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死にたがり【2】
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青年は、碧い瞳で静かに僕を見た。頬の入墨は、確かに映っている。
戦場らしくない顔に一瞬動揺した。しかし、状況が掴めていないだけだろうと、少し力を加えてやる。
だが、彼は西洋人形のように待つだけだった。
――面白くない。
興醒めし、腕をほどく。青年は体勢を変えることなく、僕を見つめ続けた。
「……なぜだ」
「何が」
「なぜ殺してくれない」
なるほど、そう言うことか。
理由が判明し、益々冷める。快感のない殺しには、一ミリも意欲が湧かなかった。
「残念だけど、つまらない殺しは嫌いでね」
「……それじゃあ去ってくれないか」
青年は、またもまっすぐ目を向けてくる。けれど先程とは違う、感情の伴わない瞳だった。
「去れなんて面白いこと言うね。君だって僕らを殺すために見回ってるんでしょ?」
兵士の役目を突きつけてやる。恐らく、彼らの目的は、僕らを島民たちに近付けないことだ。空き家の群れを見る限り、島民は島の端にでも避難しているのだろうから。
青年の瞳が僅かに揺らぎ、仄かな迷いを灯した。
「…………見逃してやる」
「ふーん」
台詞に滲む強がりに、笑ってしまいそうになる。こんな調子では、自分が手を下さずとも彼は簡単に死ぬだろう――そう思っていた。
戦場らしくない顔に一瞬動揺した。しかし、状況が掴めていないだけだろうと、少し力を加えてやる。
だが、彼は西洋人形のように待つだけだった。
――面白くない。
興醒めし、腕をほどく。青年は体勢を変えることなく、僕を見つめ続けた。
「……なぜだ」
「何が」
「なぜ殺してくれない」
なるほど、そう言うことか。
理由が判明し、益々冷める。快感のない殺しには、一ミリも意欲が湧かなかった。
「残念だけど、つまらない殺しは嫌いでね」
「……それじゃあ去ってくれないか」
青年は、またもまっすぐ目を向けてくる。けれど先程とは違う、感情の伴わない瞳だった。
「去れなんて面白いこと言うね。君だって僕らを殺すために見回ってるんでしょ?」
兵士の役目を突きつけてやる。恐らく、彼らの目的は、僕らを島民たちに近付けないことだ。空き家の群れを見る限り、島民は島の端にでも避難しているのだろうから。
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「…………見逃してやる」
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