ご主人様の苦しみが、どうか安らぎますように。

有箱

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悪い夢の続きを見る(1)

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 あれから半年が経ちました。私は何も変わらないのに、風日向さまは変わっていかれます。座っていられない日が増え、熱に魘されることも増えました。
 変わらず、お薬は懸命に飲んで下さいます。しかし、効果は微々たる程度になってしまいました。

「……ねぇ篝、お嫁に行きたくはない?」

 空っぽの器が渡されると同時に、問いも渡され一瞬固まります。

「篝ももう十四才になる。それに、こんな私の為に幸せを逃してしまっては死にきれないよ」

 穏やかなはずの笑みに、一瞬貫かれそうになりました。
 十四才――確かにお嫁に行くには適齢です。しかし、私の中には、結婚という名の幸福など、存在すらしていませんでした。

「私は結婚になど興味は御座いません。私がこの身をお捧げしたいのは、ご主人様ただお一人です」

 はっきり告げた先、お顔が歪んでいます。まだお辛いのか、それとも返事に困ってかの判断はできませんでした。
 風日向さまは数秒を置き、小さくそうかと呟かれました。

 私は後日、知ることになるのです。風日向の抱えておられた苦しみを。
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