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第57話 メイド、お嬢様扱いされる!?
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「アリスお嬢様、行きますよ」
老婦人が私の腕を軽く引っ張る。
戸惑っていると、背後に控えていた女性たちが私の背中を押した。
「あの、待ってください、これは……?」
いきなりのことに眠気も吹っ飛んだ。慌ててランスロット様へ視線を向けると、ランスロット様に笑顔で手を振られる。
「安心しろ、アリス。エヴァンズ男爵に頼んで、信用できる方を紹介してもらった」
「信用できる方?」
「貴族の令嬢たちが、彼女に美しくしてもらいたくて、予約待ちをしているらしいからな」
ランスロット様が言い終えると、老婦人は誇らしげに胸を張った。
「わたくし、グレースと申します。以後、お見知りおきを」
「は、はい」
なんだかこの人、ものすごくオーラがあるわね。
「アリスお嬢様」
グレースさんが近づいてきたと思ったら、背中を軽く叩かれた。
「背筋が曲がっています。お気をつけください。どれほど美しいドレスを着ても、姿勢が悪ければ魅力的にはなりません」
「分かりました……」
慌てて背筋をピンと伸ばす。
私なりに精一杯やったのに、返ってきたのは、まあいいでしょう、という言葉だった。
「ではサリヴァン伯爵様、失礼いたします」
グレースさんがランスロット様に深々と一礼する。
見たことがないくらい、優雅な礼だった。
◆
グレースさんに連れられて、私は宮殿内の一室にやってきた。
部屋の中には、様々なドレスや装飾品が並んでいる。
「あの、ここは?」
「サリヴァン伯爵様が手配してくださった部屋です。わたくしたちは宮殿や屋敷に出張し、令嬢の身支度を手伝うことを生業としているのです」
じゃあ、ここにある服やアクセサリーは、わざわざ全部持ってきたってこと!?
とんでもない量である。しかも、どれも高そうだ。
これ、輸送費用だけでかなりの金額がかかるんじゃないかしら。
グレースさんたちを呼ぶのに、いったいどれくらいかかったのだろう。
想像するだけで恐ろしくなったため、私は考えるのをやめた。
「まずはお嬢様、お顔を洗いましょう」
「え?」
「眠気が、完全にとれていないようですので」
グレースさんが目で合図をすると、後ろに控えていた女性のうち一人が、どこかから桶を持ってきた。
その中には、たっぷりと水が入っている。
「どうぞ、顔を洗ってください」
そう言われて、断れるはずがない。
水に触れてみると、かなり冷たかった。
少量の水を手ですくい、顔にかける。すると、グレースさんが首を横に振った。
「もっと、きちんと洗わなくてはいけません」
グレースさんは私の顔に容赦なく水をかけ、ふかふかのタオルで水を拭きとる。
その後、肌触りのいい液体を顔に塗られた。
「花の蜜から作った化粧水です。美白、美肌効果がありますので」
次に、グレースさんは私を白い壁の前に立たせた。
「では、本日お召しいただくドレスを決めていきます。
アリスお嬢様は綺麗な青い瞳をしていますので、青のドレスも似合いますね。お肌の色との相性もいいでしょう」
そう言いながら、グレースさんは透き通った水色のドレスを渡してくれた。
「一度着てみましょうか。何着か試して、一番よかったものにしましょう」
「分かりました」
とりあえず、着ていた寝巻を脱ぐ。
寝起きの状態で連れてこられたから、まだ寝間着のままだったのだ。
ドレスを受け取ろうと手を伸ばすと、なぜか遠ざけられてしまった。
「アリスお嬢様」
「なんですか?」
「ドレスを着る前にまず、コルセットですよ」
コルセット? コルセットってあの、腰に巻くやつよね?
綺麗なくびれを作るために、かなりぎゅうぎゅうにお腹をしめるやつ。
「アリスお嬢様は元々細い方ですが、コルセットをつけることでより美しい体型になれます。
少々痛いかもしれませんが、我慢してください」
グレースさんは部屋の奥からコルセットを持ってくると、私の腰に巻いてくれた。
そして、限界まで背中の紐を引っ張る。
「い、痛いです、グレースさん!」
「いいえ、まだまだです」
何度も痛いと騒いだが、グレースさんは全く聞いてくれなかった。
◆
「とってもお綺麗ですよ、アリスお嬢様!」
グレースさんがそう言ってくれた時、私は既に疲れきっていた。
朝から、もう何時間経ったのだろう。
お腹が空いているはずなのに、コルセットのせいでよく分からない。
「あとは、淑女らしい振る舞いをしていただければ完璧です。くれぐれも気をつけてくださいね」
そう言われても、淑女としての振る舞いなんてよく分からない。
だが、正直に答えるわけにもいかず、私は曖昧に頷いた。
それにしても、パーティーの準備がこんなに大変だなんて思わなかったわ。
貴族の令嬢たちって、日常的にこんな思いをしてるのかしら?
鏡に映った自分を見つめた。
白と水色を基調としたドレスは華やかで美しい。袖口や裾には金糸で編まれたレースがつけられていて、上品な印象もある。
全体的にふわふわとしたデザインだが、腰をコルセットでしめつけているおかげで華奢に見える。
髪はランスロット様からの指示があったのか、いつも通りのツインテールだ。
しかし、きっちりと巻かれ、巻きがとれないようにしっかりと固められている。
それに加え、装飾品もかなり豪華だ。
最も派手なのは、サファイアの埋め込まれたティアラである。
貴族の令嬢どころか、まるでどこかの国のお姫様みたいだわ。
自分の姿にうっとりしていると、控えめに部屋がノックされた。
扉近くに控えていた女性が、少しだけ扉を開いて確認する。
「アリスお嬢様、サリヴァン伯爵様がいらっしゃいましたよ」
老婦人が私の腕を軽く引っ張る。
戸惑っていると、背後に控えていた女性たちが私の背中を押した。
「あの、待ってください、これは……?」
いきなりのことに眠気も吹っ飛んだ。慌ててランスロット様へ視線を向けると、ランスロット様に笑顔で手を振られる。
「安心しろ、アリス。エヴァンズ男爵に頼んで、信用できる方を紹介してもらった」
「信用できる方?」
「貴族の令嬢たちが、彼女に美しくしてもらいたくて、予約待ちをしているらしいからな」
ランスロット様が言い終えると、老婦人は誇らしげに胸を張った。
「わたくし、グレースと申します。以後、お見知りおきを」
「は、はい」
なんだかこの人、ものすごくオーラがあるわね。
「アリスお嬢様」
グレースさんが近づいてきたと思ったら、背中を軽く叩かれた。
「背筋が曲がっています。お気をつけください。どれほど美しいドレスを着ても、姿勢が悪ければ魅力的にはなりません」
「分かりました……」
慌てて背筋をピンと伸ばす。
私なりに精一杯やったのに、返ってきたのは、まあいいでしょう、という言葉だった。
「ではサリヴァン伯爵様、失礼いたします」
グレースさんがランスロット様に深々と一礼する。
見たことがないくらい、優雅な礼だった。
◆
グレースさんに連れられて、私は宮殿内の一室にやってきた。
部屋の中には、様々なドレスや装飾品が並んでいる。
「あの、ここは?」
「サリヴァン伯爵様が手配してくださった部屋です。わたくしたちは宮殿や屋敷に出張し、令嬢の身支度を手伝うことを生業としているのです」
じゃあ、ここにある服やアクセサリーは、わざわざ全部持ってきたってこと!?
とんでもない量である。しかも、どれも高そうだ。
これ、輸送費用だけでかなりの金額がかかるんじゃないかしら。
グレースさんたちを呼ぶのに、いったいどれくらいかかったのだろう。
想像するだけで恐ろしくなったため、私は考えるのをやめた。
「まずはお嬢様、お顔を洗いましょう」
「え?」
「眠気が、完全にとれていないようですので」
グレースさんが目で合図をすると、後ろに控えていた女性のうち一人が、どこかから桶を持ってきた。
その中には、たっぷりと水が入っている。
「どうぞ、顔を洗ってください」
そう言われて、断れるはずがない。
水に触れてみると、かなり冷たかった。
少量の水を手ですくい、顔にかける。すると、グレースさんが首を横に振った。
「もっと、きちんと洗わなくてはいけません」
グレースさんは私の顔に容赦なく水をかけ、ふかふかのタオルで水を拭きとる。
その後、肌触りのいい液体を顔に塗られた。
「花の蜜から作った化粧水です。美白、美肌効果がありますので」
次に、グレースさんは私を白い壁の前に立たせた。
「では、本日お召しいただくドレスを決めていきます。
アリスお嬢様は綺麗な青い瞳をしていますので、青のドレスも似合いますね。お肌の色との相性もいいでしょう」
そう言いながら、グレースさんは透き通った水色のドレスを渡してくれた。
「一度着てみましょうか。何着か試して、一番よかったものにしましょう」
「分かりました」
とりあえず、着ていた寝巻を脱ぐ。
寝起きの状態で連れてこられたから、まだ寝間着のままだったのだ。
ドレスを受け取ろうと手を伸ばすと、なぜか遠ざけられてしまった。
「アリスお嬢様」
「なんですか?」
「ドレスを着る前にまず、コルセットですよ」
コルセット? コルセットってあの、腰に巻くやつよね?
綺麗なくびれを作るために、かなりぎゅうぎゅうにお腹をしめるやつ。
「アリスお嬢様は元々細い方ですが、コルセットをつけることでより美しい体型になれます。
少々痛いかもしれませんが、我慢してください」
グレースさんは部屋の奥からコルセットを持ってくると、私の腰に巻いてくれた。
そして、限界まで背中の紐を引っ張る。
「い、痛いです、グレースさん!」
「いいえ、まだまだです」
何度も痛いと騒いだが、グレースさんは全く聞いてくれなかった。
◆
「とってもお綺麗ですよ、アリスお嬢様!」
グレースさんがそう言ってくれた時、私は既に疲れきっていた。
朝から、もう何時間経ったのだろう。
お腹が空いているはずなのに、コルセットのせいでよく分からない。
「あとは、淑女らしい振る舞いをしていただければ完璧です。くれぐれも気をつけてくださいね」
そう言われても、淑女としての振る舞いなんてよく分からない。
だが、正直に答えるわけにもいかず、私は曖昧に頷いた。
それにしても、パーティーの準備がこんなに大変だなんて思わなかったわ。
貴族の令嬢たちって、日常的にこんな思いをしてるのかしら?
鏡に映った自分を見つめた。
白と水色を基調としたドレスは華やかで美しい。袖口や裾には金糸で編まれたレースがつけられていて、上品な印象もある。
全体的にふわふわとしたデザインだが、腰をコルセットでしめつけているおかげで華奢に見える。
髪はランスロット様からの指示があったのか、いつも通りのツインテールだ。
しかし、きっちりと巻かれ、巻きがとれないようにしっかりと固められている。
それに加え、装飾品もかなり豪華だ。
最も派手なのは、サファイアの埋め込まれたティアラである。
貴族の令嬢どころか、まるでどこかの国のお姫様みたいだわ。
自分の姿にうっとりしていると、控えめに部屋がノックされた。
扉近くに控えていた女性が、少しだけ扉を開いて確認する。
「アリスお嬢様、サリヴァン伯爵様がいらっしゃいましたよ」
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