27 / 103
Episode 4 【ミラーリング】
#27《遺跡の中を捜索するお話》
しおりを挟む
あれから三時間ほど経過する。
探し人は見つからぬまま歩き回るばかりであった。
その間、少女は一度も休憩を取っていない。
ルナが度々休憩を提案しても聞く耳を持ってくれず、出会ったばかりの頃と変わらず疲れが出ている様子もないのだ。
――どうしよう。ここまで融通の効かない子だとは思わなかった……。
焦燥感に苛まれながらも少女について行く。
あの後、入った大きな廃墟では収穫はなく、今は隣りの廃墟の二階へ向かおうとしている。
先程の廃墟と比べて更に広く、外観から推測して四階建てであろう大きな屋敷だ。
一階の奥には庭であったであろう空間が広がっている。
その中心には辛うじて判別できる滑り台とシーソーがあった。
――そういやぁボク達ってこういう遊具で遊んだ事も遊ぶ機会もないよなぁ。
ルナは遠目で眺めながら考えていた。
人間が築いた文明は凄い。
こうして自分達がアトリエで暮らせるのも、知識を得られるのも、人が歩んだ歴史があってこそだ。
――ボクがロボットとして創られたのも人のおかげだ。だけど……。
ルナは昔を思い出し、歯を食いしばった。
人とは極力関わりたくないと、彼女は人を拒絶する。
瑠璃と出会った森の奥に遺体らしきものを視つけたあの時、見て見ぬふりを選んだのは関わりたくないという個人的な理由が大きかった。
師匠からも『そういうものに手を出すという事は、人と関わり繋がる事を選ぶという事だ』と、他の生物同様慎重に考えて行動しろと教わっていたのも勿論あったが、『関わりたくない』、その気持ちが一番に上回っている。
もし少女が人間だったら、きっとその場から去っていただろう。
ルナは考えていくうちにだんだんと苛立ってきたので、頭を振りそこで思考を停止させた。
石造りの階段を上り二階へ到着する。
所々床が抜け落ちており、更に天井も崩れ落ちているので足場が少し悪い。
部屋の中は最初に訪れた廃墟と似たような構造になっていた。
「この建物、あたしが目覚めた時に居た場所なんだ。一階に居たの。」
少女はボソッとルナに話してくれる。
「この階にある鏡であたしはこの姿を知ったんだ。」
そう言って少女は黙り込んだまま鏡のある部屋へと案内してくれる。
部屋に入ると目の前にはキングサイズのベッドが置かれており、『いつもここで寝泊まりしてるんだ』と教えてくれた。
どうやら長時間付き添ってくれているルナに意識が向くようになったようだ。
少女が見たという鏡は全身が映る長細く壁に掛けるタイプの大きな物で、床に落ちた衝撃で割れたであろう鏡の一部分が散らばっている。
一部割れてはいるが全身を確認する分には問題なかった。
少女は鏡の前で立ち止まり、鏡に映る自身を見つめている。
「ねぇ、ここに長期間滞在していて平気そうに見えるけど、身体の調子は大丈夫なの?」
「え? ベッドで寝てるから身体は痛くないし平気だよ。」
「それもあるけど、そうじゃなくて……。うーんと、ここ、心身に良くない瘴気が漂ってるからさ。」
「あなた、そういう類いのモノが視えるの?」
「……うん、まぁそんな感じ。」
この時、少女は初めてルナの顔をしっかりと見た。
ようやっと向き合ってくれるようになったと、ルナは一安心する。
少女は自身の身体をじっくり観察し考え込んだ後、口を開き質問に答えた。
「特に不調はないけれど……よくよく考えれば、ずっと同じ所をぐるぐる巡っているわね。今まで気付かなかったけど、こんなに時間が経っているんだから藍凛は遺跡から出ている可能性も十分あるのよね。」
「……うん。もしかするとキミは瘴気にやられているから気付けなかった、って考えてもいいのかもしれない。まだ確信はないけど、実際ここの瘴気は尋常じゃないから。ボクでも魔法を使ってなかったら今頃は……。」
「魔法……。」
「ねぇ、一度キミを浄化させてもらってもいい? 今のキミ、瘴気を身に纏っている状態なんだよ。……もしかしたら浄化する事で何か変わるかもしれないよ?」
「変わる……? もしかして、藍凛を見つけられるかもしれないって事?」
「可能性は十分あると思うんだよね。どう?」
ルナはようやっと話を切り出せた事に安堵していた。
魔法という言葉を聞き目の色が変わった少女は腕を組み真剣に考えている。
崩れた天井から覗き込む空は遺跡に入る前より薄暗い。
それは瑠璃が居た森以上に暗く、ルナの目にはどす黒い瘴気が煙のように漂っている様子が視えている。
恐らくここは瘴気の中心付近なのだろう。
ルナ自身、いくらロボットの身体とはいえ体内に魔石を宿している。
浄化魔法を扱えるとはいえ、この遺跡に長期滞在は不可能だと理解していた。
「……少しでも可能性があるのなら。」
「いいの?」
「えぇ。」
「ありがとう! じゃあ、そうだなぁ……ベッドに座ってもらっていい?」
少女は言われるがままベッドの上に座った。
軋む音が部屋中に響き渡る中、ルナは右手を上にかざし防壁魔法をかけた。
光属性の防壁は闇属性の瘴気をシャットアウトする。
次に右手を少女にかざし、魔力感知能力を発動させる。
濃度の濃い瘴気の中に長期間滞在しているせいか、師匠の魔力はより一層霞みがかっていた。
――集中しろ、宝石を特定しないと浄化が出来ないんだから……!
心の中で自分を激励する。
そうして発動させて二分半程が経過した時、ルナの目に宝石の形がハッキリと視えた。
「道標の石、アイオライトよ。今からお前を浄化する!」
「浄化魔法」と唱えると同時に少女の周りを風と淡い光が舞い上がった。
そこから体感二十秒ほどをかけて少女の宝石と師匠の魔力が浄化されていく。
浄化が終わり風が止んだのを確認するとルナは一段落ついた事に安堵したのだった。
「ねぇ、今のが魔法!? 凄い!! こんなにワクワクしたの、初めて!」
少女は目を輝やかせて前のめりにルナを見ている。
悪い気はしないと『どうだ!』と言わんばかりにルナはドヤ顔を決め込んでいた。
「でしょでしょ!? 魔法って素敵なんだよ! ボクには使えない魔法もたくさんあって、すっごく面白いの!! 」
「他にはどんな魔法が使えるの?」
「えっとねぇ……」
ルナは人差し指を上に向け水魔法と唱えると、人差し指の上に球体の水が浮かび上がった。
それは球体の形に沿ってぐるぐると廻っている。
少女の表情がぱあっと明るくなった。
「魔法って呪文を唱える事で使えるの?」
「ううん、呪文はなくても使えるよ。複数の魔法が使える者は呪文を唱える事で集中出来るから、必要な分量を正確な場所に放てるんだ。」
「へぇ、そうなんだ!」
「キミも魔法、使えると思うよ。」
「えっ、使えるの?」
「うん。キミの宝石……えっとね、キミの本来の姿だったクマのぬいぐるみの中に宝石が入っていて、その宝石に魔力が宿って今の姿になったんだよ。キミがぬいぐるみだった時の記憶があるのは宝石の力と形が関係しているのかもしれない。」
ルナは少女の隣りに座り、言葉を選びながら説明をする。
傷付けない方法で嘘をつかずに話すのはとても難しい。
そう思いながら悟られないように、興味を持てるように言葉を口にする。
――おばあちゃんもだけど、師匠って、本当に凄い人なんだなぁ……。
言葉を選べと何度も注意されたあの頃。
過去の記憶が少しだけルナの脳裏を過ぎったが、慌てて振り払い目の前の事に意識を向けなおした。
「あたしって、どんな魔法が使えるの?」
「うーん、まだ覚醒していないだろうから何とも言えないかなぁ。キミの宝石はアイオライトだから、石言葉に関連する魔法だとは思うんだよねぇ。ボクの仲間もそうだからさ。」
「仲間……?」
「ねぇ、もしキミと藍凛が良ければだけど、ボク達の仲間と会ってみない? 実はボク、近くにいる仲間を置いてけぼりにしたままここに来ちゃってさ。」
「えっ、戻らなくていいの? あなたの仲間、心配しているんじゃ……。」
「異常な瘴気のある場所でキミの事を放っておけないよ。それにこのまま帰ったらキミを浄化した意味がなくなっちゃう。」
ルナはこのタイミングで『自分は師匠の魔力を探しにここに来たのだ』と少女に話した。
師匠の魔力が少女の身体……即ち宝石に宿っていた事。
自分も含めた仲間は人間ではなく魔石なのだと。
「魔力を宿した事で人の姿に変わったんだよ。だから魔法が使えるんだ。」
「へぇー! 藍凛に魔法を見せたら喜んでくれるかな!?」
少女は嬉しそうに自身の身体を観察しながら未来を想像する。
「でも、どうしてあたしは藍凛と同じ姿をしているんだろう……。」
少女は両手のひらを見つめたまま落ち込んでしまう。
――そうだ、それを知る為に藍凛を探しているんだった。
少女の心の中で不安が一気に膨れ上がる。
「そこなんだよねぇ。……ボクも一緒に考えてみるよ。……そういえば身体の調子はどう? 浄化して少し経ったけど、変なとこない?」
「……身体がだいぶ軽くなったかも。あと、何かを思い出せそうな予感がする。」
あと少し、もう一押しあればと少女は呟いた。
――良かった。浄化の効果はしっかり出てる。この調子なら、もう少し時間が経てば状況が変わるかもしれない。
……後は。
ルナは今一度状況を整理する。
この遺跡の瘴気は尋常じゃないほどに濃度が濃い。
先日の瑠璃が居たあの森とは桁違いに視えた。
瘴気はネガティブな感情・物事・環境が合わさって生まれ、大地の魔力と混ざる事によって誕生する。
考えられるとしたら過去にこの遺跡で何かが起こった可能性。
自然災害等で犠牲者が多いと瘴気が発生する場合も十分有り得る。
魔力感知能力で視る限りこの遺跡は住宅が軒並みにある、それなりの広さの街だったように伺えた。
「…………。」
ルナの脳裏にふと思い浮かんだ事があった。
数百年前、ルナの師匠が大魔女として恐れられる起因となったらしい出来事。
ルナの言うおばあちゃんと本人から直接聞いた話ではあるが、『そういう過去があった』程度でしか耳にしておらず、実際のところは定かでは無い。
「……どうしたの?」
ルナが声に気付くと少女が顔を覗き込んでいる。
険しい顔をしていると心配してくれていたようだ。
「考え事をしていただけだよ」と笑って答えるとゆっくりと立ち上がり大きく伸びをする。
「どうしよっか? まだ行ってないとこ行ってみる?」
少女は頷くと同じように立ち上がりルナの隣りに並んだ。
その後、この廃墟の中をくまなく探したが収穫は得られず、二人は来た道を戻り廃墟の外に出たのだった。
探し人は見つからぬまま歩き回るばかりであった。
その間、少女は一度も休憩を取っていない。
ルナが度々休憩を提案しても聞く耳を持ってくれず、出会ったばかりの頃と変わらず疲れが出ている様子もないのだ。
――どうしよう。ここまで融通の効かない子だとは思わなかった……。
焦燥感に苛まれながらも少女について行く。
あの後、入った大きな廃墟では収穫はなく、今は隣りの廃墟の二階へ向かおうとしている。
先程の廃墟と比べて更に広く、外観から推測して四階建てであろう大きな屋敷だ。
一階の奥には庭であったであろう空間が広がっている。
その中心には辛うじて判別できる滑り台とシーソーがあった。
――そういやぁボク達ってこういう遊具で遊んだ事も遊ぶ機会もないよなぁ。
ルナは遠目で眺めながら考えていた。
人間が築いた文明は凄い。
こうして自分達がアトリエで暮らせるのも、知識を得られるのも、人が歩んだ歴史があってこそだ。
――ボクがロボットとして創られたのも人のおかげだ。だけど……。
ルナは昔を思い出し、歯を食いしばった。
人とは極力関わりたくないと、彼女は人を拒絶する。
瑠璃と出会った森の奥に遺体らしきものを視つけたあの時、見て見ぬふりを選んだのは関わりたくないという個人的な理由が大きかった。
師匠からも『そういうものに手を出すという事は、人と関わり繋がる事を選ぶという事だ』と、他の生物同様慎重に考えて行動しろと教わっていたのも勿論あったが、『関わりたくない』、その気持ちが一番に上回っている。
もし少女が人間だったら、きっとその場から去っていただろう。
ルナは考えていくうちにだんだんと苛立ってきたので、頭を振りそこで思考を停止させた。
石造りの階段を上り二階へ到着する。
所々床が抜け落ちており、更に天井も崩れ落ちているので足場が少し悪い。
部屋の中は最初に訪れた廃墟と似たような構造になっていた。
「この建物、あたしが目覚めた時に居た場所なんだ。一階に居たの。」
少女はボソッとルナに話してくれる。
「この階にある鏡であたしはこの姿を知ったんだ。」
そう言って少女は黙り込んだまま鏡のある部屋へと案内してくれる。
部屋に入ると目の前にはキングサイズのベッドが置かれており、『いつもここで寝泊まりしてるんだ』と教えてくれた。
どうやら長時間付き添ってくれているルナに意識が向くようになったようだ。
少女が見たという鏡は全身が映る長細く壁に掛けるタイプの大きな物で、床に落ちた衝撃で割れたであろう鏡の一部分が散らばっている。
一部割れてはいるが全身を確認する分には問題なかった。
少女は鏡の前で立ち止まり、鏡に映る自身を見つめている。
「ねぇ、ここに長期間滞在していて平気そうに見えるけど、身体の調子は大丈夫なの?」
「え? ベッドで寝てるから身体は痛くないし平気だよ。」
「それもあるけど、そうじゃなくて……。うーんと、ここ、心身に良くない瘴気が漂ってるからさ。」
「あなた、そういう類いのモノが視えるの?」
「……うん、まぁそんな感じ。」
この時、少女は初めてルナの顔をしっかりと見た。
ようやっと向き合ってくれるようになったと、ルナは一安心する。
少女は自身の身体をじっくり観察し考え込んだ後、口を開き質問に答えた。
「特に不調はないけれど……よくよく考えれば、ずっと同じ所をぐるぐる巡っているわね。今まで気付かなかったけど、こんなに時間が経っているんだから藍凛は遺跡から出ている可能性も十分あるのよね。」
「……うん。もしかするとキミは瘴気にやられているから気付けなかった、って考えてもいいのかもしれない。まだ確信はないけど、実際ここの瘴気は尋常じゃないから。ボクでも魔法を使ってなかったら今頃は……。」
「魔法……。」
「ねぇ、一度キミを浄化させてもらってもいい? 今のキミ、瘴気を身に纏っている状態なんだよ。……もしかしたら浄化する事で何か変わるかもしれないよ?」
「変わる……? もしかして、藍凛を見つけられるかもしれないって事?」
「可能性は十分あると思うんだよね。どう?」
ルナはようやっと話を切り出せた事に安堵していた。
魔法という言葉を聞き目の色が変わった少女は腕を組み真剣に考えている。
崩れた天井から覗き込む空は遺跡に入る前より薄暗い。
それは瑠璃が居た森以上に暗く、ルナの目にはどす黒い瘴気が煙のように漂っている様子が視えている。
恐らくここは瘴気の中心付近なのだろう。
ルナ自身、いくらロボットの身体とはいえ体内に魔石を宿している。
浄化魔法を扱えるとはいえ、この遺跡に長期滞在は不可能だと理解していた。
「……少しでも可能性があるのなら。」
「いいの?」
「えぇ。」
「ありがとう! じゃあ、そうだなぁ……ベッドに座ってもらっていい?」
少女は言われるがままベッドの上に座った。
軋む音が部屋中に響き渡る中、ルナは右手を上にかざし防壁魔法をかけた。
光属性の防壁は闇属性の瘴気をシャットアウトする。
次に右手を少女にかざし、魔力感知能力を発動させる。
濃度の濃い瘴気の中に長期間滞在しているせいか、師匠の魔力はより一層霞みがかっていた。
――集中しろ、宝石を特定しないと浄化が出来ないんだから……!
心の中で自分を激励する。
そうして発動させて二分半程が経過した時、ルナの目に宝石の形がハッキリと視えた。
「道標の石、アイオライトよ。今からお前を浄化する!」
「浄化魔法」と唱えると同時に少女の周りを風と淡い光が舞い上がった。
そこから体感二十秒ほどをかけて少女の宝石と師匠の魔力が浄化されていく。
浄化が終わり風が止んだのを確認するとルナは一段落ついた事に安堵したのだった。
「ねぇ、今のが魔法!? 凄い!! こんなにワクワクしたの、初めて!」
少女は目を輝やかせて前のめりにルナを見ている。
悪い気はしないと『どうだ!』と言わんばかりにルナはドヤ顔を決め込んでいた。
「でしょでしょ!? 魔法って素敵なんだよ! ボクには使えない魔法もたくさんあって、すっごく面白いの!! 」
「他にはどんな魔法が使えるの?」
「えっとねぇ……」
ルナは人差し指を上に向け水魔法と唱えると、人差し指の上に球体の水が浮かび上がった。
それは球体の形に沿ってぐるぐると廻っている。
少女の表情がぱあっと明るくなった。
「魔法って呪文を唱える事で使えるの?」
「ううん、呪文はなくても使えるよ。複数の魔法が使える者は呪文を唱える事で集中出来るから、必要な分量を正確な場所に放てるんだ。」
「へぇ、そうなんだ!」
「キミも魔法、使えると思うよ。」
「えっ、使えるの?」
「うん。キミの宝石……えっとね、キミの本来の姿だったクマのぬいぐるみの中に宝石が入っていて、その宝石に魔力が宿って今の姿になったんだよ。キミがぬいぐるみだった時の記憶があるのは宝石の力と形が関係しているのかもしれない。」
ルナは少女の隣りに座り、言葉を選びながら説明をする。
傷付けない方法で嘘をつかずに話すのはとても難しい。
そう思いながら悟られないように、興味を持てるように言葉を口にする。
――おばあちゃんもだけど、師匠って、本当に凄い人なんだなぁ……。
言葉を選べと何度も注意されたあの頃。
過去の記憶が少しだけルナの脳裏を過ぎったが、慌てて振り払い目の前の事に意識を向けなおした。
「あたしって、どんな魔法が使えるの?」
「うーん、まだ覚醒していないだろうから何とも言えないかなぁ。キミの宝石はアイオライトだから、石言葉に関連する魔法だとは思うんだよねぇ。ボクの仲間もそうだからさ。」
「仲間……?」
「ねぇ、もしキミと藍凛が良ければだけど、ボク達の仲間と会ってみない? 実はボク、近くにいる仲間を置いてけぼりにしたままここに来ちゃってさ。」
「えっ、戻らなくていいの? あなたの仲間、心配しているんじゃ……。」
「異常な瘴気のある場所でキミの事を放っておけないよ。それにこのまま帰ったらキミを浄化した意味がなくなっちゃう。」
ルナはこのタイミングで『自分は師匠の魔力を探しにここに来たのだ』と少女に話した。
師匠の魔力が少女の身体……即ち宝石に宿っていた事。
自分も含めた仲間は人間ではなく魔石なのだと。
「魔力を宿した事で人の姿に変わったんだよ。だから魔法が使えるんだ。」
「へぇー! 藍凛に魔法を見せたら喜んでくれるかな!?」
少女は嬉しそうに自身の身体を観察しながら未来を想像する。
「でも、どうしてあたしは藍凛と同じ姿をしているんだろう……。」
少女は両手のひらを見つめたまま落ち込んでしまう。
――そうだ、それを知る為に藍凛を探しているんだった。
少女の心の中で不安が一気に膨れ上がる。
「そこなんだよねぇ。……ボクも一緒に考えてみるよ。……そういえば身体の調子はどう? 浄化して少し経ったけど、変なとこない?」
「……身体がだいぶ軽くなったかも。あと、何かを思い出せそうな予感がする。」
あと少し、もう一押しあればと少女は呟いた。
――良かった。浄化の効果はしっかり出てる。この調子なら、もう少し時間が経てば状況が変わるかもしれない。
……後は。
ルナは今一度状況を整理する。
この遺跡の瘴気は尋常じゃないほどに濃度が濃い。
先日の瑠璃が居たあの森とは桁違いに視えた。
瘴気はネガティブな感情・物事・環境が合わさって生まれ、大地の魔力と混ざる事によって誕生する。
考えられるとしたら過去にこの遺跡で何かが起こった可能性。
自然災害等で犠牲者が多いと瘴気が発生する場合も十分有り得る。
魔力感知能力で視る限りこの遺跡は住宅が軒並みにある、それなりの広さの街だったように伺えた。
「…………。」
ルナの脳裏にふと思い浮かんだ事があった。
数百年前、ルナの師匠が大魔女として恐れられる起因となったらしい出来事。
ルナの言うおばあちゃんと本人から直接聞いた話ではあるが、『そういう過去があった』程度でしか耳にしておらず、実際のところは定かでは無い。
「……どうしたの?」
ルナが声に気付くと少女が顔を覗き込んでいる。
険しい顔をしていると心配してくれていたようだ。
「考え事をしていただけだよ」と笑って答えるとゆっくりと立ち上がり大きく伸びをする。
「どうしよっか? まだ行ってないとこ行ってみる?」
少女は頷くと同じように立ち上がりルナの隣りに並んだ。
その後、この廃墟の中をくまなく探したが収穫は得られず、二人は来た道を戻り廃墟の外に出たのだった。
1
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる