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第十一章調査員派遣
第十一章第十三節(リットン調査団2)
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十三
これがいわゆる「リットン調査団」なのだ。
それなのに悲しいかな、いつの間にか主客が転倒して、あたかも聯盟主導で日本の不法な行為を“査察”するための調査団であったかのような認識が広まっている。
ちなみにインターネットの「コトバンク」で「リットン調査団」を検索すると、五件がヒットする。
まず最上位に出てくるのが『日本大百科全書(ニッポニカ)』の解説だ。
「1932年(昭和7)2月、満州事変の処理に関して国際連盟が派遣した調査委員会。満州事変は中国によって国際連盟に提訴された。中国が連盟規約第15条による総会開催を請求したのに対し、これを不利とみた日本は、現地への調査団派遣を提案し……(中略)報告書は、柳条湖(りゅうじょうこ)事件を正当な軍事行動とは認めず、『満洲国』建国も中国人の自発的な運動ではないとし、満洲を中国の主権の範囲としたうえで、地方的自治政府を設け、非武装地帯となすよう提案した。他方、満洲における日本の権益も承認しているが、日本政府は報告書に不満の意を表した。……」(傍点筆者)
次いで『ブリタニカ国際大百科事典小項目辞典』。
「1931年9月満州事変の勃発後、中国の提訴を受けた国際連盟理事会が実地調査のために派遣した委員会……」
旺文社『日本史辞典三訂版』はかなりブッ飛んでいる。
「1932(昭和7)年、満州問題について国際連盟より派遣された調査団。
1931年9月満州事変が起こると中国は連盟に提訴、これに対し理事会は紛争の不拡大と領土保全を決議し、日本の軍事行動停止を勧告した。(中略)同(32)年10月報告書を公表。日本の行為を侵略とみなし中国の主権を認めながら満州における日本の特殊権益を認める妥協的結論を示し……」
同じ旺文社でも『世界史辞典三訂版』になると随分内容が変わる。
「1931年に起こった満州事変を調査するため、32年、国際連盟が中国の提訴(1931年9月21日)と日本の提案(同年12月10日)にもとづいて満州に派遣した調査団。(中略)満州の特殊事情を理解し、日本の権益の尊重をうたっているが、満州国の成立を承認できないとしていた」
最後に登場するのは『デジタル大辞泉』。こちらも相当振るっている。
「1932年、満州事変調査のため国際連盟より派遣された、リットンを団長とする紛争調査隊。満州国を日本の傀儡国家として否定する報告書を作成した」
いずれの解説も「中国(中華民国)の提訴にもとづき……」となっているが、民国が提訴したのは「規約十一条」に基づく理事会の開催であって、「調査委員会」とは関係がない。このような悪質な“中抜き”をしたことにより、委員会があたかも「民国の訴えを受けた聯盟が日本の行為を査察する目的で満州へ派遣した」という意味合いに転じてしまった。
論理の建て付けからして、読者を誤導しているのだ!
特に何の事前知識を持たない我々日本人が「リットン調査団」と聞いて、何となく思い浮かべるイメージは、こうして作り上げられた。
次節以降では、報告書の中身に少々触れる。
これがいわゆる「リットン調査団」なのだ。
それなのに悲しいかな、いつの間にか主客が転倒して、あたかも聯盟主導で日本の不法な行為を“査察”するための調査団であったかのような認識が広まっている。
ちなみにインターネットの「コトバンク」で「リットン調査団」を検索すると、五件がヒットする。
まず最上位に出てくるのが『日本大百科全書(ニッポニカ)』の解説だ。
「1932年(昭和7)2月、満州事変の処理に関して国際連盟が派遣した調査委員会。満州事変は中国によって国際連盟に提訴された。中国が連盟規約第15条による総会開催を請求したのに対し、これを不利とみた日本は、現地への調査団派遣を提案し……(中略)報告書は、柳条湖(りゅうじょうこ)事件を正当な軍事行動とは認めず、『満洲国』建国も中国人の自発的な運動ではないとし、満洲を中国の主権の範囲としたうえで、地方的自治政府を設け、非武装地帯となすよう提案した。他方、満洲における日本の権益も承認しているが、日本政府は報告書に不満の意を表した。……」(傍点筆者)
次いで『ブリタニカ国際大百科事典小項目辞典』。
「1931年9月満州事変の勃発後、中国の提訴を受けた国際連盟理事会が実地調査のために派遣した委員会……」
旺文社『日本史辞典三訂版』はかなりブッ飛んでいる。
「1932(昭和7)年、満州問題について国際連盟より派遣された調査団。
1931年9月満州事変が起こると中国は連盟に提訴、これに対し理事会は紛争の不拡大と領土保全を決議し、日本の軍事行動停止を勧告した。(中略)同(32)年10月報告書を公表。日本の行為を侵略とみなし中国の主権を認めながら満州における日本の特殊権益を認める妥協的結論を示し……」
同じ旺文社でも『世界史辞典三訂版』になると随分内容が変わる。
「1931年に起こった満州事変を調査するため、32年、国際連盟が中国の提訴(1931年9月21日)と日本の提案(同年12月10日)にもとづいて満州に派遣した調査団。(中略)満州の特殊事情を理解し、日本の権益の尊重をうたっているが、満州国の成立を承認できないとしていた」
最後に登場するのは『デジタル大辞泉』。こちらも相当振るっている。
「1932年、満州事変調査のため国際連盟より派遣された、リットンを団長とする紛争調査隊。満州国を日本の傀儡国家として否定する報告書を作成した」
いずれの解説も「中国(中華民国)の提訴にもとづき……」となっているが、民国が提訴したのは「規約十一条」に基づく理事会の開催であって、「調査委員会」とは関係がない。このような悪質な“中抜き”をしたことにより、委員会があたかも「民国の訴えを受けた聯盟が日本の行為を査察する目的で満州へ派遣した」という意味合いに転じてしまった。
論理の建て付けからして、読者を誤導しているのだ!
特に何の事前知識を持たない我々日本人が「リットン調査団」と聞いて、何となく思い浮かべるイメージは、こうして作り上げられた。
次節以降では、報告書の中身に少々触れる。
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