殺戮兵器と白の死にたがり

有箱

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殺戮兵器【2】

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 専用テントにてナイフを研ぐ。これは幼い頃からの習慣だ。最早半身となった刃は、今日も命を削ってくれた。
 とは言え、殺す数は日に五人もいない。いわゆる、一人にかける時間が取れるということだ。

 絶命までの工程を思い出し、一人ほくそ笑む。無様に震える姿は傑作だった。

「アルファ、報告せよ」

 布越しから、録音を疑う言葉が届く。

「F3地点は壊滅。以上」
「ご苦労だった」

 聞き飽きたやり取りを終えると、足音もなく気配は消えた。

 ここは基地だ。五人の戦士たちが――否、兵器たちが、粗末なテントを移動させながら侵略を続けている。

 大きな離島を制圧するため、僕ら〝人間兵器〟は投下された。と言っても、島の人口は千人ほどで、兵士はもっと少ないと聞く。
 その脆弱な命綱を都度殺し、既に空っぽの家を壊していく。それだけの簡単な作業を繰り返した。

 戦争に合わせて強化された体に能力、単純化された心――多くの人間が改造され、成功例だけが生き残った。
 僕はその中でも、特に優秀な個体らしい。百人を相手にしても、一掃できる自信がある。

 僕は敵を殺すのが楽しくて仕方なかった。震え、慄く人間を殺すのが。
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