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使用人達の遊戯場
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その後直ぐに、騎士数人が隊長筆頭にお嬢様の元へ向かい、跪いて謝罪するところをしっかりと確認して、良かったと胸を撫で下ろす。
「どうやら大成功のようですね」
「テオ、さん……!」
聞こえた声に振り返るとテオが興味深げに器械を見ては周囲見渡し、そう判断してくれたようだ。僕はゆっくり頷く。
「いや、驚きました。珍しいどころか初めて見ましたよ、こんな食べ物」
感心しているテオは綿あめも興味深々と見ていた。かなり好評の綿あめは試行錯誤で何度も試作を作っては試食していた技術者や料理人にはお断りされ、お嬢様のあの笑顔でお腹いっぱいだろうと言われ、僕も頷いていた。
その為それ以外には大体配り切り、あっという間に材料も底を尽いていた。これは、最後の一つだった。
「良かったらテオも食べてみて下さい」
綿あめを差し出すと少し驚いたテオは綿あめでも無く、僕でもないところを見ては肩を落とすと遠慮するように苦笑した。
「いえ、今回は遠慮致します。また今度材料が揃ったらお願い致します。なので、今回は後ろの方に食べさせてあげてください」
「え?」
きょとんとしては後ろに振り返ろうとする前に綿あめを持っている手を上に引っ張られると反射的に上を向いた。その相手は僕が持っていた木の棒に着いている綿あめを口に含みもぐもぐと頬張った。
「甘いなぁ……これ、カノンが考えたのか?」
「は、はい!?」
思わず上擦った声で返事をしてしまった。そうだ、今日はシオン様の帰宅日だったんだ。だからテオはこの場が始まった時に姿が無かったのだ。執事長と侍女長も当然居なかった。
「凄いな、これは……もしかして綿飴ってやつか?」
「シオン様……ご存知何ですか?」
酷く穏やかにそう笑うシオン様に思わず出たその言葉にしまったと手で口元を覆う。だが、その行為自体の違和感とおかしさに更にやってしまったと自覚した。一方シオン様は一瞬目を見開くと驚いたように見えたかと思えば、視線を泳がせたが直ぐにこちらに視線を戻した。
「え? ああ、そうだな。昔聞いた事があって寧ろカノンこそ思いだした?」
「ちょっと違いますよーシオン様、これは雲ですよ、雲! あーでも、綿って言う感じもしなくは無いっすけど」
何の話かわからず否定の返事をしようとしたが直ぐに副隊長が割って入って来て、その名称を訂正する。
「まあ、確かに雲にも見えなく無いか」
納得したように笑うシオン様はそのまま僕の腕を掴んだままで、綿飴も僕が持ったまま、また口の中に綿飴を頬張った。これでは何だか、シオン様に僕が食べさせているように見えなくもない。当然、綿飴から手を離せないし、シオン様が移動するなら着いて行かなければならない。何だか、滑稽で恥ずかしい。
「シオン様……はしたないですよ。食べたいなら受け取ってから食べたら良いでしょう」
「いや、カノンからのを食べたくてさ」
すかさず、その様子にツッコミを入れるテオは今の僕の状況には苦言を呈しているわけではなかった。シオン様は掴まれている腕を見てからその手を離すと上機嫌に空いてる方の手を取った。その動作がとてもスマート過ぎて、結局腕を掴むから手を繋ぐに変わっただけ。
何でこうなったのかと考える間も無く、驚きと照れが入り交じる。騎士や使用人もチラリと僕やその繋がれた手を見るも何も突っ込まず、シオン様を帰宅を出迎える声を掛け始めて、シオン様はそれに応えるだけ、応えていく始末。
「いやーこれはあの噂は本当ですねー」
「あの……!」
噂がどうとか今は良いからこの状況から抜け出したかった。戸惑いと困惑と、恥ずかしさとで強めに声を出し、手を引いてシオン様を引き止めた。シオン様は振り返ってくれたは良いが目を細めて、握られている僕の手の甲に一瞬の口付けをした。侍女の歓喜の悲鳴が聞こえた気がしたが、僕は一瞬にして固まった。
「カノンに話したい事と聞きたい事がある。逃げないで欲しくてな」
「え、あ、は……はぃ」
頬が熱くて思考が追い付かない。
上擦った声で返答をしてしまった。
こんな風にされた事は今までに無い。
身体を求められる事は何度もあれど、だって僕は……。
シオン様は何を考えているのだろう。
テオは若干呆れているような目をしている気もしたが、表情には出さず、リリーを見たら親指を立ててあとは任せてと口だけを動かして僕に伝えてきた。
その後にシオン様に連れられて、副隊長とテオを共に連れ立ってシオン様の執務室に向かった。
当然、手は繋がれたままだった。
「どうやら大成功のようですね」
「テオ、さん……!」
聞こえた声に振り返るとテオが興味深げに器械を見ては周囲見渡し、そう判断してくれたようだ。僕はゆっくり頷く。
「いや、驚きました。珍しいどころか初めて見ましたよ、こんな食べ物」
感心しているテオは綿あめも興味深々と見ていた。かなり好評の綿あめは試行錯誤で何度も試作を作っては試食していた技術者や料理人にはお断りされ、お嬢様のあの笑顔でお腹いっぱいだろうと言われ、僕も頷いていた。
その為それ以外には大体配り切り、あっという間に材料も底を尽いていた。これは、最後の一つだった。
「良かったらテオも食べてみて下さい」
綿あめを差し出すと少し驚いたテオは綿あめでも無く、僕でもないところを見ては肩を落とすと遠慮するように苦笑した。
「いえ、今回は遠慮致します。また今度材料が揃ったらお願い致します。なので、今回は後ろの方に食べさせてあげてください」
「え?」
きょとんとしては後ろに振り返ろうとする前に綿あめを持っている手を上に引っ張られると反射的に上を向いた。その相手は僕が持っていた木の棒に着いている綿あめを口に含みもぐもぐと頬張った。
「甘いなぁ……これ、カノンが考えたのか?」
「は、はい!?」
思わず上擦った声で返事をしてしまった。そうだ、今日はシオン様の帰宅日だったんだ。だからテオはこの場が始まった時に姿が無かったのだ。執事長と侍女長も当然居なかった。
「凄いな、これは……もしかして綿飴ってやつか?」
「シオン様……ご存知何ですか?」
酷く穏やかにそう笑うシオン様に思わず出たその言葉にしまったと手で口元を覆う。だが、その行為自体の違和感とおかしさに更にやってしまったと自覚した。一方シオン様は一瞬目を見開くと驚いたように見えたかと思えば、視線を泳がせたが直ぐにこちらに視線を戻した。
「え? ああ、そうだな。昔聞いた事があって寧ろカノンこそ思いだした?」
「ちょっと違いますよーシオン様、これは雲ですよ、雲! あーでも、綿って言う感じもしなくは無いっすけど」
何の話かわからず否定の返事をしようとしたが直ぐに副隊長が割って入って来て、その名称を訂正する。
「まあ、確かに雲にも見えなく無いか」
納得したように笑うシオン様はそのまま僕の腕を掴んだままで、綿飴も僕が持ったまま、また口の中に綿飴を頬張った。これでは何だか、シオン様に僕が食べさせているように見えなくもない。当然、綿飴から手を離せないし、シオン様が移動するなら着いて行かなければならない。何だか、滑稽で恥ずかしい。
「シオン様……はしたないですよ。食べたいなら受け取ってから食べたら良いでしょう」
「いや、カノンからのを食べたくてさ」
すかさず、その様子にツッコミを入れるテオは今の僕の状況には苦言を呈しているわけではなかった。シオン様は掴まれている腕を見てからその手を離すと上機嫌に空いてる方の手を取った。その動作がとてもスマート過ぎて、結局腕を掴むから手を繋ぐに変わっただけ。
何でこうなったのかと考える間も無く、驚きと照れが入り交じる。騎士や使用人もチラリと僕やその繋がれた手を見るも何も突っ込まず、シオン様を帰宅を出迎える声を掛け始めて、シオン様はそれに応えるだけ、応えていく始末。
「いやーこれはあの噂は本当ですねー」
「あの……!」
噂がどうとか今は良いからこの状況から抜け出したかった。戸惑いと困惑と、恥ずかしさとで強めに声を出し、手を引いてシオン様を引き止めた。シオン様は振り返ってくれたは良いが目を細めて、握られている僕の手の甲に一瞬の口付けをした。侍女の歓喜の悲鳴が聞こえた気がしたが、僕は一瞬にして固まった。
「カノンに話したい事と聞きたい事がある。逃げないで欲しくてな」
「え、あ、は……はぃ」
頬が熱くて思考が追い付かない。
上擦った声で返答をしてしまった。
こんな風にされた事は今までに無い。
身体を求められる事は何度もあれど、だって僕は……。
シオン様は何を考えているのだろう。
テオは若干呆れているような目をしている気もしたが、表情には出さず、リリーを見たら親指を立ててあとは任せてと口だけを動かして僕に伝えてきた。
その後にシオン様に連れられて、副隊長とテオを共に連れ立ってシオン様の執務室に向かった。
当然、手は繋がれたままだった。
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