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再会の都は不響和音が鳴る

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 シオン様を見ると「この神官様はルシェルの弟何だ」と話してくれた。そう言えば、弟がいるって言っていたのを思い出す。


「またそんな事を言って」

「だからこそ貴方も興味あったでしょう? 神秘の存在である人魚に」

「っ……まあ、そこは確かに兄さんの今の立場があるからかも知れませんけども」


 何やら話し込む神官様とルシェル先生。その表情は和気藹々としていて、久しぶりの再会で積もる話も有りそうだと思う。先程の話を聞きそびれてしまったけど。
 暫し眺めていたが、お暇するべきなのかなと考え始めるとまるで予期したように神官様はルシェル先生との話を止めて、くるりと僕に向き直った。


「先程は名前を名乗らず、先に進めてしまい、失礼致しました。私はテッラ・ヒーリングと申します。聞いているかとは存じますが、ルシェルの弟でもあります」

「テッラは綺麗なものが好きなので、カノン君に会うのを凄く楽しみにしていたんですよ」

「に、兄さん……! それは言わない約束ですよ」


 そうは言うも僕を見る目はさっきとは違い憧れのようなうっとりとした目を向けられている気がする。
 雰囲気も見た目も何処と無く似てるけど、1番似ているのは何か熱中するものに対しての情熱みたいなもの何だろうか。
 僕を見る目が凄くキラキラしている。そのキラキラが純度高めと言うか、何か凄く綺麗と言うか飲まれそうになるし、凄く申し訳無い気持ちになる。困っているとシオン様が手を取ってくれて、ハッとすると後ろに隠された。


「相変わらずそっくりだな……。ところでさっきの話何だが」

「ああ、申し訳ございません! 話が逸れてしまってましたね。本当に極微量の魔力が揺れるのを感じましたので、間違いないですよ。カノンさんはお話される時に口を動かしているようなので、ご本人も気付かれていなかったみたいですが」


 チラリと僕に視線を向けてにこりと微笑むテッラ神官は色々と説明してくれた。


「念話ですかね。相手の頭の中に直接語りかけているんですね。やけに騒がしいのに何故か、良く声が通っているように感じてはいませんでしたか?」


 頭の中に直接語り掛ける。凄い一度目の人生で既視感を覚える言葉だな、何て思いながら周りを見渡すと何だかわりと腑に落ちる点がある気がする。ディー叔父様にも後で聞いてみてもいいかも知れない。


「だから普通に口を動かさなくても特定の人にのみ念話が可能かと思います。ただ相手も念話出来る程度の魔力は必要ですから遠目になればなるほど一方通行ですかね」

「それは、種族特有って訳では無いのか」

「そう言われますと種族特有で念話で話している可能性はあり得ると思います。ただ念話なら感覚がわかれば魔力持ちは出来ると思いますよ。カノンさんの場合は種族的に海中にいたので、極自然にやれていたのかもしれませんね」


 海の中では話し方は確かに地上とは少し違う。何より呼吸を常にしていないから念話での会話が当たり前だったのかな。
 そもそも友達と呼べる相手は数年後には世代を跨いでいて、魚人はいても同い歳と言える人魚のしかも同性はいなかった。
 ディー叔父様も地上に出て、爵位を得てから疎遠になってたし、僕も地上に出てから口を使って声を出して、歌うのではなく会話するのを覚えたような……念話はあまりに自然にやっていたことで、当たり前だったから全く気付かなかった。言われてみたら喉が無いのに良く話が通じたなって普通に考えて気づけそうだけど、どうしてそうする事にしたのかを思い返せば、奴隷であった僕は口が聞けない事での不都合を何とかカバーしたかった。
 自己防衛の為に……だけど、その切っ掛けを思い起こすのは酷く憂鬱で気持ち悪い。

 歌うのも地上にいる時に稀に声を出してたから珍しかった訳で、人側になれば人魚もその声も全てが魅力的に映る。
 でも、それなら奴隷になった時に既に奪われていた声でどうやって……少なくとも念話では恐らく人を殺められない……試した事はないけど。

 考えていると不意に肩を掴まれて、ハッとしたように後ろ手にシオン様がいた。気付かない間に僕は首元を、喉を触っていた。不安そうに見えたのだろうか。シオン様にあまり心配を掛けたくない。でも、放っておかれるのも嫌だと言う矛盾もあれば何か不思議と落ち着くのと凄い安堵感が勝る。
 昔と比べても今は頼れる人が傍にいるから。寧ろ肩の力を抜くように大きく深呼吸する。


「あの、それだと喉が、無いのに声で人を殺めていたのか。とか、その……わかりますか」

「へ? 何ですか、その話」


 この話を直接するのはテオ以来だった。
 そして、シオン様に話すのも。シオン様はテオに話を聞いていたのだろう。驚く素振りをする事は無く、ただ静かに聞いていてくれた。時折、肩に置かれた手に力が入る感覚はあるけれど。それもそうだ、知っているからこそ僕を助けようとしてくれているのだから。
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