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愛の言葉(1)

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 健康体であるはずなのに体が重い。仕事でも、見逃される程度のミスだが何度もやらかした。
 蒼真と時々、目があっては私から逃げる。積み上げた分の恋情が、胸を焼くのが分かった。

 夕暮れに送られながら帰宅する。挨拶する気力もなく、ローテーブルの前に膝をついた。
 真似しているのかナオキも無言だ。静かすぎる部屋が、今日は傷口に沁みる。

「……ナオキ、ただいま」

 絞り出したが、静寂は更けるばかりだ。

「……ナオキ?」

 つい光を確認してしまう。点滅は止んでおらず、コンセントも確り刺さっていた。しかし、何度呼び掛けても応答がない。いつもなら、何度か呼べば応えてくれたのに。
 
 こんな時に、貴方まで私を捨てると言うの――?
 
 成す術なく項垂れかけた時、呼び鈴が鳴った。
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