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後日談①
5-1☆
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そこは、煌びやかとしか形容できないような部屋だった。
真っ先に目に入る、部屋の中央に設えられた天蓋付きのベッドには、大理石の柱に支えられた美しい白絹のカーテンが贅沢に垂れ下がっている。そのベッドの周囲を取り囲むように、豪奢で精緻な調度品の数々が置かれ、壁際には巨大な暖炉が設置されていた。
寒い国に生まれたリオの目にはそれが何よりの贅沢品に映るが、暖かい季節の長いパルミールでは、暖炉は装飾としての役割が大きいようだ。今は火の気のないその暖炉には美しく木の枠が組まれ、秋の花草のリースが優しく添えられている。
広々としたその部屋を、声もなく見回しながら立ち尽くすリオの背後で、重い扉の締まる重厚な音が響いた。この場にいるのが一人ではないことを思い出したリオがハッと振り向けば、華やかな面立ちの美青年が綻ぶように微笑んだ。
「お疲れ様でした、リオ。こちらにご滞在の間は、この離宮があなたの屋敷の代わりとなりますので。どうぞ心置きなく、どの部屋もお好きなようにお使いください」
貴公子然とした、優雅な美貌を微笑ませる青年は真実、この国が頂くただ一人の王子なのだ。
そんなことを改めて実感しながら、アルトくん、と。呼びかければ、宝石のように眩い瞳が甘く笑った。
「あなたが来てくださり、母も城の者も喜んでおります。どうか気負わず、ご自宅と同じように自由に過ごして頂ければ幸いです」
「う、うん。でも、こんなに広いなんて思わなくて……その、他のお客様がいらっしゃるなら、いつでもお部屋を移動するから」
遠慮せずに言ってね……! と。応じたリオはどこまでも真剣なつもりだったが、ご冗談を、と。ばかりに苦笑されて、困惑してしまう。いくら王子様に招かれた客人であっても、離宮一つを我が物顔に占有しては、顰蹙を買ってしまうような気がするのだが。
「他でもないあなたに、そんな非礼はいたしません。ここは元より、あなたのための離宮です」
「え……!?」
その言葉に、リオは流石に絶句した。
辺境領の広い敷地を利用したアスタリス邸は、リオの故郷の王城と同じくらい、広々として立派だった。流石にそれほどの広さはなくても――美しく、華やかで、荘厳で。通りすがりに眺めた王城を、そのまま小さくしたような。あまりにも華麗なその離宮が、まさか、自分一人のためのものだなんて。一体誰が信じられるだろう。
「本来であれば私がご用意するべきところ、母がどうしても譲ってくださらず……お好みに合わない箇所がありましたら、如何様にも手を加えますので、どうぞご遠慮なく」
「遠慮、します……!」
さらに重ねられるとんでもない言葉たちに、くらくらしてきたリオは何とか声を絞り出してストップをかけた。
王子様の婚約者とは、これほどまでに桁違いの歓待を受けるものなのだろうか。今更ながら、とんでもない契約を結んでしまったのではないかと実感したリオは、キラキラと眩い部屋のまだ入り口で立ち竦んだ。部屋に敷き詰められたカーペットも、部屋を飾るタペストリーも、贅沢に織り込まれた金糸が眩しい。
(どうしよう)
多少は緊張しつつも、未知への興味を楽しみに王都を訪れたはずのリオだったが、今は圧倒的に緊張の方が勝っていた。部屋中がキラキラと眩く見えるし、隣に立っているだけのアルトさえも眩しくて、正直その顔をまともに見られない。
初めての夜に、色々正直になり過ぎてしまったリオが、寂しい寂しいと縋り付いてしまったせいだろうか。あれ以降は足繁く、アスタリス邸に顔を見せてくれていた彼だったが、リオを王都に招く準備があったのだろう。今日は一月振りの再会だった。
変わらぬ美貌が眩しいし、正装姿は格好良過ぎて。もはやリオは、これまでどんな顔で彼と会話をしていたのかも思い出せない有り様だった。
「リオ? ふふ、緊張していますか?」
そう首を傾げたアルトが、柔らかくリオを抱き寄せる。手指の先を冷たくしながら、うん、と。正直に頷くだけで精一杯のリオを愛しげに見つめた彼は、そのまま流れるように自然に唇を重ねてきた。
それだけでリオの心臓はもう限界だったけれど、緊張も重なり過ぎれば、逆に鎮まるものなのだろうか。脈拍は少し落ち着いた。
温かな恋人の体温と、啄むような口付けに誘われて、リオの手がそろりとアルトの背中に回る。口付けの狭間に、嬉しそうに笑う吐息が触れて、口付けが深まった。
「ん、ん……あっ、んむ」
彼の舌の侵入を拒まずにいれば、容赦なく呼吸を奪われて息が上がる。リオは、彼としか唇を合わせたことはないけれど。彼はとても上手にキスをする、と。思っていた。
(アルトくんは……何でも、上手)
とても器用で、スマートで。何事にも不器用なばかりのリオは感心してばかりだ。――他人の、緊張の解き方まで上手だと。血の気を取り戻し、しっとりと熱を帯びながら濡れる指に指を絡められて撫で摩られながら、そんなことを物思う。
久し振りのキスが気持ち良くて、油断していたかもしれない。服越しに突然、腰から尻にかけてをゆっくりと撫でられて、ぞくぞくとした快感が背筋を駆け抜けた。
「ひゃ……っ!?」
電流のように唐突な快楽に、思わず上げた甘えた声をついばむように、アルトは更に情熱的に口内を犯してくる。
足が浮いてしまうほどぎゅうぎゅうに抱き締められながら、唾液を交換し合う濃厚な接吻の最中。リオは彼の背中から、首元、胸元へと手を這わせた。その肌触りだけで上等の物と解る生地の上からも分かる程に熱い体温からは、彼の興奮を感じる。細身に見えて意外にも筋肉質な、引き締まった手触りの背や胸板に腕を絡ませれば、それだけでリオも十分に興奮してしまった。
「んぅ……っ!」
きゅうっ、と。強く舌を絡められて、息を詰まらせるリオの衣服の中に、アルトの手が忍び込む。
下着の上から陰部に触れられるだけで、甘い痺れが全身を襲う。直接触れられたのは今になってのことだというのに、キスだけで十分に熱く潤ったその場所は、すでに硬く張り詰めて濡れていた。
「可愛いですね、リオ。口付けだけで、こんなに……」
「あっ、や……」
そんな指摘に頬を染めれば、アルトはくすりと笑って耳元へ顔を寄せた。まるで悪戯でもするかのように耳に軽く歯を立てながら、ゆっくりと舌を差し入れてくる。
口付けのような水音を立てて舐められれば、それだけで腰が砕けてしまいそうで。リオは堪らず、身を捩って逃げを打った。
「ひゃっ! ん、アルト、くん。それは、だめ」
「ダメでしたか?」
どうして? と。優しいのに意地悪な囁きが、脳髄を甘く揺らす。
甘美に過ぎる誘惑に、リオはしばらく沈黙の抵抗をしてみせたが、ぐずぐずしていたら本当に腰が抜けてしまうことを知っていた。
「……ベッドに。連れて、行って」
「はい、仰せのままに」
真っ赤な顔で、観念したように口にしたリオを目映い瞳に映しながら。楽しそうにそう答えたアルトが、リオの足をすくうようにして抱き上げると、軽々とベッドへと運んでいく。
間近に見れば透けるほどに繊細な、ロマンティックなシースルーカーテンを掻き分け、優しく寝台に沈められて。迫る美しい顔をドキドキと見上げながら――これだけで、全然。自宅と同じようにだなんて無理な話だと、リオは思った。
真っ先に目に入る、部屋の中央に設えられた天蓋付きのベッドには、大理石の柱に支えられた美しい白絹のカーテンが贅沢に垂れ下がっている。そのベッドの周囲を取り囲むように、豪奢で精緻な調度品の数々が置かれ、壁際には巨大な暖炉が設置されていた。
寒い国に生まれたリオの目にはそれが何よりの贅沢品に映るが、暖かい季節の長いパルミールでは、暖炉は装飾としての役割が大きいようだ。今は火の気のないその暖炉には美しく木の枠が組まれ、秋の花草のリースが優しく添えられている。
広々としたその部屋を、声もなく見回しながら立ち尽くすリオの背後で、重い扉の締まる重厚な音が響いた。この場にいるのが一人ではないことを思い出したリオがハッと振り向けば、華やかな面立ちの美青年が綻ぶように微笑んだ。
「お疲れ様でした、リオ。こちらにご滞在の間は、この離宮があなたの屋敷の代わりとなりますので。どうぞ心置きなく、どの部屋もお好きなようにお使いください」
貴公子然とした、優雅な美貌を微笑ませる青年は真実、この国が頂くただ一人の王子なのだ。
そんなことを改めて実感しながら、アルトくん、と。呼びかければ、宝石のように眩い瞳が甘く笑った。
「あなたが来てくださり、母も城の者も喜んでおります。どうか気負わず、ご自宅と同じように自由に過ごして頂ければ幸いです」
「う、うん。でも、こんなに広いなんて思わなくて……その、他のお客様がいらっしゃるなら、いつでもお部屋を移動するから」
遠慮せずに言ってね……! と。応じたリオはどこまでも真剣なつもりだったが、ご冗談を、と。ばかりに苦笑されて、困惑してしまう。いくら王子様に招かれた客人であっても、離宮一つを我が物顔に占有しては、顰蹙を買ってしまうような気がするのだが。
「他でもないあなたに、そんな非礼はいたしません。ここは元より、あなたのための離宮です」
「え……!?」
その言葉に、リオは流石に絶句した。
辺境領の広い敷地を利用したアスタリス邸は、リオの故郷の王城と同じくらい、広々として立派だった。流石にそれほどの広さはなくても――美しく、華やかで、荘厳で。通りすがりに眺めた王城を、そのまま小さくしたような。あまりにも華麗なその離宮が、まさか、自分一人のためのものだなんて。一体誰が信じられるだろう。
「本来であれば私がご用意するべきところ、母がどうしても譲ってくださらず……お好みに合わない箇所がありましたら、如何様にも手を加えますので、どうぞご遠慮なく」
「遠慮、します……!」
さらに重ねられるとんでもない言葉たちに、くらくらしてきたリオは何とか声を絞り出してストップをかけた。
王子様の婚約者とは、これほどまでに桁違いの歓待を受けるものなのだろうか。今更ながら、とんでもない契約を結んでしまったのではないかと実感したリオは、キラキラと眩い部屋のまだ入り口で立ち竦んだ。部屋に敷き詰められたカーペットも、部屋を飾るタペストリーも、贅沢に織り込まれた金糸が眩しい。
(どうしよう)
多少は緊張しつつも、未知への興味を楽しみに王都を訪れたはずのリオだったが、今は圧倒的に緊張の方が勝っていた。部屋中がキラキラと眩く見えるし、隣に立っているだけのアルトさえも眩しくて、正直その顔をまともに見られない。
初めての夜に、色々正直になり過ぎてしまったリオが、寂しい寂しいと縋り付いてしまったせいだろうか。あれ以降は足繁く、アスタリス邸に顔を見せてくれていた彼だったが、リオを王都に招く準備があったのだろう。今日は一月振りの再会だった。
変わらぬ美貌が眩しいし、正装姿は格好良過ぎて。もはやリオは、これまでどんな顔で彼と会話をしていたのかも思い出せない有り様だった。
「リオ? ふふ、緊張していますか?」
そう首を傾げたアルトが、柔らかくリオを抱き寄せる。手指の先を冷たくしながら、うん、と。正直に頷くだけで精一杯のリオを愛しげに見つめた彼は、そのまま流れるように自然に唇を重ねてきた。
それだけでリオの心臓はもう限界だったけれど、緊張も重なり過ぎれば、逆に鎮まるものなのだろうか。脈拍は少し落ち着いた。
温かな恋人の体温と、啄むような口付けに誘われて、リオの手がそろりとアルトの背中に回る。口付けの狭間に、嬉しそうに笑う吐息が触れて、口付けが深まった。
「ん、ん……あっ、んむ」
彼の舌の侵入を拒まずにいれば、容赦なく呼吸を奪われて息が上がる。リオは、彼としか唇を合わせたことはないけれど。彼はとても上手にキスをする、と。思っていた。
(アルトくんは……何でも、上手)
とても器用で、スマートで。何事にも不器用なばかりのリオは感心してばかりだ。――他人の、緊張の解き方まで上手だと。血の気を取り戻し、しっとりと熱を帯びながら濡れる指に指を絡められて撫で摩られながら、そんなことを物思う。
久し振りのキスが気持ち良くて、油断していたかもしれない。服越しに突然、腰から尻にかけてをゆっくりと撫でられて、ぞくぞくとした快感が背筋を駆け抜けた。
「ひゃ……っ!?」
電流のように唐突な快楽に、思わず上げた甘えた声をついばむように、アルトは更に情熱的に口内を犯してくる。
足が浮いてしまうほどぎゅうぎゅうに抱き締められながら、唾液を交換し合う濃厚な接吻の最中。リオは彼の背中から、首元、胸元へと手を這わせた。その肌触りだけで上等の物と解る生地の上からも分かる程に熱い体温からは、彼の興奮を感じる。細身に見えて意外にも筋肉質な、引き締まった手触りの背や胸板に腕を絡ませれば、それだけでリオも十分に興奮してしまった。
「んぅ……っ!」
きゅうっ、と。強く舌を絡められて、息を詰まらせるリオの衣服の中に、アルトの手が忍び込む。
下着の上から陰部に触れられるだけで、甘い痺れが全身を襲う。直接触れられたのは今になってのことだというのに、キスだけで十分に熱く潤ったその場所は、すでに硬く張り詰めて濡れていた。
「可愛いですね、リオ。口付けだけで、こんなに……」
「あっ、や……」
そんな指摘に頬を染めれば、アルトはくすりと笑って耳元へ顔を寄せた。まるで悪戯でもするかのように耳に軽く歯を立てながら、ゆっくりと舌を差し入れてくる。
口付けのような水音を立てて舐められれば、それだけで腰が砕けてしまいそうで。リオは堪らず、身を捩って逃げを打った。
「ひゃっ! ん、アルト、くん。それは、だめ」
「ダメでしたか?」
どうして? と。優しいのに意地悪な囁きが、脳髄を甘く揺らす。
甘美に過ぎる誘惑に、リオはしばらく沈黙の抵抗をしてみせたが、ぐずぐずしていたら本当に腰が抜けてしまうことを知っていた。
「……ベッドに。連れて、行って」
「はい、仰せのままに」
真っ赤な顔で、観念したように口にしたリオを目映い瞳に映しながら。楽しそうにそう答えたアルトが、リオの足をすくうようにして抱き上げると、軽々とベッドへと運んでいく。
間近に見れば透けるほどに繊細な、ロマンティックなシースルーカーテンを掻き分け、優しく寝台に沈められて。迫る美しい顔をドキドキと見上げながら――これだけで、全然。自宅と同じようにだなんて無理な話だと、リオは思った。
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