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第3話 メイド、ご主人様と初対面
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屋敷の中も、外観と変わらず地味だ。
掃除は行き届いていて、床や壁も全部ぴかぴかと輝いてはいるけれど。
「坊ちゃんは居間でお待ちです」
「はい」
ヴァレンティンさんに従って、廊下を歩く。といっても、それほど長い廊下でもない。
大きい扉の前で、ヴァレンティンさんは立ち止まった。
「坊ちゃん」
部屋を数回ノックし、ゆっくりと扉を開く。
中に伯爵様がいるのだと思うと、緊張で身体が固まってしまう。
どんな人なんだろう?
ヴァレンティンさんの後ろから、そっと部屋の中を覗き込む。
部屋の中央にはテーブルと椅子が設置されていて、扉が見える場所に一人の青年が座っていた。
あの人が、伯爵様……!
長い銀髪を後ろで一つに束ね、灰色の瞳を気怠そうにこちらへ向けている。
座っているから正確な身長は分からないが、足がかなり長い。
とんでもないイケメンじゃない……!
年齢は20代半ばくらいだろうか。格好いいのに、あまり生気が感じられないところもいい。
私の好みのど真ん中の見た目だ。
不安だった気持ちが一気になくなって、やる気が満ち溢れてくる。
絶対ここで、このご主人様のメイドとして働きたい。
「坊ちゃんと呼ぶのはやめろといつも言っているだろう、ヴァレンティン」
「私にとっては、坊ちゃんはいつまで経っても坊ちゃんですからな」
呆れたように伯爵様は溜息を吐いたが、その眼差しは柔らかい。
怖いって有名な方だけど、少なくともヴァレンティンさんにはそうじゃないのね。
まあ、小さい頃からの付き合いみたいだし。
「坊ちゃん、こちらが新しいメイドのアリスです」
ヴァレンティンさんが後ろを振り向いた。私は大慌ててお辞儀をする。
大丈夫。私、第一印象には自信があるの。
新規のお客さんだっていつも、とびきりの笑顔で釣ってたんだから。
「よろしくお願いします、ご主人様!」
口角は思いっきり上げて、目元がくしゃっとするくらい笑う。
声は大きめで可愛らしく。
うん、相変わらず完璧な挨拶ができた。
……なのに。
「ああ」
そう言って、軽く頷いただけ。ちら、と一瞬見ただけで、私と目を合わせようともしない。
なにこの態度? 私、絶対めちゃくちゃ可愛かったのに!
「ヴァレンティン、いちいち新しいメイドを紹介しなくてもいい。どうせ、すぐやめるんだからな」
冷ややかに言って、伯爵様は溜息を吐いた。
かなりむかつく発言だけれど、低くて色気のある声は好みで悔しい。
「そんなことを言ってはいけませんよ、坊ちゃん」
ヴァレンティンさんは私の方を見て、軽く頭を下げてくれた。
しかし肝心の伯爵様は、相変わらずむすっとした顔をしている。
「アリスさん、こちらが坊ちゃん……ランスロット・フォン・サリヴァン伯爵様です」
「ランスロット様……」
「ちょっと人見知りですが、心の優しい子なんですよ」
ちょっと人見知り?
人見知りっていうか、偉そうで態度が悪いだけのように見えるんだけど。
「おい、ヴァレンティン」
「なんでしょう、坊ちゃん」
満面の笑みを浮かべたヴァレンティンさんを見て、ランスロット様はまた溜息を吐いた。
「おい、お前」
「……はい?」
お前ってなに? お前って。
彼は伯爵で、私はメイド。
横柄な態度をとられたり、上から目線で物を言われるのは当たり前なのかもしれない。
だけど、嫌なものは嫌だし、むかつくものはむかつく。
「ヴァレンティンに迷惑をかけるようなことはするなよ」
「坊ちゃん、私のことをそんなに気にしてくださって……!」
感動したような顔でヴァレンティンさんはランスロット様を見つめている。
ああもう、何なの!
「それと、嫌ならいつでも出て行っていいんだからな」
今までのメイドがここへきて、すぐに帰った気持ちも分かるわ。
こんな言い方をする主人のもとで働くなんて、普通に嫌だもん。
今までの子たちは、ランスロット様にこう言われてどんな態度をとったのだろう。
怯えて震えた? それとも、怒りで不機嫌になった?
でもね、私は、今までの子とは違う。
だって私は、超絶可愛いメイドだから。
「ご主人様のお役に立てるよう、精一杯頑張りますっ!」
両手をぎゅっと握って、可愛い声で言う。
私の反応が意外だったのか、ランスロット様は一瞬目を丸くした。
私は、どんなお客さんだって夢中にさせてきた。私に落とせないお客さんなんていなかった。
ランスロット様だってどうせ、すぐに私に夢中になるんだから!
掃除は行き届いていて、床や壁も全部ぴかぴかと輝いてはいるけれど。
「坊ちゃんは居間でお待ちです」
「はい」
ヴァレンティンさんに従って、廊下を歩く。といっても、それほど長い廊下でもない。
大きい扉の前で、ヴァレンティンさんは立ち止まった。
「坊ちゃん」
部屋を数回ノックし、ゆっくりと扉を開く。
中に伯爵様がいるのだと思うと、緊張で身体が固まってしまう。
どんな人なんだろう?
ヴァレンティンさんの後ろから、そっと部屋の中を覗き込む。
部屋の中央にはテーブルと椅子が設置されていて、扉が見える場所に一人の青年が座っていた。
あの人が、伯爵様……!
長い銀髪を後ろで一つに束ね、灰色の瞳を気怠そうにこちらへ向けている。
座っているから正確な身長は分からないが、足がかなり長い。
とんでもないイケメンじゃない……!
年齢は20代半ばくらいだろうか。格好いいのに、あまり生気が感じられないところもいい。
私の好みのど真ん中の見た目だ。
不安だった気持ちが一気になくなって、やる気が満ち溢れてくる。
絶対ここで、このご主人様のメイドとして働きたい。
「坊ちゃんと呼ぶのはやめろといつも言っているだろう、ヴァレンティン」
「私にとっては、坊ちゃんはいつまで経っても坊ちゃんですからな」
呆れたように伯爵様は溜息を吐いたが、その眼差しは柔らかい。
怖いって有名な方だけど、少なくともヴァレンティンさんにはそうじゃないのね。
まあ、小さい頃からの付き合いみたいだし。
「坊ちゃん、こちらが新しいメイドのアリスです」
ヴァレンティンさんが後ろを振り向いた。私は大慌ててお辞儀をする。
大丈夫。私、第一印象には自信があるの。
新規のお客さんだっていつも、とびきりの笑顔で釣ってたんだから。
「よろしくお願いします、ご主人様!」
口角は思いっきり上げて、目元がくしゃっとするくらい笑う。
声は大きめで可愛らしく。
うん、相変わらず完璧な挨拶ができた。
……なのに。
「ああ」
そう言って、軽く頷いただけ。ちら、と一瞬見ただけで、私と目を合わせようともしない。
なにこの態度? 私、絶対めちゃくちゃ可愛かったのに!
「ヴァレンティン、いちいち新しいメイドを紹介しなくてもいい。どうせ、すぐやめるんだからな」
冷ややかに言って、伯爵様は溜息を吐いた。
かなりむかつく発言だけれど、低くて色気のある声は好みで悔しい。
「そんなことを言ってはいけませんよ、坊ちゃん」
ヴァレンティンさんは私の方を見て、軽く頭を下げてくれた。
しかし肝心の伯爵様は、相変わらずむすっとした顔をしている。
「アリスさん、こちらが坊ちゃん……ランスロット・フォン・サリヴァン伯爵様です」
「ランスロット様……」
「ちょっと人見知りですが、心の優しい子なんですよ」
ちょっと人見知り?
人見知りっていうか、偉そうで態度が悪いだけのように見えるんだけど。
「おい、ヴァレンティン」
「なんでしょう、坊ちゃん」
満面の笑みを浮かべたヴァレンティンさんを見て、ランスロット様はまた溜息を吐いた。
「おい、お前」
「……はい?」
お前ってなに? お前って。
彼は伯爵で、私はメイド。
横柄な態度をとられたり、上から目線で物を言われるのは当たり前なのかもしれない。
だけど、嫌なものは嫌だし、むかつくものはむかつく。
「ヴァレンティンに迷惑をかけるようなことはするなよ」
「坊ちゃん、私のことをそんなに気にしてくださって……!」
感動したような顔でヴァレンティンさんはランスロット様を見つめている。
ああもう、何なの!
「それと、嫌ならいつでも出て行っていいんだからな」
今までのメイドがここへきて、すぐに帰った気持ちも分かるわ。
こんな言い方をする主人のもとで働くなんて、普通に嫌だもん。
今までの子たちは、ランスロット様にこう言われてどんな態度をとったのだろう。
怯えて震えた? それとも、怒りで不機嫌になった?
でもね、私は、今までの子とは違う。
だって私は、超絶可愛いメイドだから。
「ご主人様のお役に立てるよう、精一杯頑張りますっ!」
両手をぎゅっと握って、可愛い声で言う。
私の反応が意外だったのか、ランスロット様は一瞬目を丸くした。
私は、どんなお客さんだって夢中にさせてきた。私に落とせないお客さんなんていなかった。
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