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第十章昴々渓・チチハル

第十章第十一節(二手)

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                 十一

 北満侵攻の全権を掌握した第二師団は、部隊を二手に分けて洮昴線の左右に配置した。その上でほぼ線路に沿うかたちで同時に北進する作戦とした。

 既述のごとく、師団直下の輜重隊はすべて内地に置いてきてしまったから、主な輸送手段は鉄道に頼った。作戦も線路からそう遠く離れて展開できないという制約を受けた。
 左右の各部隊は何度か入れ替わり、最終的にはこうなった。

 右翼隊=指揮官 歩兵第十五旅団長 天野六郎少将
     歩兵第十五旅団(第十六聯隊および第三十聯隊第一中隊欠)
     歩兵第七十八聯隊
     騎兵一分隊
 左翼隊=指揮官 歩兵第三旅団長 長谷部彰吾少将
     歩兵第三旅団(第四聯隊第三中隊欠および第二十九聯隊第一大隊)
     騎兵一分隊
     装甲自動車隊(戦車一を属す)
     装甲軌道車
 砲兵隊=指揮官 野砲兵第二聯隊長 大谷清麿大佐
     野砲兵第二聯隊
     野砲兵第二十六聯隊第三大隊
     臨時野戦重砲兵大隊
 騎兵隊=指揮官 騎兵第二聯隊長 若松晴司中佐
     騎兵第二聯隊(三分隊欠)
     騎兵第二十八聯隊第二中隊
 飛行隊=指揮官 飛行第六聯隊長 長嶺亀助大
     独立飛行第八中隊
     独立飛行第九中隊
 予備隊=歩兵第十六聯隊(三小隊欠)
     騎兵一分隊

 このほか工兵隊や師団直轄部隊もあったが割愛する。

 作戦要領は、「攻撃の重点を三間房さんげんぼうに指向し敵の第一線を突破。次いで主力を東方及び東北方へ拡張して敵を陣地付近で殲滅する」と定められた。
攻撃開始は十八日の払暁。それまでに右翼隊は孤店こてんから三間房さんげんぼう南約一キロにある線路のくぼみへと展開し攻撃の準備をする。左翼隊は三間房の西南へと広がり命令を待てとされた。
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