犬くんの話

有箱

文字の大きさ
上 下
2 / 9

噂の犬くん【2】

しおりを挟む
「ありません。とても分かりやすかったです。と言うか、僕は本当に居るだけでいいんでしょうか」
「問題ありません。社長も仰っていたでしょう」

 見出しのタイトルと、仕事内容が合致しない。“申畑会社残業実態潜入調査”と、難しそうなタイトルとは裏腹に、僕の仕事は中途新入社員である鳥井として、現場に身を置くことだけだった。
 もちろん、職場《申畑》の指示に従う必要はあるが、言ってしまえばそれだけである。

 実は読み合わせの前に、仕事を受けるか否か、直接社長から確認された。と言うのも、潜入捜査の経験がなかったからだ。
 足を引っ張るかもしれないと告げたところ、体験程度に思ってくれていいと言われた。もう一人の相手が――犬飼が大変な方をやるから、と。
 いつもの優しい笑みが、陰りを帯びて見えた気がした。

 今回の依頼は、申畑内部からのものだ。上手く隠されている噂の、確実性と証拠を集めるのが任務である。きっと、核心に近づくほど危険が伴うだろう。

「でしたら、ここでお開きにしましょう。一週間後、予定通り出社して下さい。その間、私の方で何かあれば連絡致します」 

 淡々と話を済ませ、犬飼さんが席を立った。失礼しますの一言を残し、消える。噂通り忙しい人のようだ。

「分かりました」
 
 会話終了後、僕の中で新たな仕事が生まれた。
 なぜ犬飼さんだけが、ブラック企業並みに働かされているのか――その真相を突き止めるのだ。三年探偵業に勤めてきたのだから、きっとやれる。
 まずは、噂が事実であるかから確認しよう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

花ちゃんと僕のポケット

有箱
大衆娯楽
小児科の緩和ケアにやってきた、九歳の女の子、花ちゃん。 治る見込みのない病に侵されており、死を待つ状態にあったが、とても明るく元気な子だった。 ある日、花ちゃんが僕のポケットに何かが入っているのを見つける。 その後も、さらにその後も、ガラクタ同然のものを見つけては花ちゃんは笑った。 どんなものでも宝物にしてしまう。 そんな花ちゃんに癒しをもらっていたが、最期は突然訪れてしまう。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

処理中です...