殺戮兵器と白の死にたがり

有箱

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独占欲【2】

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「…………どうしたんだ? 君らしくない」
「いや、これほど僕らしい行動はないよ」
「そうなのか……」

 少しだけ大きな手が重なる。裏腹に軽い体は、腰が抜けそうなほど少ない力で浮き上がった。
 地上に足をつけた瞬間、青年が微笑む。

「なんだか可笑しいね。ここまで来ると運命みたいだ」

 死から抜けた人間らしくない、美しい微笑みだった。

「私の名前はリンジー、出来るなら君に殺されたいな」

 欲と望みが合致する。願ってもない申し出に、ついニヤケそうになった。

「……僕はアルファ。そうだね、君は僕が……」

 僕としたことが、彼に夢中になりすぎていた。リンジーの背後、素早い影が接近している。そいつは今にもナイフを振り下ろそうとしていた。

 手を出すな。彼は僕のものだ。

 気付けば右肩で刃を受け止めていた。そのまま身を捻り、相手を地面に叩きつける。馬乗りで動きを支配し、刺さったままのナイフを抜いた。頬に同じ入墨がある。けれど、ブレーキはかからなかった。

 ナイフを振り上げる。急所は避けながら、何度も何度も拒む仲間を刺した。

**
 
「僕が怖いだろ」

 背中を向けたまま問う。絶命した体は、人のシルエットを失いかけていた。こんな場面を目の当たりにしては、返事など出来る訳がない。

「帰る」

 ここで去れば、今度こそ再会はないだろう。けれど、どうしてか今すぐ殺そうとは思えなかった。
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