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第1章 王子様との出逢い
第5話 ときめき
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瞼が重いし、頭も痛い。気を抜いたら、今すぐ眠っちゃいそうだ。
でも、さすがに学校で寝るわけにはいかない。
そんなの……委員長らしくないから。
周りの目を気にしてばかりいるのは嫌だ。だけど、気になってしまう。
如月さんから話を聞いて、よけいに変身部のことが頭を離れなくなってしまった。そのせいで、昨日は一睡もできなかったのだ。
連日の睡眠不足のせいで、正直、身体は限界に近い。
「ねえ、委員長。今日、顔色悪くない?」
三時間目が終わると、隣の席の早瀬くんがそう聞いてきた。早瀬葵くん。爽やかなイケメンで、学年どころか学校で1番モテる男子。
同級生だけじゃなく先輩や後輩からも人気で、入学してから既に30人以上から告白されている、という噂もある。
「もしかして、寝不足?」
「……まあ」
「へえ。委員長でも、そんなこともあるんだ」
「たまには」
「勉強でもしてたんだろうけど、ほどほどにね」
早瀬くんは優しい。私を心配してくれてるんだろうなってことも分かる。でも、勝手に決めつけられた気がして、ちょっともやもやする。
「本当、委員長って真面目すぎ!」
「すごいよね」
「さすが委員長」
いつの間にか、他の女子たちも会話に入ってきた。たぶん、早瀬くんと少しでも話がしたいんだろう。
早瀬くんと隣の席になった時、さんざん羨ましいって騒がれたな。
恨まれなかったのはたぶん、私が真面目な委員長キャラなおかげ。みんな、私が恋愛なんてしないって思ってるから。
まあ、変に周りから恨まれずに済むのは助かる。
それに、寝不足な理由も勝手に決められちゃうけど、おかげで本当のことを言わずに済むし。
「……あ」
そうか。私、委員長でいるのが楽なんだ。
真面目な委員長キャラを続けているのは、たぶん、周りの目を気にしているから……だけじゃない。私自身が、委員長キャラでいるのが楽だからだ。
真面目な委員長でいれば、それ以外の面を見せずに済む。本当の自分を出せないのは苦しいけれど、同時に楽でもあるんだ。
「委員長? どうかした?」
早瀬くんが私の顔を覗き込んでくる。なんでも、と私はいつも通りの顔で首を横に振った。
「そういえば午後、英語の小テストがあるなって、ちょっと思っただけ」
「本当委員長って真面目すぎ」
はは、と早瀬くんが軽やかに笑う。周りの子も、早瀬くんに同調して笑った。
きっと私はまだ、真面目な委員長をやめられない。急に自分を変えるなんてできない。
だけど。
放課後だけなら?
少しずつ、心の中のもやもやがなくなっていくのを感じる。それと同時に、眠気もどこかへ飛んでいってしまった。
如月さんのこと、そして放課後変身部のことが頭から離れない理由。そんなの、1つしかなかったんだ。
私は、中庭で王子様に出逢った。
王子様の正体はクラスメートの女の子。しかも、いつもは王子様とは程遠い子だ。だけどきっと、私にとっては正真正銘の王子様。
王子様と出逢って、私の人生は変わり始めている。ううん、私自身が、変えたいと思えるようになったんだ。
◆
「失礼します!」
大声で言って、勢いよく部室のドアを開ける。中には予想通り、如月さん……いや、月城蓮さんと、雪さんがいた。
2人は、いきなり入ってきた私を見て目を丸くする。
「委員長、どうしたの?」
改めて見ても、やっぱり月城蓮さんはすごく格好いい。
それに、如月さんの大好きが詰まった姿だ。如月さんに話を聞いたから、前以上に月城蓮さんが輝いて見える。
如月さんは、ずっと変わりたいと思っていた。
そして実際に、好きな自分に変身する道を選んだ。
如月さんって、すごい。
「今日は、お願いしたいことがあって」
「お願いしたいこと?」
すう、と大きく息を吸い込む。緊張と期待で、鼓動がどんどん速くなっていく。
人生でこんなに緊張したのは初めてだ。
でも、この緊張は嫌いじゃない。
「私を、放課後変身部に入れてください!」
ここで……如月さんと一緒に、私も変わりたい。今までの私とは違う、別の私になってみたい。
私も、大好きを纏って生きてみたい。
「よろしくお願いします!」
深く頭を下げる。少しすると、拍手の音が聞こえた。ゆっくり顔を上げると、2人が笑顔で拍手をしてくれている。
蓮さんは、ちょっと泣きそうな笑顔。そして雪さんは、安心したような笑顔。
「ようこそ、放課後変身部へ」
そう言って笑ったのは、月城蓮さんだ。如月さんじゃない。声も口調も、いつもの如月さんとはかけ離れている。
私に正体を知られて慌てていた時の蓮さんとは、雰囲気が全く違う。きっとこれが、本来の月城蓮さんなのだろう。
「安心した。バレた時はどうなるかと思ったけど、部員になるなら歓迎するわ」
蓮さんの後ろで、雪さんが微笑む。
王子様みたいな月城蓮さんと、黒髪美少女の佐倉雪さん。
私も今日から、この2人の仲間なんだ。私もここで、いつもの私とは違う私に変身できるんだ。
どうしよう。そんなの、嬉しすぎる。
ときめきが止まらない。どんな顔をすればいいのかも分からなくなって、私はちょっとだけ泣いてしまった。
でも、さすがに学校で寝るわけにはいかない。
そんなの……委員長らしくないから。
周りの目を気にしてばかりいるのは嫌だ。だけど、気になってしまう。
如月さんから話を聞いて、よけいに変身部のことが頭を離れなくなってしまった。そのせいで、昨日は一睡もできなかったのだ。
連日の睡眠不足のせいで、正直、身体は限界に近い。
「ねえ、委員長。今日、顔色悪くない?」
三時間目が終わると、隣の席の早瀬くんがそう聞いてきた。早瀬葵くん。爽やかなイケメンで、学年どころか学校で1番モテる男子。
同級生だけじゃなく先輩や後輩からも人気で、入学してから既に30人以上から告白されている、という噂もある。
「もしかして、寝不足?」
「……まあ」
「へえ。委員長でも、そんなこともあるんだ」
「たまには」
「勉強でもしてたんだろうけど、ほどほどにね」
早瀬くんは優しい。私を心配してくれてるんだろうなってことも分かる。でも、勝手に決めつけられた気がして、ちょっともやもやする。
「本当、委員長って真面目すぎ!」
「すごいよね」
「さすが委員長」
いつの間にか、他の女子たちも会話に入ってきた。たぶん、早瀬くんと少しでも話がしたいんだろう。
早瀬くんと隣の席になった時、さんざん羨ましいって騒がれたな。
恨まれなかったのはたぶん、私が真面目な委員長キャラなおかげ。みんな、私が恋愛なんてしないって思ってるから。
まあ、変に周りから恨まれずに済むのは助かる。
それに、寝不足な理由も勝手に決められちゃうけど、おかげで本当のことを言わずに済むし。
「……あ」
そうか。私、委員長でいるのが楽なんだ。
真面目な委員長キャラを続けているのは、たぶん、周りの目を気にしているから……だけじゃない。私自身が、委員長キャラでいるのが楽だからだ。
真面目な委員長でいれば、それ以外の面を見せずに済む。本当の自分を出せないのは苦しいけれど、同時に楽でもあるんだ。
「委員長? どうかした?」
早瀬くんが私の顔を覗き込んでくる。なんでも、と私はいつも通りの顔で首を横に振った。
「そういえば午後、英語の小テストがあるなって、ちょっと思っただけ」
「本当委員長って真面目すぎ」
はは、と早瀬くんが軽やかに笑う。周りの子も、早瀬くんに同調して笑った。
きっと私はまだ、真面目な委員長をやめられない。急に自分を変えるなんてできない。
だけど。
放課後だけなら?
少しずつ、心の中のもやもやがなくなっていくのを感じる。それと同時に、眠気もどこかへ飛んでいってしまった。
如月さんのこと、そして放課後変身部のことが頭から離れない理由。そんなの、1つしかなかったんだ。
私は、中庭で王子様に出逢った。
王子様の正体はクラスメートの女の子。しかも、いつもは王子様とは程遠い子だ。だけどきっと、私にとっては正真正銘の王子様。
王子様と出逢って、私の人生は変わり始めている。ううん、私自身が、変えたいと思えるようになったんだ。
◆
「失礼します!」
大声で言って、勢いよく部室のドアを開ける。中には予想通り、如月さん……いや、月城蓮さんと、雪さんがいた。
2人は、いきなり入ってきた私を見て目を丸くする。
「委員長、どうしたの?」
改めて見ても、やっぱり月城蓮さんはすごく格好いい。
それに、如月さんの大好きが詰まった姿だ。如月さんに話を聞いたから、前以上に月城蓮さんが輝いて見える。
如月さんは、ずっと変わりたいと思っていた。
そして実際に、好きな自分に変身する道を選んだ。
如月さんって、すごい。
「今日は、お願いしたいことがあって」
「お願いしたいこと?」
すう、と大きく息を吸い込む。緊張と期待で、鼓動がどんどん速くなっていく。
人生でこんなに緊張したのは初めてだ。
でも、この緊張は嫌いじゃない。
「私を、放課後変身部に入れてください!」
ここで……如月さんと一緒に、私も変わりたい。今までの私とは違う、別の私になってみたい。
私も、大好きを纏って生きてみたい。
「よろしくお願いします!」
深く頭を下げる。少しすると、拍手の音が聞こえた。ゆっくり顔を上げると、2人が笑顔で拍手をしてくれている。
蓮さんは、ちょっと泣きそうな笑顔。そして雪さんは、安心したような笑顔。
「ようこそ、放課後変身部へ」
そう言って笑ったのは、月城蓮さんだ。如月さんじゃない。声も口調も、いつもの如月さんとはかけ離れている。
私に正体を知られて慌てていた時の蓮さんとは、雰囲気が全く違う。きっとこれが、本来の月城蓮さんなのだろう。
「安心した。バレた時はどうなるかと思ったけど、部員になるなら歓迎するわ」
蓮さんの後ろで、雪さんが微笑む。
王子様みたいな月城蓮さんと、黒髪美少女の佐倉雪さん。
私も今日から、この2人の仲間なんだ。私もここで、いつもの私とは違う私に変身できるんだ。
どうしよう。そんなの、嬉しすぎる。
ときめきが止まらない。どんな顔をすればいいのかも分からなくなって、私はちょっとだけ泣いてしまった。
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