殺戮兵器と白の死にたがり

有箱

文字の大きさ
上 下
4 / 17

死にたがり【2】

しおりを挟む
 青年は、碧い瞳で静かに僕を見た。頬の入墨は、確かに映っている。
 戦場らしくない顔に一瞬動揺した。しかし、状況が掴めていないだけだろうと、少し力を加えてやる。
 だが、彼は西洋人形のように待つだけだった。

 ――面白くない。
 興醒めし、腕をほどく。青年は体勢を変えることなく、僕を見つめ続けた。

「……なぜだ」
「何が」
「なぜ殺してくれない」

 なるほど、そう言うことか。
 理由が判明し、益々冷める。快感のない殺しには、一ミリも意欲が湧かなかった。

「残念だけど、つまらない殺しは嫌いでね」
「……それじゃあ去ってくれないか」

 青年は、またもまっすぐ目を向けてくる。けれど先程とは違う、感情の伴わない瞳だった。

「去れなんて面白いこと言うね。君だって僕らを殺すために見回ってるんでしょ?」

 兵士の役目を突きつけてやる。恐らく、彼らの目的は、僕らを島民たちに近付けないことだ。空き家の群れを見る限り、島民は島の端にでも避難しているのだろうから。

 青年の瞳が僅かに揺らぎ、仄かな迷いを灯した。

「…………見逃してやる」
「ふーん」

 台詞に滲む強がりに、笑ってしまいそうになる。こんな調子では、自分が手を下さずとも彼は簡単に死ぬだろう――そう思っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

×××回の人生に餞を

有箱
現代文学
いじめを苦に命を絶つ度、タイムリープによって時間が戻される。 もう何度、同じ人生を繰り返しただろうか。少なくとも、回数を忘れるほどには繰り返した。 抜け出すためには戦うしかない。そう頭で分かっていても体が拒絶してしまう。 もう、繰り返すのは嫌だよ。

ただいまに続きがなくても

有箱
現代文学
大好きなおばあちゃんは、認知症のせいで私のことを忘れてしまった。 私じゃない名前で呼ばれる度、心が痛んでしまう。 ところで、家族も誰一人知らない〝きらら〟って誰なの。私は弘子だよ?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

詩集「すり傷とかさぶた」

ふるは ゆう
現代文学
現代詩

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

処理中です...