は"花=香澄さん"とクラスメイトに認識されていたほどだ。
そう言った理由があり、香澄は花の写真をこの五日、ほぼ毎日送ってくれた。見舞い代わりも兼ねているらしい。
俺自身は花に詳しくなければ興味もないが、定期的なメッセージは素直に嬉しかった。
*
花言葉を見る度、いつも必ず甦る記憶がある。小学生の時の記憶だ。
打ち明けたい秘密があると切り出され、なぜか問題を出されたことがあった。
特徴と名前を教えられ、"この花の、花言葉に隠された秘密を暴いて下さい"と告げられたのだ。図書室で調べて欲しいと言われ、半ば嫌々向かった覚えがある。
該当ページは容易に見つかった。だが、情報過多で混乱し、最終的には直接答えを聞いてしまった。
何の花だったか、どんな花言葉だったか、その辺りは記憶にない。
その秘密と言うのが、借りた本を無くした、と言うもので俺は爆笑した。
その他でも、香澄は昔から、言い難いことを問題にする癖があった。とは言え、大体は俺にとって些末なことだったが。
"RINE 香澄:写真が送信されました"
通知を見て、思わず朗笑した。画面をタップし、アプリを起動させる。
目に飛び込んだのは、花の写真だ。色は白で、一つの枝から小さな花をたくさん咲かせている。
スクロールすると、いつも通り、そいつに関しての情報が綴られていた。
"名前はエリカ。花言葉は『博愛』。でも、色によってもそれぞれ言葉があるんだよ"
それから、更に下へとスクロール。完全にフリーなメッセージが表れた。
"そろそろ5日になるけど、体の方どう? 早く元気になって欲しいな"
優しさの滲む文章に、これまた一人笑む。
"俺もこんなに長引くと思わなかったよ 次行ったら色々ヤバそう"
"確かに、この時期に休むと大変かもね。でも大丈夫だよ、私がいる"
返信を見届けアプリを閉じた。室内がやや生温く感じ、少しだけ窓を開ける。春先の風が心地よく吹き込んだ。
少し先の未来を想像し、再び目を閉じた。
*
俺は今、自宅療養している。とは言え、重篤な病などではない。
風邪を甘く見ていた結果、拗らせただけだ。その上、更に別の風邪も貰い、長期休暇を要する破目になってしまった。
大切な入学直後の時期を、自宅療養なんて悲しい話である。
俺と香澄は幼馴染みで、唯一無二の親友だ。とは言え、彼女とは基本学校でしか会わない。
幼い頃はよく家を訪ねていたが、六歳の頃、香澄の家庭が複雑化してから減った。父親が変わり、遠出や交友が禁じられるようになったらしい。
とは言え、十歳くらいまでは香澄の部屋へ不法侵入し、密かに遊んだりもしたが。
香澄の家は、常に季節の花が咲き乱れていた。母親の趣味だそうだ。その影響か、香澄自身も花を愛していた。
基本、自信なさげな彼女だが、花に関してはいつも生き生きと語ってくれる。それは学校でも同じで、中学の時は"花=香澄さん"とクラスメイトに認識されていたほどだ。
そう言った理由があり、香澄は花の写真をこの五日、ほぼ毎日送ってくれた。見舞い代わりも兼ねているらしい。
俺自身は花に詳しくなければ興味もないが、定期的なメッセージは素直に嬉しかった。
*
花言葉を見る度、いつも必ず甦る記憶がある。小学生の時の記憶だ。
打ち明けたい秘密があると切り出され、なぜか問題を出されたことがあった。
特徴と名前を教えられ、"この花の、花言葉に隠された秘密を暴いて下さい"と告げられたのだ。図書室で調べて欲しいと言われ、半ば嫌々向かった覚えがある。
該当ページは容易に見つかった。だが、情報過多で混乱し、最終的には直接答えを聞いてしまった。
何の花だったか、どんな花言葉だったか、その辺りは記憶にない。
その秘密と言うのが、借りた本を無くした、と言うもので俺は爆笑した。
その他でも、香澄は昔から、言い難いことを問題にする癖があった。とは言え、大体は俺にとって些末なことだったが。
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