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「その手を離してくれないか」
馴染みある――けれど聞き慣れない低い声が、背後から僕らを刺す。声とは思えないほどの攻撃力が、手前の男も刺したのは明らかだった。
するりと手が離れる。振り向くと、真後ろに父さんがいた。自然と僕の横に並び、僕と男の間に腕を入れる。
「彼は僕の息子なんだけど、何をしようとしていたのかな?」
髪は荒れ地、スーツも荒波。なのに、真っ直ぐな両目は極寒の地のように冷たい。普段姿を見慣れている僕でさえ、一瞬すくみそうになった。
「この子のお父さん……なのですか!?」
のに、おかしいやろ……!! なんで目ェキラキラになるの!?
怖じ気づいたと思われた男が、急に瞳を輝かせる。父さんを見つめ、急にテンションアゲアゲで話し出した。
「あのですね! 実はこの鍵を発見しまして、その時にで」
「ああ、それ」
父さんは怒っているのか、男の発言を容赦なく潰す。表面には笑みがあったが、普段の色とは明らかに違った。
「すみませんね、それは私の持ち物だ。無くしてしまっていて、探していたんです。動物にでも持っていかれたのかもしれません。見つけて下さり助かりました」
鍵を回収し、もう片方の手で僕の手首をぎゅっと掴む。触れた手のひらは、じっとりと汗を纏っていた。
もしかして、怖かったのに勇気を出して助けてくれた――?
「あ、ああ、そういうことですか。すみません。私こういうものでして、もし何かあればこちらに連絡を下さい」
名刺を差し出し、男はそそくさと去っていく。
完全に姿を消したところで、僕の残っていた力も抜けた。体が地面へ吸われていく。
馴染みある――けれど聞き慣れない低い声が、背後から僕らを刺す。声とは思えないほどの攻撃力が、手前の男も刺したのは明らかだった。
するりと手が離れる。振り向くと、真後ろに父さんがいた。自然と僕の横に並び、僕と男の間に腕を入れる。
「彼は僕の息子なんだけど、何をしようとしていたのかな?」
髪は荒れ地、スーツも荒波。なのに、真っ直ぐな両目は極寒の地のように冷たい。普段姿を見慣れている僕でさえ、一瞬すくみそうになった。
「この子のお父さん……なのですか!?」
のに、おかしいやろ……!! なんで目ェキラキラになるの!?
怖じ気づいたと思われた男が、急に瞳を輝かせる。父さんを見つめ、急にテンションアゲアゲで話し出した。
「あのですね! 実はこの鍵を発見しまして、その時にで」
「ああ、それ」
父さんは怒っているのか、男の発言を容赦なく潰す。表面には笑みがあったが、普段の色とは明らかに違った。
「すみませんね、それは私の持ち物だ。無くしてしまっていて、探していたんです。動物にでも持っていかれたのかもしれません。見つけて下さり助かりました」
鍵を回収し、もう片方の手で僕の手首をぎゅっと掴む。触れた手のひらは、じっとりと汗を纏っていた。
もしかして、怖かったのに勇気を出して助けてくれた――?
「あ、ああ、そういうことですか。すみません。私こういうものでして、もし何かあればこちらに連絡を下さい」
名刺を差し出し、男はそそくさと去っていく。
完全に姿を消したところで、僕の残っていた力も抜けた。体が地面へ吸われていく。
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