この悪い夢の終わりには

有箱

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ダークヒーローの遺言3

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 あの判断が正しかったのか、今でも分からない。恐らく答えは一生出ないだろう。
 明人と夏樹、両方とも救う手だてがあったのではと、今でも戻れない時間に囚われている。

 そしてもう一つ、あの日から続いている迷いもある。それは、真実を夏樹に告げるか否かについてだ。

 後日夏樹に聞いた話から、あの時は聞こえなかった会話の全貌が明らかになった。明人の遺した台詞の意味も、その時になってはっきりと理解した。

 衝撃の内容だった割に、夏樹から怒りは見えなかった。かと言って、許している様子もない。
 ただただ、明人の存在に触れないよう振る舞っている様子だけが見てとれた。

 夏樹の感情がどこに向いていようと、二人が嘘の出来事のせいで仲違いしたことに変わりはない。それを補正するか否か迷っているのだ。

 いや、メリットを比較しても、告白した方が良いとは思う。
 だが、告げられた言葉が――最後の最後、命を振り絞ってまで遺した遺言が――隠し通せとの一言だったのだ。言える訳がなかった。

 いつか、答えが出る日は来るだろうか。透明な結末を想像しては、深い迷いの海でもがく。
 だが、これはきっと俺に課せられた罰だ。夏樹と明人を、悩ませ苦しませた分の罰なのだ。

「兄さん、今年は山に行くのなんてどうかな」

 笑顔で俺を見る夏樹の前、ひっそりと遺言を抱く。
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