25 / 26
第24話
しおりを挟む
和也さんも疲れきって、私ももはや万策尽き、これ以上の抵抗は無理だと思われた、その瞬間。
病室のドアが勢いよく開き、警官が飛び込んできた。
「動くな!ナイフを捨てろ!」
警官の手には拳銃が握られている。
混乱の中、天道くんは窓から飛び出して逃走した。警官は直ぐにそれを追っていった。
その後、私は緊張の糸が切れたように、急激に意識が遠のいた。
私が目を覚ましたのは、それから2日後のことだった。和也さんが病室で私の手を握っている。
またか...と、私はまるでデジャブを見る気分でその手を眺めていた。その瞳には、もはや完全に運命の糸は写らなくなっていた。
「よかった...目を覚ましたんだね」
和也さんの声には安堵の色が濃かった。
「うん。天道くんは...?」
私の最初の言葉に、和也は少し表情を曇らせた。
「詩織、あのね...」
タイミングを待っていたように、病室のテレビからニュースキャスターの声が響いた。
「一昨日夜に病院から逃走した天道翔太容疑者は、路地から大通りに飛び出し、走行中の車にはねられ救急搬送されましたが、その後死亡しました。警察は...」
私は言葉を失った。自分が必死に救おうとした命が、結局こんな形で失われてしまうなんて。
「私には、もう運命は見えないの。天道くんの運命も変えられなかった...」
和也さんは私の手を優しく握り締めた。
「詩織、君は彼を救おうとした。それが最も大切なことだ」
私は深いため息をつく。
それを見て、和也さんは続けた。
「人の運命を変える事なんて、本当は誰にもできないのかもしれないね」
私は窓の外を見つめた。朝日が昇り始め、新しい一日の始まりを告げている。
「和也さん、ありがとう...やっぱり、自分の力で未来を作っていかないとね」
「ああ、そうだな。そして、その未来に僕も一緒にいていいかな?」
私の頬が熱くなった。
「うん...一緒にいてください」
私は決意を新たにした。もう運命は見えない。でも、それは新たな可能性の始まりでもある。これからは自分の意志で、そして大切な人たちと共に、未来を紡いでいこう。
あの激しい一夜から1ヶ月が経った。
私は徐々に体力を取り戻し、今日からようやく会社に復帰することになった。朝のオフィスは、いつもと変わらない喧騒に包まれている。
だが、私が出社すると、一瞬静寂が訪れた。
「おはようございます」
私の声に、同僚たちが我に返ったように次々と声をかけてきた。
「紡木さん、おかえりなさい!」
「大丈夫?無理しないでね」
温かい言葉の数々に、胸が熱くなるのを感じた。
「みんな、ありがとう。もう大丈夫です」
デスクに向かう途中、佐藤さんが寄ってきた。
「詩織さん、聞いた?私たちの会社、なんとか立て直しに成功したんですって」
「え?本当?」
佐藤さんは嬉しそうに頷いた。
「うん。詳しくは聞いてないけど、大手企業の支援があったみたいで...ほら、橘さんの所。何も聞いてないの?」
私は思わず苦笑いする。
和也さんの顔が頭に浮かぶ。彼とはこの1ヶ月、毎日電話で話していたが、何の話も聞いていない。
「そう...よかった」
「あ、そういえば私にも良いことがあって」
佐藤さんの頬が急に少し赤くなる。
「私、来週から彼と同棲始めるの」
「えー!そうなんだ、おめでとう!」
私は心から祝福していた。彼女の運命の糸をつい見ようとしたが、もはや何も見えない。きっと幸せである事には違いない。
その日の午後、部長から呼び出しがあった。
「紡木君、新しいプロジェクトの話が来ているんだが」
「はい」
「実はね、いつもの〇〇商事からの依頼なんだ。また新しい企画を立ち上げてもらいたいそうだ。プロジェクトの詳細は来週の打ち合わせで聞くことになる。紡木さん、担当してもらえるかい?」
「はい、喜んでお引き受けします」
部長室を出た私は、深呼吸をした。復帰早々で大きな仕事になりそうだ。私の胸は高鳴っていた。
その夜、いつものように和也から電話があった。
「詩織、仕事復帰どうだった?」
「うん!実はまた和也さん所の会社から、仕事貰っちゃって......本当は、辞めてそっちに行こうかなって思ってたんだけど。もう少しやらないとダメかなぁ」
少し間があって、彼の言葉があった。
「そうだね。それはやった方がいいと思う!」
「うん。だから...また暫く。会えない日が続くかもしれないけど。待っててね」
「もちろんだよ!」
彼との電話を切った後、私はベッドに倒れ込んだ。
寂しさが込み上げてきたが、会社を支援してもらってる企業、まして自分を気に入ってくれている所との仕事は断れない。
窓の外では、優しく輝いている満月を見ながら。私はそんな事を考え、そして静かに目を閉じた。明日からまた、新しい日々が始まる。
あれから1週間が過ぎ、ついに新プロジェクトの打ち合わせの日がやってきた。私は少し緊張しながら会議室に向かった。
「紡木さん、準備はいい?」
佐藤さんが声をかけてくる。
「うん、大丈夫」
会議室のドアを開けると、そこには見知らぬ男性が立っていた。
「はじめまして。〇〇商事の加藤と申します」
「紡木です。必ず満足いただける企画を提案させて頂きます。よろしくお願いします」
打ち合わせが始まり、新しいプロジェクトの概要が説明される。詩織は必死にメモを取りながら、時折窓の外を見やっていた。
やがて加藤さんが、一旦電話で席を外し。その後、直ぐに戻ってきた。
「...すみません。総責任者が到着しましたので、改めてご紹介させていただきます」
加藤さんの言葉に頷くと、彼の後ろから別の人物が入ってきた。そこに現れたのは...。
「か、和也さん!?」
思わず声が出てしまった。
彼は満面の笑みを浮かべながら、詩織に向かって歩いてきた。
「久しぶりだね、詩織」
「どうして...?」
「サプライズだよ。実は先週、こっちに戻ってきたんだ」
私は言葉を失った。喜びと驚きが入り混じる。いや、本当に急いで辞表を出さなくてよかった。
「えっと...」と、加藤さんが困惑した様子で声を上げる。「お二人、知り合いだったんですか?」
和也さんが笑いながら答える。
「ああ、彼女は僕の...大切な人だよ」
その言葉に、私の顔が赤くなる。相変わらずサラっと......
打ち合わせは和やかな雰囲気で進み、新しいプロジェクトの輪郭が徐々に明らかになっていった。私は時折彼の顔を見つめ、彼もそれに気づくと微笑み返す。
会議が終わり、二人きりになった時、彼が私に囁いた。
「今夜、時間ある?」
もちろん、小さく頷いた。
「じゃあ、7時に駅前で待ち合わせね」
その夜、私は久しぶりに念入りにお化粧をした。鏡の前で何度も服を変え、髪型を直す。
「姉ちゃん、新しい男でも出来た?」
健太が茶化してくる。
「違うわよ!和也さんよ!」
「ああ、かず兄こっちに戻ってきたんだ」
「あんた、なに勝手に兄弟みたいな設定にしてるのよ」
健太は笑いながら去っていった。
待ち合わせ場所に着くと、和也さんが花束を持って立っていた。
「綺麗だよ、詩織」
その言葉に、私の頬が熱くなる。こういう人だった、と思いながら彼について歩く。
連れて来られたのは、二人が初めてデートをしたレストランだった。
「覚えてる?」和也さんが尋ねる。
「うん、もちろん」と、私は微笑む。「あの時は緊張して、フォークを落としちゃったっけ」
わざと落としたのだけれど。
それから二人で懐かしい思い出話に花を咲かせながら、ゆっくりとディナーを楽しんだ。
デザートが運ばれてきた頃、彼が真剣な表情になった。妙な緊張感に背筋が伸びる。
「詩織、今回のプロジェクトは絶対に良いものにしようと思う」
「うん、私もそう思ってる」
「そこで...先ずは僕の計画を聞いてもらえないかな?」
私は少し首を傾げた。
「企画を考えるのは、うちの会社の仕事なんですけど?」
緊張感をほぐすように、私は皮肉っぽく言う。
思惑通り、和也さんは笑った。
「とりあえず聞くだけ聞いて」
「分かったわ。聞くだけね」
私も笑いながら答える。すると彼はゆっくりと席を立ち、私の隣で突然ひざまずいた。
病室のドアが勢いよく開き、警官が飛び込んできた。
「動くな!ナイフを捨てろ!」
警官の手には拳銃が握られている。
混乱の中、天道くんは窓から飛び出して逃走した。警官は直ぐにそれを追っていった。
その後、私は緊張の糸が切れたように、急激に意識が遠のいた。
私が目を覚ましたのは、それから2日後のことだった。和也さんが病室で私の手を握っている。
またか...と、私はまるでデジャブを見る気分でその手を眺めていた。その瞳には、もはや完全に運命の糸は写らなくなっていた。
「よかった...目を覚ましたんだね」
和也さんの声には安堵の色が濃かった。
「うん。天道くんは...?」
私の最初の言葉に、和也は少し表情を曇らせた。
「詩織、あのね...」
タイミングを待っていたように、病室のテレビからニュースキャスターの声が響いた。
「一昨日夜に病院から逃走した天道翔太容疑者は、路地から大通りに飛び出し、走行中の車にはねられ救急搬送されましたが、その後死亡しました。警察は...」
私は言葉を失った。自分が必死に救おうとした命が、結局こんな形で失われてしまうなんて。
「私には、もう運命は見えないの。天道くんの運命も変えられなかった...」
和也さんは私の手を優しく握り締めた。
「詩織、君は彼を救おうとした。それが最も大切なことだ」
私は深いため息をつく。
それを見て、和也さんは続けた。
「人の運命を変える事なんて、本当は誰にもできないのかもしれないね」
私は窓の外を見つめた。朝日が昇り始め、新しい一日の始まりを告げている。
「和也さん、ありがとう...やっぱり、自分の力で未来を作っていかないとね」
「ああ、そうだな。そして、その未来に僕も一緒にいていいかな?」
私の頬が熱くなった。
「うん...一緒にいてください」
私は決意を新たにした。もう運命は見えない。でも、それは新たな可能性の始まりでもある。これからは自分の意志で、そして大切な人たちと共に、未来を紡いでいこう。
あの激しい一夜から1ヶ月が経った。
私は徐々に体力を取り戻し、今日からようやく会社に復帰することになった。朝のオフィスは、いつもと変わらない喧騒に包まれている。
だが、私が出社すると、一瞬静寂が訪れた。
「おはようございます」
私の声に、同僚たちが我に返ったように次々と声をかけてきた。
「紡木さん、おかえりなさい!」
「大丈夫?無理しないでね」
温かい言葉の数々に、胸が熱くなるのを感じた。
「みんな、ありがとう。もう大丈夫です」
デスクに向かう途中、佐藤さんが寄ってきた。
「詩織さん、聞いた?私たちの会社、なんとか立て直しに成功したんですって」
「え?本当?」
佐藤さんは嬉しそうに頷いた。
「うん。詳しくは聞いてないけど、大手企業の支援があったみたいで...ほら、橘さんの所。何も聞いてないの?」
私は思わず苦笑いする。
和也さんの顔が頭に浮かぶ。彼とはこの1ヶ月、毎日電話で話していたが、何の話も聞いていない。
「そう...よかった」
「あ、そういえば私にも良いことがあって」
佐藤さんの頬が急に少し赤くなる。
「私、来週から彼と同棲始めるの」
「えー!そうなんだ、おめでとう!」
私は心から祝福していた。彼女の運命の糸をつい見ようとしたが、もはや何も見えない。きっと幸せである事には違いない。
その日の午後、部長から呼び出しがあった。
「紡木君、新しいプロジェクトの話が来ているんだが」
「はい」
「実はね、いつもの〇〇商事からの依頼なんだ。また新しい企画を立ち上げてもらいたいそうだ。プロジェクトの詳細は来週の打ち合わせで聞くことになる。紡木さん、担当してもらえるかい?」
「はい、喜んでお引き受けします」
部長室を出た私は、深呼吸をした。復帰早々で大きな仕事になりそうだ。私の胸は高鳴っていた。
その夜、いつものように和也から電話があった。
「詩織、仕事復帰どうだった?」
「うん!実はまた和也さん所の会社から、仕事貰っちゃって......本当は、辞めてそっちに行こうかなって思ってたんだけど。もう少しやらないとダメかなぁ」
少し間があって、彼の言葉があった。
「そうだね。それはやった方がいいと思う!」
「うん。だから...また暫く。会えない日が続くかもしれないけど。待っててね」
「もちろんだよ!」
彼との電話を切った後、私はベッドに倒れ込んだ。
寂しさが込み上げてきたが、会社を支援してもらってる企業、まして自分を気に入ってくれている所との仕事は断れない。
窓の外では、優しく輝いている満月を見ながら。私はそんな事を考え、そして静かに目を閉じた。明日からまた、新しい日々が始まる。
あれから1週間が過ぎ、ついに新プロジェクトの打ち合わせの日がやってきた。私は少し緊張しながら会議室に向かった。
「紡木さん、準備はいい?」
佐藤さんが声をかけてくる。
「うん、大丈夫」
会議室のドアを開けると、そこには見知らぬ男性が立っていた。
「はじめまして。〇〇商事の加藤と申します」
「紡木です。必ず満足いただける企画を提案させて頂きます。よろしくお願いします」
打ち合わせが始まり、新しいプロジェクトの概要が説明される。詩織は必死にメモを取りながら、時折窓の外を見やっていた。
やがて加藤さんが、一旦電話で席を外し。その後、直ぐに戻ってきた。
「...すみません。総責任者が到着しましたので、改めてご紹介させていただきます」
加藤さんの言葉に頷くと、彼の後ろから別の人物が入ってきた。そこに現れたのは...。
「か、和也さん!?」
思わず声が出てしまった。
彼は満面の笑みを浮かべながら、詩織に向かって歩いてきた。
「久しぶりだね、詩織」
「どうして...?」
「サプライズだよ。実は先週、こっちに戻ってきたんだ」
私は言葉を失った。喜びと驚きが入り混じる。いや、本当に急いで辞表を出さなくてよかった。
「えっと...」と、加藤さんが困惑した様子で声を上げる。「お二人、知り合いだったんですか?」
和也さんが笑いながら答える。
「ああ、彼女は僕の...大切な人だよ」
その言葉に、私の顔が赤くなる。相変わらずサラっと......
打ち合わせは和やかな雰囲気で進み、新しいプロジェクトの輪郭が徐々に明らかになっていった。私は時折彼の顔を見つめ、彼もそれに気づくと微笑み返す。
会議が終わり、二人きりになった時、彼が私に囁いた。
「今夜、時間ある?」
もちろん、小さく頷いた。
「じゃあ、7時に駅前で待ち合わせね」
その夜、私は久しぶりに念入りにお化粧をした。鏡の前で何度も服を変え、髪型を直す。
「姉ちゃん、新しい男でも出来た?」
健太が茶化してくる。
「違うわよ!和也さんよ!」
「ああ、かず兄こっちに戻ってきたんだ」
「あんた、なに勝手に兄弟みたいな設定にしてるのよ」
健太は笑いながら去っていった。
待ち合わせ場所に着くと、和也さんが花束を持って立っていた。
「綺麗だよ、詩織」
その言葉に、私の頬が熱くなる。こういう人だった、と思いながら彼について歩く。
連れて来られたのは、二人が初めてデートをしたレストランだった。
「覚えてる?」和也さんが尋ねる。
「うん、もちろん」と、私は微笑む。「あの時は緊張して、フォークを落としちゃったっけ」
わざと落としたのだけれど。
それから二人で懐かしい思い出話に花を咲かせながら、ゆっくりとディナーを楽しんだ。
デザートが運ばれてきた頃、彼が真剣な表情になった。妙な緊張感に背筋が伸びる。
「詩織、今回のプロジェクトは絶対に良いものにしようと思う」
「うん、私もそう思ってる」
「そこで...先ずは僕の計画を聞いてもらえないかな?」
私は少し首を傾げた。
「企画を考えるのは、うちの会社の仕事なんですけど?」
緊張感をほぐすように、私は皮肉っぽく言う。
思惑通り、和也さんは笑った。
「とりあえず聞くだけ聞いて」
「分かったわ。聞くだけね」
私も笑いながら答える。すると彼はゆっくりと席を立ち、私の隣で突然ひざまずいた。
5
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

ウラナイ -URANAI-
吉宗
ミステリー
ある日占いの館に行った女子高生のミキは、老占い師から奇妙な警告を受け、その日から不安な日々を過ごす。そして、占いとリンクするかのようにミキに危機が迫り、彼女は最大の危機を迎える───。
予想外の結末が待ち受ける短編ミステリーを、どうぞお楽しみください。
(※この物語は『小説家になろう』『ノベルデイズ』にも投稿しております)

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる