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第二十話
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オオカミ少年は、夜になっても家を見ていた。
今は赤ずきんが帰ってしまい、おばあさん一人だけがいる家。
「……おばあさんも、一人ぼっちの時はさみしいかな…おばあさんなら、友だちになってくれるかな…お菓子おいしかったな、パーティ楽しみだな…」
にこにこと優しくほほえむおばあさん。赤ずきんは怖いけれど、とても優しいおばあさんなら。
オオカミ少年は、木から飛び出して玄関へと向かった。
トントンと、ノックが響く。おばあさんは編み物していた手を止めて、ゆっくりと立ち上がった。
「こんな夜にお客さんなんて珍しいわね~、はぁい?」
「………こ、こんばんは」
もじもじと、斜め下を見つめるオオカミ少年がいる。
「あら、オオカミちゃん、どうしたの?一人?」
「…うん、えっと…あの…」
「赤ずきんなら、もう帰ったけれど、会わなかった…?」
「…ち、違うんだ…えっとあの…あのね、おばあさん、ばらしちゃった…?」
言おうとしていたことよりも前にそんな言葉が飛び出してしまい、オオカミ少年は自分でびっくりしてしまった。
いや、気になっていたのは気になっていたが。
「お友だちが欲しいって話?」
「そう!それ!」
おばあさんは焦るオオカミ少年とは逆の、ふわりとした笑顔を浮かべた。
「言ってないわよ?赤ずきんは気付いていたみたいだけど」
「えっ、気付いてたの?」
今までずっと強さを見せ続けていたはずなのに、弱虫は見ぬかれていたらしい。
なんて恥ずかしい……
オオカミは恥ずかしさから、両耳を少し引っぱった。
「えぇ、それで色々がんばっていたみたいだけど、お話いかなかった?」
「…お話ってもしかしてお菓子パーティ…?」
オオカミ少年は、友だちが欲しいとの願いとお菓子パーティの関係がいまいちつながらずに、首をかしげる。
「そうよ、オオカミちゃんにお友だちを作ってあげたくて、計画してるみたい」
お友だちになりたくてではなく、お友だちを作ってあげたくてとの言い方の違いに、オオカミ少年は気付いた。
「…じゃあ、やっぱり赤ずきんは…」
しゅんと寂しげに下を向いたオオカミ少年を見て、おばあさんは心の奥にある本物の願いを感じ取る。
「もしかして、赤ずきんとお友だちになりたかったの?」
「えっ!ち、違うよ!だって赤ずきん怖いし!」
オオカミ少年はつい言ってしまった嘘が、おばあさんを怒らせていないか怖くなった。
だが、おばあさんの心には、怒りさえ生まれなかった。
「そうねー、オオカミちゃんにとっては怖いかもね、でも赤ずきんは本当は優しい子なのよ」
「でも、耳とかとられる」
本当は『知ってる』と言いたかったが、赤ずきんを認めてしまう気がして、またムダな強がりをしてしまった。
「うーん、おちゃめだと思うけどねぇ」
まじめなオオカミ少年を傷つけないように、おばあさんはやんわりと本当の事を教える。
赤ずきんは、勝気でちょっとむりやりな部分はあるが、とてもいい子だ。いい孫だと自慢したいくらい、優しさを持っている。
「もっと素直になっても良いと思うわよ」
オオカミ少年は、本当の思いを言い当てられ、ぎくりとなった。
だが、もう全部ばれているのだ、おばあさんの前で今さら強がっても意味ないともちゃんと分かっている。
「…で、でも本当の事言ったら、弱い子って思われちゃう…」
「私は思わなかったわ、オオカミちゃんとお友だちになれて、嬉しいとも思っているのよ」
「えっ?お友だち!?」
オオカミ少年は耳をぴんと立て、しっぽを左右にゆらゆらと揺らす。
沈んでいた気持ちが一気に浮き上がり、空まで飛べそうな気分になった。
おばあさんは、もう自分の事を友だちだと思ってくれていた。自分が言わなくてもお友だちだと言ってくれた。
それがとても嬉しくてうれしくて、オオカミ少年は顔をまっかにして笑った。
「それにしても、寒いわねー、少しあがってゆく?」
「うん!」
おばあさんはオオカミ少年の笑顔を見て自分もほほえみながら、心の中には小さなさみしさを持っていた。
今は赤ずきんが帰ってしまい、おばあさん一人だけがいる家。
「……おばあさんも、一人ぼっちの時はさみしいかな…おばあさんなら、友だちになってくれるかな…お菓子おいしかったな、パーティ楽しみだな…」
にこにこと優しくほほえむおばあさん。赤ずきんは怖いけれど、とても優しいおばあさんなら。
オオカミ少年は、木から飛び出して玄関へと向かった。
トントンと、ノックが響く。おばあさんは編み物していた手を止めて、ゆっくりと立ち上がった。
「こんな夜にお客さんなんて珍しいわね~、はぁい?」
「………こ、こんばんは」
もじもじと、斜め下を見つめるオオカミ少年がいる。
「あら、オオカミちゃん、どうしたの?一人?」
「…うん、えっと…あの…」
「赤ずきんなら、もう帰ったけれど、会わなかった…?」
「…ち、違うんだ…えっとあの…あのね、おばあさん、ばらしちゃった…?」
言おうとしていたことよりも前にそんな言葉が飛び出してしまい、オオカミ少年は自分でびっくりしてしまった。
いや、気になっていたのは気になっていたが。
「お友だちが欲しいって話?」
「そう!それ!」
おばあさんは焦るオオカミ少年とは逆の、ふわりとした笑顔を浮かべた。
「言ってないわよ?赤ずきんは気付いていたみたいだけど」
「えっ、気付いてたの?」
今までずっと強さを見せ続けていたはずなのに、弱虫は見ぬかれていたらしい。
なんて恥ずかしい……
オオカミは恥ずかしさから、両耳を少し引っぱった。
「えぇ、それで色々がんばっていたみたいだけど、お話いかなかった?」
「…お話ってもしかしてお菓子パーティ…?」
オオカミ少年は、友だちが欲しいとの願いとお菓子パーティの関係がいまいちつながらずに、首をかしげる。
「そうよ、オオカミちゃんにお友だちを作ってあげたくて、計画してるみたい」
お友だちになりたくてではなく、お友だちを作ってあげたくてとの言い方の違いに、オオカミ少年は気付いた。
「…じゃあ、やっぱり赤ずきんは…」
しゅんと寂しげに下を向いたオオカミ少年を見て、おばあさんは心の奥にある本物の願いを感じ取る。
「もしかして、赤ずきんとお友だちになりたかったの?」
「えっ!ち、違うよ!だって赤ずきん怖いし!」
オオカミ少年はつい言ってしまった嘘が、おばあさんを怒らせていないか怖くなった。
だが、おばあさんの心には、怒りさえ生まれなかった。
「そうねー、オオカミちゃんにとっては怖いかもね、でも赤ずきんは本当は優しい子なのよ」
「でも、耳とかとられる」
本当は『知ってる』と言いたかったが、赤ずきんを認めてしまう気がして、またムダな強がりをしてしまった。
「うーん、おちゃめだと思うけどねぇ」
まじめなオオカミ少年を傷つけないように、おばあさんはやんわりと本当の事を教える。
赤ずきんは、勝気でちょっとむりやりな部分はあるが、とてもいい子だ。いい孫だと自慢したいくらい、優しさを持っている。
「もっと素直になっても良いと思うわよ」
オオカミ少年は、本当の思いを言い当てられ、ぎくりとなった。
だが、もう全部ばれているのだ、おばあさんの前で今さら強がっても意味ないともちゃんと分かっている。
「…で、でも本当の事言ったら、弱い子って思われちゃう…」
「私は思わなかったわ、オオカミちゃんとお友だちになれて、嬉しいとも思っているのよ」
「えっ?お友だち!?」
オオカミ少年は耳をぴんと立て、しっぽを左右にゆらゆらと揺らす。
沈んでいた気持ちが一気に浮き上がり、空まで飛べそうな気分になった。
おばあさんは、もう自分の事を友だちだと思ってくれていた。自分が言わなくてもお友だちだと言ってくれた。
それがとても嬉しくてうれしくて、オオカミ少年は顔をまっかにして笑った。
「それにしても、寒いわねー、少しあがってゆく?」
「うん!」
おばあさんはオオカミ少年の笑顔を見て自分もほほえみながら、心の中には小さなさみしさを持っていた。
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