上 下
28 / 35
第1章 旅立ちまで

26 卒業と旅立ち

しおりを挟む
あれから4年が立つ…私はもう14歳になった。
あの日無事試験が終わり私はカイルと共に学園に入学した、寮生活であるため資金稼ぎと目的の為ギルド依頼もこなしながら過ごした。
最年少での入学であの日試験をみていない生徒達からやたらと絡まれたり、虐められたりもしたがその度実力の違いを目の前で無言で語ればそのうち誰も関わらなくなった只一人を除いてだけど…そして今日私とカイルは学園を卒業した。
学園の入り口の門の前で私は学園でともに過ごした只一人を待っていた。


「サキ!お待たせ」
「大丈夫だよカイル」
「あれから4年かぁー、早いもんだよなぁー」
「そうだね…」
「サキはやっぱり冒険者として旅に出るのか?」
「うん」
「そっか…」
「カイルはスタンさんの跡継いで騎士団にはいるんでしょ?声かけられてたし」
「あー、その事だけどさ」
「うん?」


バタバタと正装した格好で現れたカイル、共に学園の試験を受け入学し、基本授業は別だった為それ以外で共に過ごしたたった一人の友人
カイルはお父さんである騎士団長のスタンさんを越えるため頑張り、多くの部隊騎士団から推薦(オファー)が来ていた、卒業したときに決めると周りに待って欲しいと頼んで回ったらしく、私もどこの騎士団にしたのか知らないのだ。
今後別々に行動するのだから手紙を送りたいのもありその事について、私はカイルに聞いてみるとどこか遠くを見ながら頬をかきボソリと答えた。


「俺さ…サキと一緒に冒険者として旅に出ようかと」
「え?」


カイルの一言にビックリして私は呆けた顔でカイルをマジマジと見てしまった。


「俺さまだサキに勝てねぇだろ、このまま騎士団に入っても俺はこれ以上強くなれない気がするんだ、それならサキと一緒に冒険しながら旅に出た方が強くなれると思ってさ」
「でも…危険な旅になるよ?」
「ああ、分かってる」
「それにこの旅は…」
「キールさんだろ」
「うん」


そう…あの日試験が終わった日夕方に皆がお祝いしてくれた。
キール先生は学園長と話があるとかで「参加出来ないのが残念です、サキさんおめでとうございます」そう言って頭を撫でられたあの時キール先生は何かを呟いていたけど私は聞こえなかった…
そして「まだ学園長と話があるので」と食事処から出ていったキール先生…
あの日あの時を最後にキール先生はの前から姿を消した。
メルディーさんもガッツォさんも何も聞いておらず知らないと、ギルドに聞いたところパーティーも抜けてソロになっていると…
そして現在居場所は知らないと…
その後入学式の日一つのプレゼントが私の寮の部屋の机の上に置かれていた。
桜に似た髪飾り…角度によって赤にもピンクにも見える守護の魔法が込められた魔石で造られた髪飾り…その魔力はキール先生のものだと直ぐにわかった。
夕方なのにかかわらず私は街の中を走り回って探した、でも何も手がかりもなく気配も魔力も感じない…
私はあの日街中で髪飾りを握りしめてうずくまり周りも気にせず大泣きしてしまった、そしてあの日、あの時私はキール先生が私にとってどんな人物だったか、どれだけの人だったのか、初めて気づいた時だった。
学園に入り学べることは全て学び出来ることは全てやる、そして卒業してキール先生を探しに旅に出る。
その為だけに私は周りにどんな目で見られようと、影で言われようと気にせず頑張ってこれたのだ…
不安や絶望で泣き崩れそうな時、だいたいカイルが稽古の練習に誘ってきたり依頼をとってともに冒険に出たりもした、だからカイルが側にいてくれるのは正直これから一人旅する予定だった私には嬉しかった…


「でも…」
「それに俺もあの日彼処まで気にしていたキールさんが黙って急にサキの元から離れたのか気になるし、何より俺の為だから気にするなよ」
「…ありがとう…カイル」
「ああ、さてまずは何処から探してみるんだ?」
「水の都、アクアトト」
「アクアトトか…、師匠達は?」
「まだ二人で依頼をこなしながら探してるらしいけど特にないって、只4年前にギルドで「冷酷非道の魔術師が来た」と噂があったって」
「そっか、じゃあまずはアクアトトへ行くか!」
「うん」


私達はこれで最後になる学園をもう一度振り向き見た後、門を潜って街へと足を進めた。




これから先何が起きるのか…
私自身が何なのかを知るときが来るなど…

この時知る人は一人を除いて他には誰もいなかった…











「旅立ってしまいましたねぇ」

…いいの?…

「彼の元へ行くの…がですか?」

…そう…

「サキとサキの中に…はそれを望んでいますから」

…貴方は?…

「私はと共に4年も過ごせましたから」

…貴方にばかり負担をかけて悪いわね…

「いえ、これも聖樹ユグドラシルを守護する者の役目です」

…聖樹ユグドラシルもあの方を待っているわ…

「ええ、は必ず聖樹ユグドラシルの元へ向かいますよ」

…ええ、私達と共に…

「ええ」

…ありがとう、ディル・フェルト、我とエルフの子よ…

「いいえ、我が聖光なる母…光の精霊王ルーチェ

…私は行くわ…

「分かりました」

…また会いに来るわ愛しい我が子…



先ほどまで光輝き側にいた女性は学園長、ディル・フェルト・ユグドラシルの頬を撫でた後光の粒子となってその場から消えた。
そしてそこに残ったのは旅立つサキを目でおい無事を祈る、ディル・フェルト・ユグドラシルのみだった。


「キール…君はこの先苦難と絶望を味わうことになる、だがそれを乗り越えねば君は君の愛しい人を永遠と失ってしまうよ…だから必ず…必ず…君は力をつけるんだ、全ての精霊王に認められるように…」










第1章 ~ fin ~














しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

捨てられた侯爵夫人の二度目の人生は皇帝の末の娘でした。

クロユキ
恋愛
「俺と離婚して欲しい、君の妹が俺の子を身籠った」 パルリス侯爵家に嫁いだソフィア・ルモア伯爵令嬢は結婚生活一年目でソフィアの夫、アレック・パルリス侯爵に離婚を告げられた。結婚をして一度も寝床を共にした事がないソフィアは白いまま離婚を言われた。 夫の良き妻として尽くして来たと思っていたソフィアは悲しみのあまり自害をする事になる…… 誤字、脱字があります。不定期ですがよろしくお願いします。

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

異世界転生したら幼女でした!?

@ナタデココ
恋愛
これは異世界に転生した幼女の話・・・

精霊に転生した少女は周りに溺愛される

紅葉
恋愛
ある日親の喧嘩に巻き込まれてしまい、刺されて人生を終わらせてしまった少女がいた 。 それを見た神様は新たな人生を与える 親のことで嫌気を指していた少女は人以外で転生させてくれるようにお願いした。神様はそれを了承して精霊に転生させることにした。 果たしてその少女は新たな精霊としての人生の中で幸せをつかめることができるのか‼️ 初めて書いてみました。気に入ってくれると嬉しいです!!ぜひ気楽に感想書いてください!

〖完結〗転生前の記憶が戻ったので、最低な旦那様とはお別れします。

藍川みいな
恋愛
夫スチュワートの浮気現場を見た瞬間、前世の記憶が戻ったミリアーナ。スチュワートは前世でもミリアーナを裏切り続けた相手だった。 離縁を告げて実家に帰り、父スベン男爵に愛人の事を話すと、スベン男爵は激怒し… 「あのクソ野郎……絶対に許さない! その令嬢も同罪だ! 大切な娘を侮辱した事を後悔させてやる!」 そしてスチュワートと愛人は全てを失う事に… 設定ゆるゆるの架空の世界のお話です。 本編5話で完結になります。 もうひとつの最終回2話←最初はこちらが本当の最終回でした。アッサリ編と前世編がありますので、どちらか好きな方をお読み頂けたらと思います。

【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。

曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」 「分かったわ」 「えっ……」 男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。 毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。 裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。 何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……? ★小説家になろう様で先行更新中

「本当に僕の子供なのか検査して調べたい」子供と顔が似てないと責められ離婚と多額の慰謝料を請求された。

window
恋愛
ソフィア伯爵令嬢は公爵位を継いだ恋人で幼馴染のジャックと結婚して公爵夫人になった。何一つ不自由のない環境で誰もが羨むような生活をして、二人の子供に恵まれて幸福の絶頂期でもあった。 「長男は僕に似てるけど、次男の顔は全く似てないから病院で検査したい」 ある日ジャックからそう言われてソフィアは、時間が止まったような気持ちで精神的な打撃を受けた。すぐに返す言葉が出てこなかった。この出来事がきっかけで仲睦まじい夫婦にひびが入り崩れ出していく。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...