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Episode 1 【No Name】
#5
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ご飯を食べ終わった二人はルナに教えられるがまま食器を片付けもう一度椅子に座った。
そうして今度は部屋の説明に着手する。
「えっと、キッチン横にあるのがトイレとシャワールームだよ。これらの使い方はわかる?」
「うん、大丈夫。」
「シャワールームの横は一応寝室なんだけど今は空き部屋になってる。反対側の個室も寝室で、基本こっちで寝泊まりしてる感じ。中には寝巻きとか布団が置いてあるから自由に使ってね!」
「うん、ありがとう。」
「それから、話は変わるけど…二人ともこれからどうしたい?」
ルナは真剣な表情で二人に問う。
彼女達は知識と経験が浅い、人で言う子供の状態だ。
仮に人の住む街へ行きたいと願うとして、大人の姿をした二人は現状社会に潰され生きていけなくなる可能性が非常に高い。
師匠の魔力を見つけ浄化したという事はそれ相応の責任を担う事に繋がるのだ。
「良かったらボクの住むアトリエに来ない?」
ルナはアトリエに住む事を二人に提案する。
彼女達には住む場所がない。
人のセカイはルールが複雑だと師匠から聞いているので簡単に家は見つからないだろう。
何かを学ぶにしろ行き場がないのであれば、自分の住む家に招待した方が安全だと踏んだのだ。
「いいの?」
「うん。行く宛てもないまま野宿させる訳にも行かないし……。部屋ならいっぱいあるから使っていいよ!」
──そこまで言ってもらえるなら。
行く宛てなどない二人はお言葉に甘えて住まわせてもらうことにした。
「よぉーし! 明日は魔女のアトリエに帰る事にしよう!!」
魔女のアトリエ。
彼女曰く、師匠は昔とある街を半壊させた事で大魔女と呼ばれる程人々に恐れられていた時期があったらしい。
本人から聞いた事だから確かめようもないけどね、とも話す。
その師匠は元々コレクション好きらしく、アトリエには色んな物が豊富に置かれているそうだ。
碧と瑠璃は色んな想像を膨らませたのだった。
「あ、そういえば。昨日辺りかな? あの家の窓から遠目で碧さんとワンちゃんっぽい動物を見かけたんだけど、あのワンちゃんは何処に行ったの? わたしの見間違いかな…?」
――あー……。
瑠璃の質問に二人は顔を見合わせた。
「見間違いじゃないよ。その犬はきっと、ボクだから!」
ポンッ! と軽い音を立て煙が舞い上がる。
ルナは瞬く間に柴犬へと姿を変えた。
案の定瑠璃の口から驚きの声が出る。
「これ、別れ際の師匠に変身魔法をかけられたんだよね…。本当に意味わかんない! 碧を浄化するまでは元の姿に戻れなかったし、散々な目にあったよ…。」
遠い目をして語るルナを瑠璃はまじまじと見つめた。
三日月のチャームが付いた首輪は先程までの人型の姿の時もチョーカーとして身につけていた物だ。
この犬をルナだと結び付ける唯一のアクセサリーなのかもしれない。
そんな中ルナは徐ろに碧に視線を送る。
彼女に釣られて碧もルナを見つめる。
そうして不敵な笑みを浮かべ、碧の背中を目掛けて体当たりをした。
不意打ちを付かれた碧はそのまま前へと倒れ込む。
床に叩きつけられた彼女の身体が悲鳴をあげているのが目に見えて解る。
……これは痛そうだ。
彼女の背中の上にルナが乗っかった状態になる。
「ふぇぇ……止めてって言ってるのにぃ…。」
碧はうつ伏せのまま半泣きで訴える。
衝撃と痛みで動けないのだろう、抵抗する事もなく項垂れていた。
頭の整理が追いつかない瑠璃は呆然と見つめている。
「……えっと、何してるの?」
「お尻に敷いてあげてるの!」
──それはものの例えであって、物理的な意味で使う言葉ではないのでは?
ふと脳裏を過ぎった瑠璃だったが、それを発言する事によって自分も同じようにされるのはたまったもんじゃないと心の中に留めておく事にした。
そろそろ飽きたと零したルナはもう一度人の姿へと戻る。
碧に乗っかったまま変身を解いたので更に体重がかかり、「ぐへっ……」っと辛そうな声が聞こえた。
「そろそろ寝る準備しよっか。アトリエまで距離があるから早めに出発したいし。」
ルナは立ち上がり服の埃を取るようにパンパンと叩きながら話した。
二人は言われるまま寝室へと向かう。
六畳ほどの部屋の中にはローチェストと空の三段ボックス、三セットほど積み上げられた布団が二列に並んで置かれている。
ルナはローチェストの一番上の引き出しを開け、そこからパステルピンクの衣服を三人分取り出した。
「シャワーを浴びたら部屋着に着替えるといいよ。脱衣所にタオルが置いてあるからそれ使って。服と使ったタオルは洗濯機に入れてくれれば、明日の朝には乾くから。」
「ありがとう。誰から先に入ろっか?」
「瑠璃、お先にどうぞ。ついでに案内するね!」
「ありがとう碧さん。」
「碧でいいよ! ルナはどうする?」
「んー? ボクはいいや。ロボットだから拭くだけでいいしね。」
「わかった。じゃあ行こ!」
碧は瑠璃の右手を引っ張って寝室を出て行った。
向かいの寝室横の扉を開ける。
入って左側には棚が備え付けられており、深さ三十センチほどの籠の中にバスタオルが入っていた。
同じ大きさのもう一つの籠にも同じようにバスタオルが入っていたが、よく見るとそれぞれ『男子用』『女子用』と分けられている。
突き当たりにはドラム式洗濯機があり、ボタンの表示を見る限り洗濯と乾燥の両方をしてくれるようだ。
棚の向かい、脱衣所に入って左手側にシャワールームがある。
シャワールームの中の壁掛けの棚の上にはボディーソープとシャンプー・リンス・コンディショナー、クレンジングオイルに洗顔フォームまでアメニティグッズが揃って置かれていた。
「あ、部屋着の間に下着も挟んでるからそれ使ってだって。」
「え!? し、下着!? ちょっと抵抗あるんだけど…。」
「だよねぇ…。ルナ曰く、あのチェスト自体に魔法がかかってるらしくて。その人に合うサイズに変化して、脱いだら数分後に消滅する仕組みになってるんだって。私も何回か着てるけど、本当に消えたからビックリした…。」
「え、それ色々大丈夫なの…?」
色々不安になった瑠璃だが、ここまで良くしてもらっている以上ワガママは言えないという気持ちもあり有難く使わせてもらう事にした。
シャワーと洗濯機の使い方は知っている。
不思議な感覚だ。
シャワーから戻って来ると待っていた碧が同じように部屋着を持ってシャワールームの中に入った。
そうだ、待っている間に日記を書こう。
瑠璃は持って来た分厚いノートをダイニングテーブルに広げ日記を綴った。
――今日は書くことが沢山あるなぁ、どれから書こう?
あの家から森を出ようと一人でがむしゃらに走ったのが最早懐かしい。
あれだけ重かった身体は嘘のように回復している。
本当に二人と出会えて良かったと瑠璃は心の底から思っていた。
あと書く事と言えば……。
悩みながら書いていると戻ってきた碧がノートを覗き込んでいた。
「何書いてるの?」
「日記だよ。今日の出来事を綴ろうと思って。二人に出会えた大切な日だしね!」
そう言って碧に笑顔を向けた。
瑠璃にとっては初めて出会った人達だ。
ずっと一人で心細かった彼女にとって今日という日はかけがえのない一日なのだ。
「ふふっ。これからよろしくね、瑠璃!」
「こちらこそ!」
笑い合っていたところでシャワールームからルナが出てきた。
知らない間に着替えに入っていたらしい。
何かを気にしているような表情で二人の元へやってきた。
――あ、あれ?
瑠璃は違和感に気付く。
でもそれは声に出して言わない方がいい事だとすぐに察した。
ルナは二人の胸元をジロジロと見つめている。
「き、気にしてなんかないもん!! ちっちゃいなんて気にしてないもん!!!!」
先程まで着ていた服装では気付かなかったが、恐らく体型をカバーしていたのだろう。
部屋着に着替えた事でそれがくっきりと出てしまっていた。
二人と比べても明らかに胸の大きさが違う。
結構気にしているようだ。
大人びた言動とは裏腹に泣きそうな顔で自ら暴露しているルナが可愛らしく見えたのだった。
「あ、布団敷いてくれたんだ! ありがとうルナ。」
気にする様子もなく碧は急ぎ足で寝室を覗き込みルナに話題を振る。
彼女なりの気遣いなのだろう。
うぅぅ……と唸りながら碧のいる寝室へと向かっていった。
「瑠璃ー、ボク達先に寝るよー。明日早いからあんま遅くならないようにね。」
「わかった。もう少しで書き終わるからすぐ向かうね。」
寝室の扉が閉まるのを確認して、瑠璃は日記の続きを書いていく。
――――
六日目の続き。
目が覚めると目の前にルナと碧がいた。
ルナが魔法で助けてくれたらしい。
言われるがまま森を抜け辿り着いた草原は今でも目に焼き付いている。
あの景色は生涯忘れる事はないだろう。
その後、ルナから色々教えてもらったけれどよくわからない事だらけだった。
わたしは人ではなく、宿した魔力によって生物に変化した宝石らしい。
空腹を知らない事が一番の判断基準になったようだ。
そもそも人ってどういう生き物なのだろう。
わたしと同じ姿らしいけど、実際に会えるのなら会ってみたい。
少し怖いけどその時はいずれやって来そうだ。
「ご飯を作って食べよう」と提案してくれたルナが出した簡易魔導テントと呼ばれる物が凄く印象深く、外見とは打って変わって中が広く驚いた。
寝室二部屋とトイレとシャワールーム、キッチンとリビングまで付いた一軒家のような間取りだ。
ルナからサンダルを貰い、教えられるまま初めて料理を作る。
とても美味しく幸せな気持ちにもなれた。
料理がとても楽しかった。
……勉強してみようかな。
アトリエに着いたら色々教えてもらおう。
明日はルナの住む魔女のアトリエと呼ばれる所に向かう事になった。
行き場のないわたしと碧にとって、そこに住まわせてもらえるなんてとても有難い話だ。
アトリエには色んな物があるらしく、本も沢山置いてあるそうなので、そこで色々学ばせてもらおうと思う。
ルナにはお世話になりっぱなしだ。
生活が落ち着いたらわたしに出来る事で何かお返しをしないと。
明日が、これから先が楽しみで仕方がない。
これからはわたしだけの物語をこのノートに書き綴っていける。
そう考えるだけでワクワクが止まらないのだ。
――――――――――――――――
日記を綴り終えた瑠璃は二人がいる寝室へと足を運ぶ。
二人はもうぐっすりと眠っている。
──ちゃんと眠れるかな?
そんな事を考えつつ、布団に入って目を閉じたのだった。
そうして今度は部屋の説明に着手する。
「えっと、キッチン横にあるのがトイレとシャワールームだよ。これらの使い方はわかる?」
「うん、大丈夫。」
「シャワールームの横は一応寝室なんだけど今は空き部屋になってる。反対側の個室も寝室で、基本こっちで寝泊まりしてる感じ。中には寝巻きとか布団が置いてあるから自由に使ってね!」
「うん、ありがとう。」
「それから、話は変わるけど…二人ともこれからどうしたい?」
ルナは真剣な表情で二人に問う。
彼女達は知識と経験が浅い、人で言う子供の状態だ。
仮に人の住む街へ行きたいと願うとして、大人の姿をした二人は現状社会に潰され生きていけなくなる可能性が非常に高い。
師匠の魔力を見つけ浄化したという事はそれ相応の責任を担う事に繋がるのだ。
「良かったらボクの住むアトリエに来ない?」
ルナはアトリエに住む事を二人に提案する。
彼女達には住む場所がない。
人のセカイはルールが複雑だと師匠から聞いているので簡単に家は見つからないだろう。
何かを学ぶにしろ行き場がないのであれば、自分の住む家に招待した方が安全だと踏んだのだ。
「いいの?」
「うん。行く宛てもないまま野宿させる訳にも行かないし……。部屋ならいっぱいあるから使っていいよ!」
──そこまで言ってもらえるなら。
行く宛てなどない二人はお言葉に甘えて住まわせてもらうことにした。
「よぉーし! 明日は魔女のアトリエに帰る事にしよう!!」
魔女のアトリエ。
彼女曰く、師匠は昔とある街を半壊させた事で大魔女と呼ばれる程人々に恐れられていた時期があったらしい。
本人から聞いた事だから確かめようもないけどね、とも話す。
その師匠は元々コレクション好きらしく、アトリエには色んな物が豊富に置かれているそうだ。
碧と瑠璃は色んな想像を膨らませたのだった。
「あ、そういえば。昨日辺りかな? あの家の窓から遠目で碧さんとワンちゃんっぽい動物を見かけたんだけど、あのワンちゃんは何処に行ったの? わたしの見間違いかな…?」
――あー……。
瑠璃の質問に二人は顔を見合わせた。
「見間違いじゃないよ。その犬はきっと、ボクだから!」
ポンッ! と軽い音を立て煙が舞い上がる。
ルナは瞬く間に柴犬へと姿を変えた。
案の定瑠璃の口から驚きの声が出る。
「これ、別れ際の師匠に変身魔法をかけられたんだよね…。本当に意味わかんない! 碧を浄化するまでは元の姿に戻れなかったし、散々な目にあったよ…。」
遠い目をして語るルナを瑠璃はまじまじと見つめた。
三日月のチャームが付いた首輪は先程までの人型の姿の時もチョーカーとして身につけていた物だ。
この犬をルナだと結び付ける唯一のアクセサリーなのかもしれない。
そんな中ルナは徐ろに碧に視線を送る。
彼女に釣られて碧もルナを見つめる。
そうして不敵な笑みを浮かべ、碧の背中を目掛けて体当たりをした。
不意打ちを付かれた碧はそのまま前へと倒れ込む。
床に叩きつけられた彼女の身体が悲鳴をあげているのが目に見えて解る。
……これは痛そうだ。
彼女の背中の上にルナが乗っかった状態になる。
「ふぇぇ……止めてって言ってるのにぃ…。」
碧はうつ伏せのまま半泣きで訴える。
衝撃と痛みで動けないのだろう、抵抗する事もなく項垂れていた。
頭の整理が追いつかない瑠璃は呆然と見つめている。
「……えっと、何してるの?」
「お尻に敷いてあげてるの!」
──それはものの例えであって、物理的な意味で使う言葉ではないのでは?
ふと脳裏を過ぎった瑠璃だったが、それを発言する事によって自分も同じようにされるのはたまったもんじゃないと心の中に留めておく事にした。
そろそろ飽きたと零したルナはもう一度人の姿へと戻る。
碧に乗っかったまま変身を解いたので更に体重がかかり、「ぐへっ……」っと辛そうな声が聞こえた。
「そろそろ寝る準備しよっか。アトリエまで距離があるから早めに出発したいし。」
ルナは立ち上がり服の埃を取るようにパンパンと叩きながら話した。
二人は言われるまま寝室へと向かう。
六畳ほどの部屋の中にはローチェストと空の三段ボックス、三セットほど積み上げられた布団が二列に並んで置かれている。
ルナはローチェストの一番上の引き出しを開け、そこからパステルピンクの衣服を三人分取り出した。
「シャワーを浴びたら部屋着に着替えるといいよ。脱衣所にタオルが置いてあるからそれ使って。服と使ったタオルは洗濯機に入れてくれれば、明日の朝には乾くから。」
「ありがとう。誰から先に入ろっか?」
「瑠璃、お先にどうぞ。ついでに案内するね!」
「ありがとう碧さん。」
「碧でいいよ! ルナはどうする?」
「んー? ボクはいいや。ロボットだから拭くだけでいいしね。」
「わかった。じゃあ行こ!」
碧は瑠璃の右手を引っ張って寝室を出て行った。
向かいの寝室横の扉を開ける。
入って左側には棚が備え付けられており、深さ三十センチほどの籠の中にバスタオルが入っていた。
同じ大きさのもう一つの籠にも同じようにバスタオルが入っていたが、よく見るとそれぞれ『男子用』『女子用』と分けられている。
突き当たりにはドラム式洗濯機があり、ボタンの表示を見る限り洗濯と乾燥の両方をしてくれるようだ。
棚の向かい、脱衣所に入って左手側にシャワールームがある。
シャワールームの中の壁掛けの棚の上にはボディーソープとシャンプー・リンス・コンディショナー、クレンジングオイルに洗顔フォームまでアメニティグッズが揃って置かれていた。
「あ、部屋着の間に下着も挟んでるからそれ使ってだって。」
「え!? し、下着!? ちょっと抵抗あるんだけど…。」
「だよねぇ…。ルナ曰く、あのチェスト自体に魔法がかかってるらしくて。その人に合うサイズに変化して、脱いだら数分後に消滅する仕組みになってるんだって。私も何回か着てるけど、本当に消えたからビックリした…。」
「え、それ色々大丈夫なの…?」
色々不安になった瑠璃だが、ここまで良くしてもらっている以上ワガママは言えないという気持ちもあり有難く使わせてもらう事にした。
シャワーと洗濯機の使い方は知っている。
不思議な感覚だ。
シャワーから戻って来ると待っていた碧が同じように部屋着を持ってシャワールームの中に入った。
そうだ、待っている間に日記を書こう。
瑠璃は持って来た分厚いノートをダイニングテーブルに広げ日記を綴った。
――今日は書くことが沢山あるなぁ、どれから書こう?
あの家から森を出ようと一人でがむしゃらに走ったのが最早懐かしい。
あれだけ重かった身体は嘘のように回復している。
本当に二人と出会えて良かったと瑠璃は心の底から思っていた。
あと書く事と言えば……。
悩みながら書いていると戻ってきた碧がノートを覗き込んでいた。
「何書いてるの?」
「日記だよ。今日の出来事を綴ろうと思って。二人に出会えた大切な日だしね!」
そう言って碧に笑顔を向けた。
瑠璃にとっては初めて出会った人達だ。
ずっと一人で心細かった彼女にとって今日という日はかけがえのない一日なのだ。
「ふふっ。これからよろしくね、瑠璃!」
「こちらこそ!」
笑い合っていたところでシャワールームからルナが出てきた。
知らない間に着替えに入っていたらしい。
何かを気にしているような表情で二人の元へやってきた。
――あ、あれ?
瑠璃は違和感に気付く。
でもそれは声に出して言わない方がいい事だとすぐに察した。
ルナは二人の胸元をジロジロと見つめている。
「き、気にしてなんかないもん!! ちっちゃいなんて気にしてないもん!!!!」
先程まで着ていた服装では気付かなかったが、恐らく体型をカバーしていたのだろう。
部屋着に着替えた事でそれがくっきりと出てしまっていた。
二人と比べても明らかに胸の大きさが違う。
結構気にしているようだ。
大人びた言動とは裏腹に泣きそうな顔で自ら暴露しているルナが可愛らしく見えたのだった。
「あ、布団敷いてくれたんだ! ありがとうルナ。」
気にする様子もなく碧は急ぎ足で寝室を覗き込みルナに話題を振る。
彼女なりの気遣いなのだろう。
うぅぅ……と唸りながら碧のいる寝室へと向かっていった。
「瑠璃ー、ボク達先に寝るよー。明日早いからあんま遅くならないようにね。」
「わかった。もう少しで書き終わるからすぐ向かうね。」
寝室の扉が閉まるのを確認して、瑠璃は日記の続きを書いていく。
――――
六日目の続き。
目が覚めると目の前にルナと碧がいた。
ルナが魔法で助けてくれたらしい。
言われるがまま森を抜け辿り着いた草原は今でも目に焼き付いている。
あの景色は生涯忘れる事はないだろう。
その後、ルナから色々教えてもらったけれどよくわからない事だらけだった。
わたしは人ではなく、宿した魔力によって生物に変化した宝石らしい。
空腹を知らない事が一番の判断基準になったようだ。
そもそも人ってどういう生き物なのだろう。
わたしと同じ姿らしいけど、実際に会えるのなら会ってみたい。
少し怖いけどその時はいずれやって来そうだ。
「ご飯を作って食べよう」と提案してくれたルナが出した簡易魔導テントと呼ばれる物が凄く印象深く、外見とは打って変わって中が広く驚いた。
寝室二部屋とトイレとシャワールーム、キッチンとリビングまで付いた一軒家のような間取りだ。
ルナからサンダルを貰い、教えられるまま初めて料理を作る。
とても美味しく幸せな気持ちにもなれた。
料理がとても楽しかった。
……勉強してみようかな。
アトリエに着いたら色々教えてもらおう。
明日はルナの住む魔女のアトリエと呼ばれる所に向かう事になった。
行き場のないわたしと碧にとって、そこに住まわせてもらえるなんてとても有難い話だ。
アトリエには色んな物があるらしく、本も沢山置いてあるそうなので、そこで色々学ばせてもらおうと思う。
ルナにはお世話になりっぱなしだ。
生活が落ち着いたらわたしに出来る事で何かお返しをしないと。
明日が、これから先が楽しみで仕方がない。
これからはわたしだけの物語をこのノートに書き綴っていける。
そう考えるだけでワクワクが止まらないのだ。
――――――――――――――――
日記を綴り終えた瑠璃は二人がいる寝室へと足を運ぶ。
二人はもうぐっすりと眠っている。
──ちゃんと眠れるかな?
そんな事を考えつつ、布団に入って目を閉じたのだった。
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