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第十四章上海事変
第十四章第二十三節(アングロ・アメリカン同盟)
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二十三
大西洋を挟んで「アングロ・アメリカン」同盟が動き始めた一月二十八日、国務省は東京のフォーブス大使を通じて芳澤謙吉外相へ二つの公電を手交した。
ひとつは日本軍機が上海郊外の真茹無線電信台を爆撃して米国向けラジオ放送に障害を与えたという苦情で、もう一つは一月二十一日に塩澤提督が発した声明への不平であった。
「米国政府は、ある外国政府が条約および協約の基礎に基づく権利・利益を有する他の諸国政府が任命した現地代表者の協賛または同意なくして、上海における自国の海軍司令官が自己の裁量で自国領事の為した要求をほう助すべく、武力を誇示する権能を与えるという事態に無関心ではいられない」
また、米国が上海租界に多大なる権益を有するという立場から、「現地の地方官憲が外国人保護の義務を履行しない場合を除き、いかなる国といえども自国民保護の名目で外国領土へ兵士を上陸させる権利はない」として、上海には工部局警察がいるのだから、自国の軍隊を動かす前に先ず彼らを使うべきだと主張した。
何度も言うが、日本は決して単独で軍事行動を起こしたのではない。英・米・仏・伊を交えた上海駐留五カ国軍の司令官によって合意された「共同防衛」の任務に就こうとしたところ、第十九路軍側から射撃され、日本の担任区域でのみ軍事衝突が発生したのだ。
取材の現場で頭に血が上っている記者の弁ならまだ許せるものの、政府高官ともあろう人物がこの程度の認識しか持ち合わせていなければ、事態は一層紛糾すること請け合いだ。
それ故吉澤謙吉外相は、即座に「真茹電信台への爆撃など事実無根のデマだ」と一蹴した上で、こう反駁した。
「今回の紛争の原因は、過去長きにわたって続いた常軌を逸する排日運動に、現地居留民の感情が極度に興奮していた折柄、日本人僧侶への集団暴行事件が引き金となって事態がどんどん悪化したものだ。いま日本は朝野を上げて憤慨している状況にあり、ここで米国政府の求めるような生ぬるい解決策をとったのでは、いかなる内閣と言えども持ちこたえられるものではない」
加えて外相は、陸戦隊の上陸は必ず租界当局へ事前通告した上で行っているのだから、「米国政府ノ抗議ハ我方ニ於テ受クル何等の理由ナキモノト認ムル」と強い口調で返した。
大西洋を挟んで「アングロ・アメリカン」同盟が動き始めた一月二十八日、国務省は東京のフォーブス大使を通じて芳澤謙吉外相へ二つの公電を手交した。
ひとつは日本軍機が上海郊外の真茹無線電信台を爆撃して米国向けラジオ放送に障害を与えたという苦情で、もう一つは一月二十一日に塩澤提督が発した声明への不平であった。
「米国政府は、ある外国政府が条約および協約の基礎に基づく権利・利益を有する他の諸国政府が任命した現地代表者の協賛または同意なくして、上海における自国の海軍司令官が自己の裁量で自国領事の為した要求をほう助すべく、武力を誇示する権能を与えるという事態に無関心ではいられない」
また、米国が上海租界に多大なる権益を有するという立場から、「現地の地方官憲が外国人保護の義務を履行しない場合を除き、いかなる国といえども自国民保護の名目で外国領土へ兵士を上陸させる権利はない」として、上海には工部局警察がいるのだから、自国の軍隊を動かす前に先ず彼らを使うべきだと主張した。
何度も言うが、日本は決して単独で軍事行動を起こしたのではない。英・米・仏・伊を交えた上海駐留五カ国軍の司令官によって合意された「共同防衛」の任務に就こうとしたところ、第十九路軍側から射撃され、日本の担任区域でのみ軍事衝突が発生したのだ。
取材の現場で頭に血が上っている記者の弁ならまだ許せるものの、政府高官ともあろう人物がこの程度の認識しか持ち合わせていなければ、事態は一層紛糾すること請け合いだ。
それ故吉澤謙吉外相は、即座に「真茹電信台への爆撃など事実無根のデマだ」と一蹴した上で、こう反駁した。
「今回の紛争の原因は、過去長きにわたって続いた常軌を逸する排日運動に、現地居留民の感情が極度に興奮していた折柄、日本人僧侶への集団暴行事件が引き金となって事態がどんどん悪化したものだ。いま日本は朝野を上げて憤慨している状況にあり、ここで米国政府の求めるような生ぬるい解決策をとったのでは、いかなる内閣と言えども持ちこたえられるものではない」
加えて外相は、陸戦隊の上陸は必ず租界当局へ事前通告した上で行っているのだから、「米国政府ノ抗議ハ我方ニ於テ受クル何等の理由ナキモノト認ムル」と強い口調で返した。
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