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第三章(出産編)
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ぐちゅぐちゅと、水気のある物を掻き回す音が、霧のような湯気に満たされた浴室に響く。
窓も時計もないその部屋で、時間の経過を正確に推し測ることは不可能だったが。時に緩急や強弱をつけながら、飽きずに繰り返されるその音は、もう裕に半刻は続いていた。
「んあっ、あっ、あん♡ は、ふ……ぁあっ♡」
そしてその水音と共鳴するように、媚びた少年の声が甘く響く。
ほとんど意識を飛ばした状態で浴室に運ばれたジュゼは、あらゆる体液に塗れた全身を丁寧に洗い流されながら、長い指に尻穴を掻き混ぜられて喘いでいた。繰り返された荒淫に屈し切った身体は番の雄に向けて無抵抗に開かれていて、深く突き込まれた三本の指をぐっぷりと咥え込んでしゃぶりついている。ちゅうちゅうと指に吸い付く甘えた感触に、ジュゼを後ろから抱えた妖魔はくすぐったそうな笑い声を立てた。
きめ細かく、滑らかな白い肌。全体的にがっしりした骨格ながらも、どこか感じる中性的なしなやかさ。直視するだけで総毛立つほどの美貌をうっとりと微笑ませながら、レーヴェは腕の中のジュゼの身体をさらに優しく抱き寄せた。
「私の可愛い、愛しい人。そろそろ一回イっておきましょうね」
「あ……ああっ、だめ♡ あ、ゆび、ゆび、そんな……!」
もはや隠れる気もなく膨れ切ったしこりを、繊細な指先に優しく撫でられる。ベッドの上で、何度も熱い剛直に擦り上げられたそこはどうしようもなく敏感で、触れられるだけの刺激でもう限界だった。
激しく追い立てられるのとはまた異なる、優しく絞り上げられるように込み上げる快楽に、ジュゼが大きく仰け反る。喘ぐ唇を唇で塞いで甘い叫び声を喰らうと、レーヴェはゆっくりと緩慢に駆け上がる絶頂に悶え善がるジュゼの身体を白い指で優しく愛撫した。
一つ目の頂点のその先まで、容易く導かれた全身が緊張と弛緩を繰り返し、妖魔の膝の上に優しく拘束された身体がガクンガクンと跳ね回る。中に突き入れた指をずるりと抜いたレーヴェは、縦に割れて生々しく濡れる、性器と化した尻穴を外側から優しく撫でて笑った。
「ふふ、気持ち良かったですか?」
「あぅ、う、ふあっ♡ あっ……♡」
抜けきらない官能に、言葉らしい言葉が紡げない。とろりと蕩けた瞳に問いへの肯定を映したジュゼは、まだ下半身をプルプルと震わせながら、せめて懸命に頷いた。嬉しそうな笑い声がジュゼの耳のすぐ傍で響き、吐息一つからも伝わる妖魔の情愛深さにうっとりと緩んだジュゼの身体が、再びピンと反り返って緊張する。
ジュゼの股ぐらに入り込んだ足が、雌の官能に頭を垂れたままのペニスをぐりぐりと刺激して、上体に絡んだ腕は火照った肌に愛撫を加えた。出口のない絶頂の衝撃が渦巻く身体に重ねて込み上げる悦楽に頭を打ち振りながら身を反らせれば、たっぷりの唾液を含んだ舌を耳の奥に捻じ込まれて、悲鳴のような嬌声がこぼれる。
「あ~~~っ♡」
じゅぼじゅぼと、いやらしく粘った水音が、ジュゼの脳裏に直接大きく反響した。すっかり性感帯として開発された耳から生まれる、ぞくぞくとした疼きが全身を駆け巡り、たまらずに逃げを打った腰を強く掴まれ引き寄せられる。灼熱の男根が尻の狭間に埋め込まれるように密着し、はしたなく縦に割れた尻穴が物欲しそうな粘液を垂らしながらぷちゅぷちゅと吸い付き甘えた。
ぬかるんだ音を立てながら、耳の奥に潜り込んでは引き抜かれる舌の熱に悶える身体が、流してもらったばかりの汗に濡れる。肌をもどかしく愛撫していた指先が遂に乳首に触れた瞬間、ジュゼの頭は真っ白にスパークした。
与えられる快感に絶え間なく痙攣する直腸のさらに奥深く、一番安全な場所で育つ赤子は日に日に大きくなっている。――この胎に、命が宿ったその日から、朝も夜もなく抱き潰されて。ジュゼはもうずっと、獣のような声を上げて善がり続けていた。
潤沢な精気を摂取できる性交の間はずっと、夢魔は睡眠を必要としないらしい。注がれ続ける精気はともかく、気力の回復にも体力の回復にも眠りを必要とする人間であるジュゼの意識は、限界が来る度にふつふつと途切れていたが。失神したように眠っているその間にも全身を甘く嬲られて、ジュゼの身体はすっかりいやらしく変わり果ててしまったように思える。目覚める度に感度の増す体に怯えていられたのも最初だけで、今はもう、目覚める度に快楽の頂点を更新して果てる感覚が病みつきになってしまった。
意識のある時間のほとんどをベッドの上で、美しい妖魔と身体をつなげて過ごすジュゼの時間の感覚はすっかり狂っていたけれど。もうすぐですね、と。ジュゼの胎を撫でながら、嬉しそうに囁いたレーヴェの言葉に、微かな正気が蘇る。夢魔の赤子が満ちるのに必要な三か月が、間もなく過ぎ去ろうとしていることを知ったジュゼは、荒い息を吐き出しながらそっと腹部に手を触れた。
(赤ちゃん……)
ぷくりと膨れたジュゼの腹部は、教会に通っていた村の妊婦よりは余程小さい。三月で生まれると言うのなら、元々人間の赤ちゃんよりも小さいのかもしれない。大人しく、いい子にジュゼの中に収まっているその子供が怖いような気もするし、愛しいような気もする。正気に返る時間が少なすぎて、この感情を何と呼ぶのか、深く考えられるだけの余裕はなかったけれど。
お腹が膨らんでくる辺りからは、そもそも正直、ほとんどの記憶がなかった。ただただ気持ちが良くて、聞くに堪えない声で聞くに堪えないことを喚き散らした記憶が曖昧に残るばかりだったが。我を忘れて淫らに乱れるほど、何故かレーヴェは嬉しそうにジュゼを可愛がってくれるのだ。
「可愛い人、私の花嫁。お産は私がお助けしますから、あなたは緊張しなくて大丈夫ですよ」
「ん、ぅん。あっ、はぁ……♡」
苦しいほどの快楽に染められても、抱き締められるだけでいくらでも悦び善がってしまうのは、彼を好きになってしまったからなのだろうか。己の中の淫らな記憶に震えた体を軽々と抱き上げられて、されるがままに湯殿へと運ばれる。
窓も時計もないその部屋で、時間の経過を正確に推し測ることは不可能だったが。時に緩急や強弱をつけながら、飽きずに繰り返されるその音は、もう裕に半刻は続いていた。
「んあっ、あっ、あん♡ は、ふ……ぁあっ♡」
そしてその水音と共鳴するように、媚びた少年の声が甘く響く。
ほとんど意識を飛ばした状態で浴室に運ばれたジュゼは、あらゆる体液に塗れた全身を丁寧に洗い流されながら、長い指に尻穴を掻き混ぜられて喘いでいた。繰り返された荒淫に屈し切った身体は番の雄に向けて無抵抗に開かれていて、深く突き込まれた三本の指をぐっぷりと咥え込んでしゃぶりついている。ちゅうちゅうと指に吸い付く甘えた感触に、ジュゼを後ろから抱えた妖魔はくすぐったそうな笑い声を立てた。
きめ細かく、滑らかな白い肌。全体的にがっしりした骨格ながらも、どこか感じる中性的なしなやかさ。直視するだけで総毛立つほどの美貌をうっとりと微笑ませながら、レーヴェは腕の中のジュゼの身体をさらに優しく抱き寄せた。
「私の可愛い、愛しい人。そろそろ一回イっておきましょうね」
「あ……ああっ、だめ♡ あ、ゆび、ゆび、そんな……!」
もはや隠れる気もなく膨れ切ったしこりを、繊細な指先に優しく撫でられる。ベッドの上で、何度も熱い剛直に擦り上げられたそこはどうしようもなく敏感で、触れられるだけの刺激でもう限界だった。
激しく追い立てられるのとはまた異なる、優しく絞り上げられるように込み上げる快楽に、ジュゼが大きく仰け反る。喘ぐ唇を唇で塞いで甘い叫び声を喰らうと、レーヴェはゆっくりと緩慢に駆け上がる絶頂に悶え善がるジュゼの身体を白い指で優しく愛撫した。
一つ目の頂点のその先まで、容易く導かれた全身が緊張と弛緩を繰り返し、妖魔の膝の上に優しく拘束された身体がガクンガクンと跳ね回る。中に突き入れた指をずるりと抜いたレーヴェは、縦に割れて生々しく濡れる、性器と化した尻穴を外側から優しく撫でて笑った。
「ふふ、気持ち良かったですか?」
「あぅ、う、ふあっ♡ あっ……♡」
抜けきらない官能に、言葉らしい言葉が紡げない。とろりと蕩けた瞳に問いへの肯定を映したジュゼは、まだ下半身をプルプルと震わせながら、せめて懸命に頷いた。嬉しそうな笑い声がジュゼの耳のすぐ傍で響き、吐息一つからも伝わる妖魔の情愛深さにうっとりと緩んだジュゼの身体が、再びピンと反り返って緊張する。
ジュゼの股ぐらに入り込んだ足が、雌の官能に頭を垂れたままのペニスをぐりぐりと刺激して、上体に絡んだ腕は火照った肌に愛撫を加えた。出口のない絶頂の衝撃が渦巻く身体に重ねて込み上げる悦楽に頭を打ち振りながら身を反らせれば、たっぷりの唾液を含んだ舌を耳の奥に捻じ込まれて、悲鳴のような嬌声がこぼれる。
「あ~~~っ♡」
じゅぼじゅぼと、いやらしく粘った水音が、ジュゼの脳裏に直接大きく反響した。すっかり性感帯として開発された耳から生まれる、ぞくぞくとした疼きが全身を駆け巡り、たまらずに逃げを打った腰を強く掴まれ引き寄せられる。灼熱の男根が尻の狭間に埋め込まれるように密着し、はしたなく縦に割れた尻穴が物欲しそうな粘液を垂らしながらぷちゅぷちゅと吸い付き甘えた。
ぬかるんだ音を立てながら、耳の奥に潜り込んでは引き抜かれる舌の熱に悶える身体が、流してもらったばかりの汗に濡れる。肌をもどかしく愛撫していた指先が遂に乳首に触れた瞬間、ジュゼの頭は真っ白にスパークした。
与えられる快感に絶え間なく痙攣する直腸のさらに奥深く、一番安全な場所で育つ赤子は日に日に大きくなっている。――この胎に、命が宿ったその日から、朝も夜もなく抱き潰されて。ジュゼはもうずっと、獣のような声を上げて善がり続けていた。
潤沢な精気を摂取できる性交の間はずっと、夢魔は睡眠を必要としないらしい。注がれ続ける精気はともかく、気力の回復にも体力の回復にも眠りを必要とする人間であるジュゼの意識は、限界が来る度にふつふつと途切れていたが。失神したように眠っているその間にも全身を甘く嬲られて、ジュゼの身体はすっかりいやらしく変わり果ててしまったように思える。目覚める度に感度の増す体に怯えていられたのも最初だけで、今はもう、目覚める度に快楽の頂点を更新して果てる感覚が病みつきになってしまった。
意識のある時間のほとんどをベッドの上で、美しい妖魔と身体をつなげて過ごすジュゼの時間の感覚はすっかり狂っていたけれど。もうすぐですね、と。ジュゼの胎を撫でながら、嬉しそうに囁いたレーヴェの言葉に、微かな正気が蘇る。夢魔の赤子が満ちるのに必要な三か月が、間もなく過ぎ去ろうとしていることを知ったジュゼは、荒い息を吐き出しながらそっと腹部に手を触れた。
(赤ちゃん……)
ぷくりと膨れたジュゼの腹部は、教会に通っていた村の妊婦よりは余程小さい。三月で生まれると言うのなら、元々人間の赤ちゃんよりも小さいのかもしれない。大人しく、いい子にジュゼの中に収まっているその子供が怖いような気もするし、愛しいような気もする。正気に返る時間が少なすぎて、この感情を何と呼ぶのか、深く考えられるだけの余裕はなかったけれど。
お腹が膨らんでくる辺りからは、そもそも正直、ほとんどの記憶がなかった。ただただ気持ちが良くて、聞くに堪えない声で聞くに堪えないことを喚き散らした記憶が曖昧に残るばかりだったが。我を忘れて淫らに乱れるほど、何故かレーヴェは嬉しそうにジュゼを可愛がってくれるのだ。
「可愛い人、私の花嫁。お産は私がお助けしますから、あなたは緊張しなくて大丈夫ですよ」
「ん、ぅん。あっ、はぁ……♡」
苦しいほどの快楽に染められても、抱き締められるだけでいくらでも悦び善がってしまうのは、彼を好きになってしまったからなのだろうか。己の中の淫らな記憶に震えた体を軽々と抱き上げられて、されるがままに湯殿へと運ばれる。
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