放課後の秘密~放課後変身部の活動記録~

八星 こはく

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第3章 変身レッスン

第13話 勇気をくれる子

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「よし。今日は一日、脳内の天使ももと一緒に頑張ろ」

 顔を洗ってすぐ、鏡を見ながら頷く。今日は美術部の活動があって変身部へ行けないから、如月さんが教えてくれたことを実践したい。
 日常生活の中で、天使ももならどうするかを考える。

「……朝起きて顔を洗って、ももなら一番に何をする?」

 スマホで時間を確認した。家を出るまでの時間は限られている。
 限られた時間で、ももなら何をするだろう?
 決まっている。

「お洒落、一択だよね」

 常に可愛い自分でいるのが、天使もものモットー。朝ご飯よりも、授業の予習よりも、なにより優先するのは可愛くお洒落すること。
 だってももは、可愛い自分が大好きだから。

「……まあ私は、英語の小テストの勉強をするんだけど」

 天使ももならどうするか、は常に意識する。だけど、今の私は天野望結だから。





「疲れた……!」

 家に帰ってくる頃には、私は疲れきっていた。
 頭の中で考えるだけ、なんて思ってたけど、すごく大変だ。
 だって、今日一日、二人分頭を使ったってこどでしょ? 疲れるに決まっている。
 床に鞄を置いて、勢いよくベッドに倒れ込む。このまま眠っちゃいたいけれど、さすがにそういうわけにはいかない。
 夕飯の前に、宿題を終わらせておきたいし。

「……そういえば、ももならこういう時、どうするんだろう」

 いつも可愛い自分でいたい……と思うももだって、自室でごろごろする時もあるはず。
 朝は他の時間を削ってまでメイクをするけれど、帰ってきてからはどうだろう?
 とりあえず休む? それともお菓子を食べる? すぐにお風呂? 宿題をする?
 学校にいる時は、周りの目があるから、ももの行動は考えやすかった。ももは、周りからの目線をすごく気にするだろうから。

「家にいる時は……どんな子が、私は好きかな」

 目を閉じて、いろいろと想像してみる。
 さっきまで疲れて眠りたかったはずなのに、なんだか楽しくなってきた。

「家でいる時は、ちゃんとゆっくりできる子がいいな」

 家でも外でも、いつも張り詰めていたら疲れてしまう。だから、休める時はちゃんと休める子がいい。

「……それから」

 周りから可愛く思われたくて周りの目は気にするけれど、周りに合わせたり流されるんじゃなくて、自分のこだわりを貫ける子がいい。
 ちょっとくらい悪く言われたって、負けない強さがある子がいい。

「さすがに欲張りすぎるかも」

 ふふ、と笑って、私はようやくベッドから下りた。鞄に手を突っ込んで、スマホを取り出す。

「ももならきっと、仲良くなりたい子は、自分から誘うよね」

 今の私はももじゃない。だけど、理想の女の子に、勇気を分けてもらったっていいはず。

『今度、また一緒に出かけない? 次は、私も天使ももの姿で行くから』

 如月さんにそうメッセージを送ると、すぐに返事がきた。

『行く! 私、いつでも暇だから! 他に遊ぶ子もいないし!!』

 如月さん、相変わらず返信早いな。
 それにメッセージだと、やたらと勢いがあるし。
 以前如月さん……もとい、蓮さんと出かけた目的は、ウィッグやカラコンを買うことだった。
 だから、単純に遊びに行くのは初めてだ。

「……どうしよう。楽しみすぎる」

 天使ももの姿で外へ出るのも、休みの日に蓮さんと遊びに行くのも。

「そうと決まれば、それまでにもっと、天使ももとして振る舞えるようになっておかないと」





「うん、可愛い」

 鏡に映った私は、自分で言うのもなんだけど、めちゃくちゃ可愛い。いつもの放課後より時間があったから、メイクにもヘアセットにも時間をかけられた。
 それにいつもの制服じゃない。
 買ってもらったけれど、派手過ぎて普段は着ることができない可愛いワンピースを着ている。
 好きな格好をするのって、本当に楽しいな。

「そろそろ出ないと」

 待ち合わせ場所までは、それなりに時間がかかってしまう。せっかくの日に、遅刻なんてしたくない。
 お気に入りの鞄を持って、私は慌てて家を出た。
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