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第二十九話
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オオカミ少年は、まだ花を探していた。
赤ずきんにあげたら喜ぶだろうなと、笑っている顔を頭に浮かべてみる。
そうやってずっとがんばっているのだが、花は中々見つからない。
暗くて怖いどうくつも、小川の流れるがけっぷちも見てみたが、きれいな花は咲いていなかった。
「オオカミー、さっきから何してるの?」
言いながら、空から降りてきたのはカナだ。実はずっとオオカミ少年を追いかけていた。
「…え、えっと…」
オオカミ少年が、本当の事を言うのが恥ずかしくてもじもじしていると、二匹の前に一匹が立った。
「やぁ、オオカミくん、カナ、何をしているのかな?」
それはロイだった。
「私も今、ちょうど降りてきたところだよ、オオカミが何か探してるみたいだから聞いてたの」
「そうか、何を探していたんだい?」
「…えっと」
赤ずきんにあげるお花。なんて言ったら好きだと思われてしまうかもしれない。お友だちになりたいと、知られてしまうかもしれない。
「そうだ、赤ずきん」
「わあぁああぁあぁあぁ!!」
ロイの出した名前に、オオカミ少年はびっくりして慌てた。その驚きように、カナとロイも驚く。
――――そして二人は思った。
多分、赤ずきんのこと考えてたな、と。
「もしかして、赤ずきんにあげるものでも探していたの?」
カナにすっかり言い当てられて、オオカミ少年は頬を真っ赤にする。
ここまで分かられては仕方がない、と本当の事を打ち明けた。
「…赤ずきんに、お花をあげたいんだ」
ロイは、ついさっき赤ずきんが話していた事を思い出す。冬は花が少ないから大変だ、と言っていた。
「それは喜ぶかもしれないな」
「…そうかな…!」
オオカミ少年は、もう一度笑顔を浮かべる。
「よし!そういうことなら私も手伝っちゃうよ!赤ずきんを喜ばせたいんだよね!」
「そう!そうなの!それで出来たらお友だちに…!」
はっとなり、両手で口を塞ぐ。
また思った事を言ってしまった…と、更にほほに色をつけた。
「え?友だちじゃないの?」
だが、ロイとカナの不思議そうな顔を見て、恥ずかしさはどこかに吹き飛んでしまった。
「え?ちが、違うよ?」
「だって、お茶会だって赤ずきんがオオカミの為にしてくれたんでしょ?それってお友だちだからよ」
「そうだよ、大事じゃないと、あんな事できないさ」
赤ずきんがもうお友だちになっていると思った、二人のはっきりとした理由を聞いて、オオカミ少年は頭の中をぐるぐる回す。
もしかして赤ずきんは、僕の事を、もうお友だちだと思ってくれているのだろうか。
「……でもまだ、お友だちになろうって言ってない…」
「そうなの!?」
カナはとてもびっくりした様子だ。
「なら、言わなければならないな。せっかくだ、花をもって言ってみるといい」
「え、え、え」
だんだん大きくなってゆく話に、オオカミ少年はおどおどしてしまう。
けれど、お茶会の時の勇気をもう一度思い出して、自分の本当の気持ちをちゃんと見つめる。
「…わ、分かった」
「よし!がんばろうね!」
「じゃあまず花探しだな」
「私は空から見てくるよ」
「僕、がんばる!」
少し前まで自分を怖がっていた森の仲間が、赤ずきんとお友たちになる為に進んで手伝ってくれて、オオカミ少年は嬉しかった。
みんなとなら、もう一度勇気が出せる気がした。
◇
赤ずきんは、オオカミを探しに森に出ていた。
いつもいる茂みを除いてみたり、森の動物たちに見かけたか聞いてみたり、色々したがオオカミ少年は見つからなかった。
それが友だちと楽しく遊んでいるからなら良いのだが、なにかあって悲しくてどこかで泣いているとしたら助けてあげたい。
ふと、赤ずきんは思う。さっきのおばあさんの言葉を思い出して、考えはじめる。
オオカミ少年は私に会えなくてさみしいから、しゅんとした顔をしていたのかしら?
でもなんで?友だちが出来たのに。
赤ずきんには、オオカミ少年の気持ちが分からなかった。
でもそれも合わせて全部、オオカミ少年に会って聞いてみれば良い事だ。
ところで私も、どうしてこんなにオオカミの事をきにするのかしら?
自分でもよく分からない気持ちにぶつかった赤ずきんは、周りを見ながらもまた考え始める。
そこに、ヌタが通りかかった。
「あっ、ヌタ!オオカミ知らない?」
「オオカミ?オオカミならロイとカナと一緒に何やら探しているみたいだったぜ」
ヌタは木の実を探しているとちゅう、3人でなにやら一生懸命に探している姿を見ていた。
本当に一生懸命だったから、話しかけなかったが。
「あらそう、遊んでいるのかしら?」
赤ずきんはじゃましちゃ悪いかな、と思いながらも聞きたい気持ちが迷わせる。
ヌタは赤ずきんの少し悩んでいるような顔をみて、一つの方法を思いついた。
「うーん、どうだろう、会ったら聞いてみようか」
「そうね、お願い」
「オオカミに何か用でも?」
「聞きたい事があるのよね」
「だったら見つけて呼んでこよう」
赤ずきんはその一言で、聞いてしまう方を選んだ。しっかり答えをもらわないと、やっぱりソワソワする。
「本当!?ありがとう!やっぱりあなたは頼りになるわ!」
「どういたしまして」
ヌタは嬉しそうに笑うと、さっさかどこかへかけて行った。
赤ずきんは自分でも探す為、もう一度もと来た道を歩き始めた。
赤ずきんにあげたら喜ぶだろうなと、笑っている顔を頭に浮かべてみる。
そうやってずっとがんばっているのだが、花は中々見つからない。
暗くて怖いどうくつも、小川の流れるがけっぷちも見てみたが、きれいな花は咲いていなかった。
「オオカミー、さっきから何してるの?」
言いながら、空から降りてきたのはカナだ。実はずっとオオカミ少年を追いかけていた。
「…え、えっと…」
オオカミ少年が、本当の事を言うのが恥ずかしくてもじもじしていると、二匹の前に一匹が立った。
「やぁ、オオカミくん、カナ、何をしているのかな?」
それはロイだった。
「私も今、ちょうど降りてきたところだよ、オオカミが何か探してるみたいだから聞いてたの」
「そうか、何を探していたんだい?」
「…えっと」
赤ずきんにあげるお花。なんて言ったら好きだと思われてしまうかもしれない。お友だちになりたいと、知られてしまうかもしれない。
「そうだ、赤ずきん」
「わあぁああぁあぁあぁ!!」
ロイの出した名前に、オオカミ少年はびっくりして慌てた。その驚きように、カナとロイも驚く。
――――そして二人は思った。
多分、赤ずきんのこと考えてたな、と。
「もしかして、赤ずきんにあげるものでも探していたの?」
カナにすっかり言い当てられて、オオカミ少年は頬を真っ赤にする。
ここまで分かられては仕方がない、と本当の事を打ち明けた。
「…赤ずきんに、お花をあげたいんだ」
ロイは、ついさっき赤ずきんが話していた事を思い出す。冬は花が少ないから大変だ、と言っていた。
「それは喜ぶかもしれないな」
「…そうかな…!」
オオカミ少年は、もう一度笑顔を浮かべる。
「よし!そういうことなら私も手伝っちゃうよ!赤ずきんを喜ばせたいんだよね!」
「そう!そうなの!それで出来たらお友だちに…!」
はっとなり、両手で口を塞ぐ。
また思った事を言ってしまった…と、更にほほに色をつけた。
「え?友だちじゃないの?」
だが、ロイとカナの不思議そうな顔を見て、恥ずかしさはどこかに吹き飛んでしまった。
「え?ちが、違うよ?」
「だって、お茶会だって赤ずきんがオオカミの為にしてくれたんでしょ?それってお友だちだからよ」
「そうだよ、大事じゃないと、あんな事できないさ」
赤ずきんがもうお友だちになっていると思った、二人のはっきりとした理由を聞いて、オオカミ少年は頭の中をぐるぐる回す。
もしかして赤ずきんは、僕の事を、もうお友だちだと思ってくれているのだろうか。
「……でもまだ、お友だちになろうって言ってない…」
「そうなの!?」
カナはとてもびっくりした様子だ。
「なら、言わなければならないな。せっかくだ、花をもって言ってみるといい」
「え、え、え」
だんだん大きくなってゆく話に、オオカミ少年はおどおどしてしまう。
けれど、お茶会の時の勇気をもう一度思い出して、自分の本当の気持ちをちゃんと見つめる。
「…わ、分かった」
「よし!がんばろうね!」
「じゃあまず花探しだな」
「私は空から見てくるよ」
「僕、がんばる!」
少し前まで自分を怖がっていた森の仲間が、赤ずきんとお友たちになる為に進んで手伝ってくれて、オオカミ少年は嬉しかった。
みんなとなら、もう一度勇気が出せる気がした。
◇
赤ずきんは、オオカミを探しに森に出ていた。
いつもいる茂みを除いてみたり、森の動物たちに見かけたか聞いてみたり、色々したがオオカミ少年は見つからなかった。
それが友だちと楽しく遊んでいるからなら良いのだが、なにかあって悲しくてどこかで泣いているとしたら助けてあげたい。
ふと、赤ずきんは思う。さっきのおばあさんの言葉を思い出して、考えはじめる。
オオカミ少年は私に会えなくてさみしいから、しゅんとした顔をしていたのかしら?
でもなんで?友だちが出来たのに。
赤ずきんには、オオカミ少年の気持ちが分からなかった。
でもそれも合わせて全部、オオカミ少年に会って聞いてみれば良い事だ。
ところで私も、どうしてこんなにオオカミの事をきにするのかしら?
自分でもよく分からない気持ちにぶつかった赤ずきんは、周りを見ながらもまた考え始める。
そこに、ヌタが通りかかった。
「あっ、ヌタ!オオカミ知らない?」
「オオカミ?オオカミならロイとカナと一緒に何やら探しているみたいだったぜ」
ヌタは木の実を探しているとちゅう、3人でなにやら一生懸命に探している姿を見ていた。
本当に一生懸命だったから、話しかけなかったが。
「あらそう、遊んでいるのかしら?」
赤ずきんはじゃましちゃ悪いかな、と思いながらも聞きたい気持ちが迷わせる。
ヌタは赤ずきんの少し悩んでいるような顔をみて、一つの方法を思いついた。
「うーん、どうだろう、会ったら聞いてみようか」
「そうね、お願い」
「オオカミに何か用でも?」
「聞きたい事があるのよね」
「だったら見つけて呼んでこよう」
赤ずきんはその一言で、聞いてしまう方を選んだ。しっかり答えをもらわないと、やっぱりソワソワする。
「本当!?ありがとう!やっぱりあなたは頼りになるわ!」
「どういたしまして」
ヌタは嬉しそうに笑うと、さっさかどこかへかけて行った。
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