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2.出席
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召喚された日からおよそ2年.......その間に色々なことがあった。
王子が私のことを偽物呼ばわりするものだから、王子に媚びを売っている者も私を偽物という。
そのおかげで、私の食事は散々だった。
朝の十時頃に一度運ばれるだけだ。
内容は、カビる直前というかカビている硬いコッペパン一つとぬるい紅茶一杯。サラダも何も副菜になりそうなものはなし。もちろんスープも。
こんなんで人がまともに育つとでもおもってるのかしら?栄養失調になるに決まってるでしょ!
だから、仕方なく部屋を窓から抜け出し、食料を調達した。私が抜け出したらもしかしたらあの場にいた二人に何か危険がおよぶかもしれないと思ったからだ。
そうでなければ私はここにいない。
まあ、二年前のあの日にしか会ったことも見たことだってないのだが。
それでも、きっと私より年下だと思うし(体型的に...)、そういう子たちは守るのが普通なのよね?きっと。
いつになった元の世界へ戻れるのかしら。
ううん、最早戻っても私に居場所は無いかもしれない。
家賃滞納、大学サボり、バイトサボりなどなどで。
それならいっそここのお城をいつか抜け出して下町で平穏な暮らしを望むわ。
幸い、魔法を勉強するための本はあったのでそれで学んでいるし、うん、多分暮らしていける。
だけど、最初の魔法を覚えるまでは最悪だった。何度死のうかと....いや、もうそれすらどうでも良い。そんなことを考えていられる段階では無くなったのだ。
それよりも、問題はどうやってここを去るかだ。
あの子たち二人を残して去るのはやっぱり心配だ。
でも、二人は王子に気に入られているようだったから、私みたいな酷い扱いはされていないだろう。
だが、私が抜け出したことにより危害が加わるかも分からない。
そこだけが危惧するところなのだ。
はぁ、どうしたものか。
コンコン
ん?今、誰かドアを叩いた?
そんなはずは......だって今日の分のカビたパンと紅茶はもう届けられたし....。
「3番目の聖女様、入ってもよろしいですか。」
いや、本当に叩いた人がいた。
因みに、3番目の聖女とは、聖女というおハチが回ってくるのが一番最後ということだ。そんなあからさまで大丈夫なのかと思ったが、王子が何か言ったのだろうと勝手に納得してしまった。
「はい。どうぞ。」
ガチャ
「本日はパーティへ出席してもらいます。そのためのドレスと髪型や化粧など準備をさせていただきます。」
「はい?パーティですか?しかし、今までそのような事は一度もなかったですよね。」
「はい。ですが王太子殿下が連れてくるよう仰ったとメイド長からお聞きしただけですので、しがないのメイドの一人では何も分からず、すみません。」
確かにそりゃあそうだろう。
「いえ、大丈夫ですよ。準備とは何をすれば良いのですか?」
「3番目の聖女様には座っていただいていたら十分です。ですが、体をお清めになる時は少し移動をしていただきます。」
お清め?何それと思ったが
「分かりました。」
とだけ返しておいた。
結局お清めとはただお風呂に入るだけだった。
とは言ってもメイドさん達に体を洗ってもらったのだけど。
本来はそっちが正解な世界観かもしれないのだが、私がこっちへ来てからもそのような事はなかったので、少々驚いた。
それから、色々、本当に色々やってやっと準備が整った。
色々というのはドレス合わせだったり、(あーでもない、こーでもないと話していたのだ。主にメイドたちで。)
「もうこれで大丈夫です。」
キリがなさそうだったので私から声を出した。
「かしこまりました。では、そろそろ馬車の用意をさせていただきます。」
「馬車?そんなに遠い所へ行くのですか?」
「いえ、ここの王宮内にある所へ行きます。ですが、王宮は少々広いですから馬車に乗っていただくようになります。」
えー、たったそれだけのために?御者さんも大変じゃない?いや、それが仕事だとは分かるんだけど、でも、やっぱりそんな近い所に運ぶためにお金を払うとは、考えが合わない。だって、その御者さんへの給料だって国民の税金だろうし.........とはいえ今のこの考えは完全歩合制だった場合のことだけれど。
普通に考えれば固定給よね。その場合はいくら運ぼうが給料は変わらない。
「今から行くところはどれくらい離れているのですか?」
「会場はそうですね.........2km程ですかね。」
いや、それくらい歩くわ!というか、意外と近いのね.....もっと広いイメージだったけれど。
まあ、2キロでしょ?大体15分から20分じゃない。
「歩きますから御者さんは呼ばなくて大丈夫ですよ。」
うん、むしろ好かれていない敵陣の中に好き好んでこの部屋よりも狭いスペースになんて入れないし。
「分かりました。では、案内させていただきます。」
あー、そっか。私に会場がどこかなんて分かるはずがないのだから、メイドさんが案内を頼まれてしまうわけか。それは少し悪い事をしたかもしれない。
「お願いします。」
黙々と歩くこと20分..........
「こちらが会場になります。王太子殿下は後から参られますので中でお待ちください。」
「はい。分かりました。」
王子が?2年間も会ってないのに私に用があるとでも言うの?
中で待つとそれは居心地が悪かった。
「あの方が.......」
「あぁ、王太子殿下がお気に召さなかったという.......」
「胸があるからか.......」
「まあ、背丈も少しあるな......」
そんな声ばかり聞こえてきた。
勝手なことばかり言ってんじゃないよ。王子が少女愛好家というのには同じ意見だけれど。
王子が私のことを偽物呼ばわりするものだから、王子に媚びを売っている者も私を偽物という。
そのおかげで、私の食事は散々だった。
朝の十時頃に一度運ばれるだけだ。
内容は、カビる直前というかカビている硬いコッペパン一つとぬるい紅茶一杯。サラダも何も副菜になりそうなものはなし。もちろんスープも。
こんなんで人がまともに育つとでもおもってるのかしら?栄養失調になるに決まってるでしょ!
だから、仕方なく部屋を窓から抜け出し、食料を調達した。私が抜け出したらもしかしたらあの場にいた二人に何か危険がおよぶかもしれないと思ったからだ。
そうでなければ私はここにいない。
まあ、二年前のあの日にしか会ったことも見たことだってないのだが。
それでも、きっと私より年下だと思うし(体型的に...)、そういう子たちは守るのが普通なのよね?きっと。
いつになった元の世界へ戻れるのかしら。
ううん、最早戻っても私に居場所は無いかもしれない。
家賃滞納、大学サボり、バイトサボりなどなどで。
それならいっそここのお城をいつか抜け出して下町で平穏な暮らしを望むわ。
幸い、魔法を勉強するための本はあったのでそれで学んでいるし、うん、多分暮らしていける。
だけど、最初の魔法を覚えるまでは最悪だった。何度死のうかと....いや、もうそれすらどうでも良い。そんなことを考えていられる段階では無くなったのだ。
それよりも、問題はどうやってここを去るかだ。
あの子たち二人を残して去るのはやっぱり心配だ。
でも、二人は王子に気に入られているようだったから、私みたいな酷い扱いはされていないだろう。
だが、私が抜け出したことにより危害が加わるかも分からない。
そこだけが危惧するところなのだ。
はぁ、どうしたものか。
コンコン
ん?今、誰かドアを叩いた?
そんなはずは......だって今日の分のカビたパンと紅茶はもう届けられたし....。
「3番目の聖女様、入ってもよろしいですか。」
いや、本当に叩いた人がいた。
因みに、3番目の聖女とは、聖女というおハチが回ってくるのが一番最後ということだ。そんなあからさまで大丈夫なのかと思ったが、王子が何か言ったのだろうと勝手に納得してしまった。
「はい。どうぞ。」
ガチャ
「本日はパーティへ出席してもらいます。そのためのドレスと髪型や化粧など準備をさせていただきます。」
「はい?パーティですか?しかし、今までそのような事は一度もなかったですよね。」
「はい。ですが王太子殿下が連れてくるよう仰ったとメイド長からお聞きしただけですので、しがないのメイドの一人では何も分からず、すみません。」
確かにそりゃあそうだろう。
「いえ、大丈夫ですよ。準備とは何をすれば良いのですか?」
「3番目の聖女様には座っていただいていたら十分です。ですが、体をお清めになる時は少し移動をしていただきます。」
お清め?何それと思ったが
「分かりました。」
とだけ返しておいた。
結局お清めとはただお風呂に入るだけだった。
とは言ってもメイドさん達に体を洗ってもらったのだけど。
本来はそっちが正解な世界観かもしれないのだが、私がこっちへ来てからもそのような事はなかったので、少々驚いた。
それから、色々、本当に色々やってやっと準備が整った。
色々というのはドレス合わせだったり、(あーでもない、こーでもないと話していたのだ。主にメイドたちで。)
「もうこれで大丈夫です。」
キリがなさそうだったので私から声を出した。
「かしこまりました。では、そろそろ馬車の用意をさせていただきます。」
「馬車?そんなに遠い所へ行くのですか?」
「いえ、ここの王宮内にある所へ行きます。ですが、王宮は少々広いですから馬車に乗っていただくようになります。」
えー、たったそれだけのために?御者さんも大変じゃない?いや、それが仕事だとは分かるんだけど、でも、やっぱりそんな近い所に運ぶためにお金を払うとは、考えが合わない。だって、その御者さんへの給料だって国民の税金だろうし.........とはいえ今のこの考えは完全歩合制だった場合のことだけれど。
普通に考えれば固定給よね。その場合はいくら運ぼうが給料は変わらない。
「今から行くところはどれくらい離れているのですか?」
「会場はそうですね.........2km程ですかね。」
いや、それくらい歩くわ!というか、意外と近いのね.....もっと広いイメージだったけれど。
まあ、2キロでしょ?大体15分から20分じゃない。
「歩きますから御者さんは呼ばなくて大丈夫ですよ。」
うん、むしろ好かれていない敵陣の中に好き好んでこの部屋よりも狭いスペースになんて入れないし。
「分かりました。では、案内させていただきます。」
あー、そっか。私に会場がどこかなんて分かるはずがないのだから、メイドさんが案内を頼まれてしまうわけか。それは少し悪い事をしたかもしれない。
「お願いします。」
黙々と歩くこと20分..........
「こちらが会場になります。王太子殿下は後から参られますので中でお待ちください。」
「はい。分かりました。」
王子が?2年間も会ってないのに私に用があるとでも言うの?
中で待つとそれは居心地が悪かった。
「あの方が.......」
「あぁ、王太子殿下がお気に召さなかったという.......」
「胸があるからか.......」
「まあ、背丈も少しあるな......」
そんな声ばかり聞こえてきた。
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