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第十章昴々渓・チチハル

第十章第二十五節(回避行動)

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                二十五

 休憩を挟んでしばらく進んだ縦隊が、再び止まった。
 今度は前方から味方の騎兵がやってきた。騎兵は聯隊本部の前で下馬すると、幕僚たちと打ち合わせをはじめた。本日二度目の作戦会議となる。

 議論がまとまって騎兵は去っていった。すると聯隊本部から前衛部隊へ伝令が送られた。縦隊はふたたび前進を開始した。

 これまで左翼追撃隊はチチハル=昴々渓街道の左脇に沿って前進してきた。

 ここで部隊は街道を反対側へ渡り、大きく右へ迂回しはじめた。洸三郎と成田もそれにならった。大島聯隊長に理由を聞きに行くと、前方の狐店こてんに有力な敵部隊が陣を構えて待ち伏せしているという。夜間にそんな敵と戦闘するのは不利と判断し、回避行動を取るのだそうだ。
 聯隊長の判断は正しかった。追撃隊が手を出してこないと知った敵は、自ら陣地を放棄し北方へ退却していったという。

 無益な戦闘を避けて先を急いだ左翼追撃隊は、その後順調に進撃を続けた。
 ところが皮肉なことに、順調であったが故の混乱がこの後に控えていた。
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