【完結】夢魔の花嫁

月城砂雪

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番外編2(成長編)

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 少し体が成長したくらいでは、二人の身長差を考えれば誤差のようなものだろう。
 それでも、膝の上に抱き上げられて、なお膝立ちをしなければいつもは届かない彼の顔と位置が合って。間近で見つめ合った瞳の美しさに動揺したジュゼは、込み上げた羞恥にぱっと顔を伏せた。

「可愛い方。こちらを向いてください」

 吐息混じりの甘い声に囁かれるだけで、体の芯が熱くなる。視線を逸らしてしまったことを咎めるように顎を捕えられて、頬に彼の唇が触れた。そのまま、今度は耳元に。耳朶を柔く食まれて、甘やかな愛撫にびくびくと身体が震える。

「っや、ん……ぁ」
「可愛い、愛しい、私の花嫁。……ふふ、口付けがしやすいのは、とてもいいですね」

 可愛い、と。繰り返し囁かれる声を、いとも容易く捉えられた唇の内にも吹き込まれて。じわじわと全身に広がる官能の火に、もう指先まで支配されてしまう。
 悪戯に食まれる耳朶の熱さも、肌をくすぐる湿った吐息も。――それがレーヴェのものであるというだけで、泣きたいくらい気持ちがいい。

「っは、ふ……ぁ♡ あ……」

 彼がもたらす甘やかな愛撫に身悶えていると、背筋を撫でた指先がゆっくりと降下してゆく。びくりと震えるジュゼのうなじを、レーヴェは片手で優しく擽るように撫でながら、もう片手をするりと服の下に滑り込ませた。

「あ……や、レーヴェ……」

 柔らかな尻たぶを揉みながら、時折探るように入り口を弄られて、ジュゼの腰がびくびくと跳ねる。震える指先が、ぎゅっとレーヴェのシャツを掴んで縋った。

(あ♡ レーヴェの、匂い)

 ふわりと鼻腔に香るのは、とろりとした甘さの中に、腰の奥がぞくぞくするような危うさを秘めた伴侶の匂いだ。眩暈がするような心地良さに身を任せていると、不意に耳元に吐息がかかる。

「大きいあなたも可愛いですね。……ふふ、とても抱きやすいです」

 囁かれると同時に、ちゅ、と。また耳を食まれて、甘い吐息が零れる。そのまま続けて首筋を吸われて、ジュゼは思わず期待に身を震わせた。

「ん……っ♡ レーヴェ……♡」

 この美しい悪魔に抱かれたくて、自分は雌になったのだ。その事実が改めてジュゼの心を昂らせていく。
 気が付けば足はすっかりはしたなく開いていて、服の上からでも解る伴侶の雄々しくそそり立った陰茎に、いやらしく腰を擦りつけてしまっていた。
 媚と恥じらいを含んだ瞳でねだるように見上げれば、魔性の美貌の悪魔の双眼と視線がかち合う。いつものように愛しげにジュゼを見つめる瞳の奥には、隠しきれない情欲の色がちらついていた。

「可愛い愛しい、私の花嫁。今日はまた、随分と積極的ですね?」
「あ……♡」

 優しい声で囁きながらも、レーヴェのその手は既にジュゼの衣服の中へと入り込んでいる。滑らかな肌の上を這う美しい指の感触だけで、ジュゼはもう堪らない気持ちになっていた。
 レーヴェの手は優しくジュゼに触れてゆく。服の下に潜り込ませた手のひらが腰を撫で回し、胸元まで這い上がった指先が乳首を摘まみ上げた。愛されて熟れた身体をなぞられるだけで、いつでも蜜を満たすように作り変えられてしまった後ろの穴が、じゅわりと潤んで泣き濡れる。
 ――身体だけ、妙齢に成長させてしまった代償だろうか。今のジュゼは、まるで発情期の猫のような有様だった。

「ふふ、こんなに濡れて……いけない方ですね。悪魔を誘惑するおつもりですか?」
「あんっ♡」

 ぐちゅりと淫猥な音を立てて、レーヴェの長い中指が入り込んでくる。それだけでジュゼは背をしならせ、甘く達してしまった。
 びくびくと震える体をあやす様に撫でられながら、ゆっくりと奥まで挿し込まれてしまえば、あとはもうレーヴェの意のままになるだけだ。

「あっ、ぁあっ♡ はぅ……♡  だめぇ、そこぉ……♡ あっ、あっ! ゆっ、び、じゃなくてぇ♡」

 ジュゼは無意識のうちに腰を浮かせて揺らめかせて、股の間に感じる愛しいばかりの灼熱に、自らのそれを擦り付けていた。既にどろどろに濡れた下着と布地が擦れる感触にさえ感じてしまい、ぴゅくぴゅく、と。鈴口からは絶え間なく蜜が漏れた。

「だめですか? ……こんなに、気持ちよさそうなのに?」
「やっ、ひゃっ! あ、あぁ……っ♡」

 胎内を捏ね回していた指先が不意にくちゅりと折り曲げられ、内側の一点を優しく押し上げられる。途端、甘やかな愉悦に視界がぶれた。これ以上はどうにかなってしまうという恐怖と期待が同時に湧き上がって、ジュゼの喉がこくりと上下する。

「っ、んんっ♡ っ、あぁっ! まだ、だめ♡ あっ……イっちゃ……♡」

 びくんっ、と。大きく体が痙攣して、背筋を走る電流のような快感が脳髄を痺れさせた。思考の全てが蕩け落ちてしまいそうな強烈な感覚に、ジュゼが大きく瞳を見開く。
 絶頂の余波に、びくびくと小刻みに痙攣をしていると、宥めるように頬や唇を吸われて。ジュゼはゆっくりと潤んだ瞳を瞬かせた。ジュゼ、と。愛ばかりを滲ませた甘い声に名前を呼ばれて、うっとりしてしまう。

「……ふふ。続きは、部屋に戻ってからと思っていたのですが」

 あなたがとても可愛いので、と。囁くレーヴェの声は、熱に蕩けて一層甘い。
 快楽に朦朧とした頭で、ぼんやりとその声に聞き惚れていたジュゼは、力の抜けた足を容易く割り開かれてハッと目を見開いた。
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