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噂の犬くん【2】
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「ありません。とても分かりやすかったです。と言うか、僕は本当に居るだけでいいんでしょうか」
「問題ありません。社長も仰っていたでしょう」
見出しのタイトルと、仕事内容が合致しない。“申畑会社残業実態潜入調査”と、難しそうなタイトルとは裏腹に、僕の仕事は中途新入社員である鳥井として、現場に身を置くことだけだった。
もちろん、職場《申畑》の指示に従う必要はあるが、言ってしまえばそれだけである。
実は読み合わせの前に、仕事を受けるか否か、直接社長から確認された。と言うのも、潜入捜査の経験がなかったからだ。
足を引っ張るかもしれないと告げたところ、体験程度に思ってくれていいと言われた。もう一人の相手が――犬飼が大変な方をやるから、と。
いつもの優しい笑みが、陰りを帯びて見えた気がした。
今回の依頼は、申畑内部からのものだ。上手く隠されている噂の、確実性と証拠を集めるのが任務である。きっと、核心に近づくほど危険が伴うだろう。
「でしたら、ここでお開きにしましょう。一週間後、予定通り出社して下さい。その間、私の方で何かあれば連絡致します」
淡々と話を済ませ、犬飼さんが席を立った。失礼しますの一言を残し、消える。噂通り忙しい人のようだ。
「分かりました」
会話終了後、僕の中で新たな仕事が生まれた。
なぜ犬飼さんだけが、ブラック企業並みに働かされているのか――その真相を突き止めるのだ。三年探偵業に勤めてきたのだから、きっとやれる。
まずは、噂が事実であるかから確認しよう。
「問題ありません。社長も仰っていたでしょう」
見出しのタイトルと、仕事内容が合致しない。“申畑会社残業実態潜入調査”と、難しそうなタイトルとは裏腹に、僕の仕事は中途新入社員である鳥井として、現場に身を置くことだけだった。
もちろん、職場《申畑》の指示に従う必要はあるが、言ってしまえばそれだけである。
実は読み合わせの前に、仕事を受けるか否か、直接社長から確認された。と言うのも、潜入捜査の経験がなかったからだ。
足を引っ張るかもしれないと告げたところ、体験程度に思ってくれていいと言われた。もう一人の相手が――犬飼が大変な方をやるから、と。
いつもの優しい笑みが、陰りを帯びて見えた気がした。
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「でしたら、ここでお開きにしましょう。一週間後、予定通り出社して下さい。その間、私の方で何かあれば連絡致します」
淡々と話を済ませ、犬飼さんが席を立った。失礼しますの一言を残し、消える。噂通り忙しい人のようだ。
「分かりました」
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なぜ犬飼さんだけが、ブラック企業並みに働かされているのか――その真相を突き止めるのだ。三年探偵業に勤めてきたのだから、きっとやれる。
まずは、噂が事実であるかから確認しよう。
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