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プロローグ
第1話 放課後の出会い
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「……かなり遅くなっちゃったな」
靴箱を出て空を見上げる。綺麗な夕焼けだけれど、疲れている今は空の綺麗さに喜ぶ元気はない。
今日は朝から、あんまり体調がよくなかった。それなのに私は、先生に頼まれごとをして、この時間まで学校に残っていたのだ。
学級委員長だからって、先生は私をこき使いすぎだと思う。まあそれも、私が断れないからなんだろうけど……。
「はあ」
私は天野望結、13歳。私立緑光学院中等部に通う、真面目な性格の中学二年生。
真面目な、なんて自分で言っちゃうのはどうかと思うけど、小さい頃からずっと言われ続けてきた言葉だ。
今年も当たり前のように学級委員長になってしまった。別にやりたいわけじゃなかったけど、天野さんしかいないよ! なんてみんなに言われたら断れなくて。
足早に校門へ向かう途中、不意に中庭の花が目に入った。
ガーデニングが趣味な先生の影響で、中庭には季節ごとにいろんな花が咲いている。興味がない子も多いけど、私は違う。
可愛いもの、綺麗なものが大好きな私は、花も好きだ。詳しいってわけじゃないけど、見ていると癒される。
「……少しだけ、寄って帰ろ」
中庭の奥にはベンチが設置されている。近くには自動販売機もあって、ちょっとした休憩スペースだ。
この時間にはもう誰もいないだろうから、ここで休憩してから帰るのも悪くない。
「あれ?」
誰もいないはず。そう思っていたのに、誰かがベンチに座っていた。
「……え?」
そこにいた人物を見て、私は固まってしまった。
銀色の髪に、翡翠色の瞳。そして、アイドルみたいに格好いい顔。まるで、物語の世界から飛び出てきた王子様みたい。
制服を着ているけれど、初めて見る人だ。それに、うちの学校にこんな人がいるなんて、聞いたこともない。
転校生とか? でも、だったらなんでこんな時間にこんなところにいるんだろう。
気になって、目が離せなくなる。しばらく見つめていると、王子様と目が合ってしまった。
「あ……っ、え、あ……!」
目が合った瞬間、王子様は挙動不審になった。視線をさまよわせ、声にならない声をもらしながら、両手を忙しなく動かしている。
「あの、大丈夫ですか?」
心配になってきて、王子様に声をかけた。私は昔から、困っている人を放っておけないタイプなのだ。
「あ、えっと、その……!」
王子様はなかなか意味のある言葉を発してくれない。どうしようかと悩みながら、私は王子様に近づいた。
あれ?
なんか……この顔、どこかで見たことあるような。
銀髪や翡翠色の瞳ではなく、顔の造作そのものをじっと観察する。すると、頭の中に一人の人物が思い浮かんだ。
「もしかして、如月さん?」
私がそう言ったとたんに、王子様の顔が真っ青になった。その反応で、私は自分の勘が当たっていたことを確信する。
如月姫乃。不登校気味なクラスメートだ。教室にはこないけれど、たまに保健室登校をしている。先生に頼まれて、何度か様子を見に行ったことがある。
そして名前から分かる通り、如月さんは女の子……のはずだ。
「い、委員長、ちょっときて!」
間違いなく如月さんの声だ。そして私は、如月さんの大声を初めて聞いた。
靴箱を出て空を見上げる。綺麗な夕焼けだけれど、疲れている今は空の綺麗さに喜ぶ元気はない。
今日は朝から、あんまり体調がよくなかった。それなのに私は、先生に頼まれごとをして、この時間まで学校に残っていたのだ。
学級委員長だからって、先生は私をこき使いすぎだと思う。まあそれも、私が断れないからなんだろうけど……。
「はあ」
私は天野望結、13歳。私立緑光学院中等部に通う、真面目な性格の中学二年生。
真面目な、なんて自分で言っちゃうのはどうかと思うけど、小さい頃からずっと言われ続けてきた言葉だ。
今年も当たり前のように学級委員長になってしまった。別にやりたいわけじゃなかったけど、天野さんしかいないよ! なんてみんなに言われたら断れなくて。
足早に校門へ向かう途中、不意に中庭の花が目に入った。
ガーデニングが趣味な先生の影響で、中庭には季節ごとにいろんな花が咲いている。興味がない子も多いけど、私は違う。
可愛いもの、綺麗なものが大好きな私は、花も好きだ。詳しいってわけじゃないけど、見ていると癒される。
「……少しだけ、寄って帰ろ」
中庭の奥にはベンチが設置されている。近くには自動販売機もあって、ちょっとした休憩スペースだ。
この時間にはもう誰もいないだろうから、ここで休憩してから帰るのも悪くない。
「あれ?」
誰もいないはず。そう思っていたのに、誰かがベンチに座っていた。
「……え?」
そこにいた人物を見て、私は固まってしまった。
銀色の髪に、翡翠色の瞳。そして、アイドルみたいに格好いい顔。まるで、物語の世界から飛び出てきた王子様みたい。
制服を着ているけれど、初めて見る人だ。それに、うちの学校にこんな人がいるなんて、聞いたこともない。
転校生とか? でも、だったらなんでこんな時間にこんなところにいるんだろう。
気になって、目が離せなくなる。しばらく見つめていると、王子様と目が合ってしまった。
「あ……っ、え、あ……!」
目が合った瞬間、王子様は挙動不審になった。視線をさまよわせ、声にならない声をもらしながら、両手を忙しなく動かしている。
「あの、大丈夫ですか?」
心配になってきて、王子様に声をかけた。私は昔から、困っている人を放っておけないタイプなのだ。
「あ、えっと、その……!」
王子様はなかなか意味のある言葉を発してくれない。どうしようかと悩みながら、私は王子様に近づいた。
あれ?
なんか……この顔、どこかで見たことあるような。
銀髪や翡翠色の瞳ではなく、顔の造作そのものをじっと観察する。すると、頭の中に一人の人物が思い浮かんだ。
「もしかして、如月さん?」
私がそう言ったとたんに、王子様の顔が真っ青になった。その反応で、私は自分の勘が当たっていたことを確信する。
如月姫乃。不登校気味なクラスメートだ。教室にはこないけれど、たまに保健室登校をしている。先生に頼まれて、何度か様子を見に行ったことがある。
そして名前から分かる通り、如月さんは女の子……のはずだ。
「い、委員長、ちょっときて!」
間違いなく如月さんの声だ。そして私は、如月さんの大声を初めて聞いた。
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