殺戮兵器と白の死にたがり

有箱

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終わりの末の【1】

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 戦い続ける姿以外、想像したことがなかった。過激化していく戦争に、浸り続ければ尚更だ。
 なのに、突然戦争は終わった。終わったのだと、上から告げられて終わった。呆気ない終戦だった。
 
 置いてけぼりを食らったまま、時間を潰す。汚れの少ないナイフを、何度でも磨いた。
 命令も報告もなくなり、同時に使命も無くなってしまった。騒めきで体が満たされている。

 殺したい。誰かを殺したい――湧き上がる欲望が、テントの外へと体を導く。
 島はほとんどが更地になり、焦げた木々が砂と同化を始めていた。そんな景色を見ても、やっぱり実感が湧かない。

 ほんの少し歩いたところで、知った話し声が聞こえた。

「はい、分かりました。準備が整い次第、兵器たちの殺害を遂行します」

 内容が自身にも向いていると、すぐには察知出来なかった。声の主が隊長であることも、言葉の意味だってすぐ分かったのに。

 数秒して、突然体が反応する。細胞が尖る感覚になり、心臓が抗議を始める。
 確定した死を〝怖がっている〟と、反応を受け理解した。なぜそう感じているかまでは分からなかったが。恐怖心が除去されていなかったことに、ほんの少し驚いてしまう。

 不可解だ。けれど、思考を解くのはやっぱり気乗りしない。
 元々戦いのために生まれたのだから、死は当然のゴール――そんな単純な答えに、頷く方がずっと楽だった。
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