8 / 14
失恋(1)
しおりを挟む
季節が間反対に到達するまで、私と蒼真は進んで時間を共有した。ナオキも私の話を楽しそうに聞いてくれた。
言葉や行動で愛を示してくれる蒼真に、私は急速に惹かれていった。互いに交代で行きたい場所を決め、色々な場所に出掛けた。
しかし、事業の拡散に伴う忙しさで、隣に立てない日が増えはじめた。孤独を感じる頻度が増え、焦りにまで達しはじめるーーそんな時だった。
「……な、なんで?」
「ごめん、ゆっくり話す時間すら作れないし……とにかく別れよう」
休憩時間、食事に誘われ告げられた。空き部屋で、少し話をしようと微笑まれて。
擦れ違うタイミングを、無理矢理合わせて誘ってくれている。それを分かっていたから、内心浮かれていた。なのに。
真っ直ぐな視線の中、罪悪感が滲んでいる。近付き合う眉には辛さが、隙間のない唇には苦痛が宿っている。悲しさを被った表情には、特別な事情がよく似合った。
六度も別れをもたらした“それ”の影が私には見えた。
「……私、時間取れなくても待てるよ?」
「ごめん、僕が駄目だと思ったんだ」
「私は別れたくない!」
公言された理由が、百パーセント建前でないとは言えない。けれど、裏側に別の理由があるのだと確信している。今回こそは、何としてでも秘密のまま去られたくなかった。
強い訴えを前に、蒼真の唇が隙間を作る。しかし、声は作り出されない。迷いの動作を前に、涙が込み上げた。
「……別れるなら、本当の理由を教えてくれませんか」
「えっ」
「私の何が駄目だったんでしょうか?」
やりきれなさに押し出され、雫が机上へ落ちて行く。愕然とする蒼真の顔には、悔しさが付け足された。
「……成海は何も悪くない!」
感情的な否定が、悲しみを一瞬忘れさせる。冷静になった蒼真は、謝罪を付け足し微笑んだ。
「それだけは覚えていて」
言葉や行動で愛を示してくれる蒼真に、私は急速に惹かれていった。互いに交代で行きたい場所を決め、色々な場所に出掛けた。
しかし、事業の拡散に伴う忙しさで、隣に立てない日が増えはじめた。孤独を感じる頻度が増え、焦りにまで達しはじめるーーそんな時だった。
「……な、なんで?」
「ごめん、ゆっくり話す時間すら作れないし……とにかく別れよう」
休憩時間、食事に誘われ告げられた。空き部屋で、少し話をしようと微笑まれて。
擦れ違うタイミングを、無理矢理合わせて誘ってくれている。それを分かっていたから、内心浮かれていた。なのに。
真っ直ぐな視線の中、罪悪感が滲んでいる。近付き合う眉には辛さが、隙間のない唇には苦痛が宿っている。悲しさを被った表情には、特別な事情がよく似合った。
六度も別れをもたらした“それ”の影が私には見えた。
「……私、時間取れなくても待てるよ?」
「ごめん、僕が駄目だと思ったんだ」
「私は別れたくない!」
公言された理由が、百パーセント建前でないとは言えない。けれど、裏側に別の理由があるのだと確信している。今回こそは、何としてでも秘密のまま去られたくなかった。
強い訴えを前に、蒼真の唇が隙間を作る。しかし、声は作り出されない。迷いの動作を前に、涙が込み上げた。
「……別れるなら、本当の理由を教えてくれませんか」
「えっ」
「私の何が駄目だったんでしょうか?」
やりきれなさに押し出され、雫が机上へ落ちて行く。愕然とする蒼真の顔には、悔しさが付け足された。
「……成海は何も悪くない!」
感情的な否定が、悲しみを一瞬忘れさせる。冷静になった蒼真は、謝罪を付け足し微笑んだ。
「それだけは覚えていて」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
【完結】夫は王太子妃の愛人
紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵家長女であるローゼミリアは、侯爵家を継ぐはずだったのに、女ったらしの幼馴染みの公爵から求婚され、急遽結婚することになった。
しかし、持参金不要、式まで1ヶ月。
これは愛人多数?など訳ありの結婚に違いないと悟る。
案の定、初夜すら屋敷に戻らず、
3ヶ月以上も放置されーー。
そんな時に、驚きの手紙が届いた。
ーー公爵は、王太子妃と毎日ベッドを共にしている、と。
ローゼは、王宮に乗り込むのだがそこで驚きの光景を目撃してしまいーー。
*誤字脱字多数あるかと思います。
*初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ
*ゆるふわ設定です
今日は私の結婚式
豆狸
恋愛
ベッドの上には、幼いころからの婚約者だったレーナと同じ色の髪をした女性の腐り爛れた死体があった。
彼女が着ているドレスも、二日前僕とレーナの父が結婚を拒むレーナを屋根裏部屋へ放り込んだときに着ていたものと同じである。
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
【完結】どうか私を思い出さないで
miniko
恋愛
コーデリアとアルバートは相思相愛の婚約者同士だった。
一年後には学園を卒業し、正式に婚姻を結ぶはずだったのだが……。
ある事件が原因で、二人を取り巻く状況が大きく変化してしまう。
コーデリアはアルバートの足手まといになりたくなくて、身を切る思いで別れを決意した。
「貴方に触れるのは、きっとこれが最後になるのね」
それなのに、運命は二人を再び引き寄せる。
「たとえ記憶を失ったとしても、きっと僕は、何度でも君に恋をする」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる