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夢へと逃げる【1】
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目覚めの挨拶に誘われ、目を開く。久しぶりに、足音もカーテンを引く音も聞こえなかった。
所々抜けているものの、夢の大半が残っている。外に出たことも、話をしたことも、約束も、部屋に戻ったことも。とても幸せな夢だった。
囲われた世界を、レースカーテン越しの陽光が照らしている。食事の有無を確認する微笑みが、私の体に鎖を絡めた。
やっぱりもう一度、外の世界に出てみたい。現実の世界で――夢での出会いが、心に波紋を起こしたらしい。ジッパーの引っ掛かる口を、抉じ開けたくなった。
「あ、あの、お父さま。私、久しぶりにお散歩に……」
だが、言い終える前に、お父さまの笑みが落ちる。心臓が縮こまり、声が奪われた。
「……窓を開けるのでは駄目なのかい?」
「……そ、そうよね」
「ごめんねアリス。でもアリスは病気なんだから、何かあってからでは遅いんだ。分かってくれるかな?」
微笑みを維持するので精一杯だった。残りの勇気を抹消するよう、お父様は私の頬に優しく口づけた。
所々抜けているものの、夢の大半が残っている。外に出たことも、話をしたことも、約束も、部屋に戻ったことも。とても幸せな夢だった。
囲われた世界を、レースカーテン越しの陽光が照らしている。食事の有無を確認する微笑みが、私の体に鎖を絡めた。
やっぱりもう一度、外の世界に出てみたい。現実の世界で――夢での出会いが、心に波紋を起こしたらしい。ジッパーの引っ掛かる口を、抉じ開けたくなった。
「あ、あの、お父さま。私、久しぶりにお散歩に……」
だが、言い終える前に、お父さまの笑みが落ちる。心臓が縮こまり、声が奪われた。
「……窓を開けるのでは駄目なのかい?」
「……そ、そうよね」
「ごめんねアリス。でもアリスは病気なんだから、何かあってからでは遅いんだ。分かってくれるかな?」
微笑みを維持するので精一杯だった。残りの勇気を抹消するよう、お父様は私の頬に優しく口づけた。
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