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第1章 旅立ちまで

15 あれから②

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メルディー先生、フェルト先生の二人の視線の先に見えたのは黒い靄を出した巨大な羊の様な魔獣だった。
二本の黒く太い双角に赤黒く光る目白い剛毛に包まれている巨体
全身から出ている黒い靄は普通ではないものに見えた。


「はぁ…はぁ…、サキ追い付いた」
「な、なんなのあれ」
「白い剛毛に二本の黒い双角…もしかして絶望の黒双角デスペアブラックホーン…」
「な、なによそれ!」
「黒の洞窟と言われているダンジョンの最下層にいるといわれていてAランクパーティー五人でやっとこ倒せる魔獣らしい」
「な!何でそんなのがこんな村のすぐ隣の森にいるのよ!」
「俺が知るかよ!」
「フェルト先生達が戦ってるし取り敢えず急いで孤児院のテゥト先生にいいにいきましょ!!」
「あ…あぁ、俺たちがいても邪魔になるよな、サキ戻るぞ!」


ユーメナ姉さんとレンシス兄さんが後ろでギャアギャア言っているけど私はそれどころではなかった。
デスペアブラックホーンといわれる魔獣は明らかにフェルト先生が守っているマナ石を見ている。
そしてメルディー先生の技をくらいながらも少しずつだけど近づいていた。


「メルディーいきます【落ちる氷山アイスベルク】!!」


フェルト先生の掛け声と一緒にメルディー先生はデスペアブラックホーンから離れた。次の瞬間デスペアブラックホーンの頭上に巨体な氷の塊を上空から落とした。
デスペアブラックホーンの叫び声と氷の塊が当たって砕け散る音が耳についた。
崩れ落ちる巨体…離れて様子を伺うメルディー先生とフェルト先生。
暫く動かないことに安心したのかメルディー先生がデスペアブラックホーンに近づいた時だった、私には卷だあの巨体から出ている黒い靄…
そして脳裏に浮かんだ歩道橋から突き落としてきた嫌な笑みをした美女性の顔…
私は気がついたら叫んでいた。



「メルディー先生駄目!離れてー!!!!」
「え…サキ?」
「サキさん!何故ここに!?…っ!メルディー!!」
「ぐぁ!!」


メルディー先生はデスペアブラックホーンの角で横凪ぎにされ吹っ飛んだ。
フェルト先生はすぐに追いかけようとしたが何かを思い出したかのようにその場に留まりマナ石を守るようにデスペアブラックホーンに対峙している。
その様子を私達三人が動けず見ていたときすぐ近くの木の間からガッツォ先生が走り出てメルディー先生の元へと走っていった。


「メルディー!?大丈夫か!?…っ何でサキ達がここにいる!」


ガッツォ先生の声にユーメナ姉さんとレンシス兄さんが方をビクつかせた時デスペアブラックホーンは雄叫びを上げフェルト先生に突っ込んでいった。


「ち!」
「ガッツォ…私はもう動ける、キールの援護を頼む」
「ああ、これひとつ飲んどけ、お前達は動くないいな!」


ガッツォ先生がデスペアブラックホーンに近づき左後ろ足に昇天破を繰り出しバランスを崩させるその隙にフェルト先生が【焔の隕石メテオライト】を繰り出し焔を纏った隕石がデスペアブラックホーンに当たる。
土煙が立ち上った次の瞬間だったフェルト先生にデスペアブラックホーンの鞭のようにしなった尾が当たりマナ石に打ち付けられ崩れ落ちた。
その時私はフェルト先生の元へと走り出していた。
後ろで誰かが私を呼ぶ声とフェルト先生の名前を呼ぶ声が微かに聞こえたけど私の中はそれどころではなかった。


「フェルト先生!」


フェルト先生の名前を何度も呼ぶけど反応が返ってこない。
口から血が少し流れて荒く呼吸はしているから死んではいない、その事に安堵すると回りの声や様子がやっと分かるようになった。
ガッツォ先生とメルディー先生がデスペアブラックホーンをなんとか此方に来させないように攻撃をしているものの少しずつ確実に近くに来ていた。
私はデスペアブラックホーンを見ると此方に向かってこようとしているデスペアブラックホーンの目と合った。
その目は苦しく悲しそうな目…
巨体から出ていたと思った黒い靄は逆にあの巨体にまとわり付いていることが分かる。


「『』」


何故か沸き上がってくる【】という感情。
それはフェルト先生を傷つけた事とあの魔獣を巻き込んだ者への感情。
視界の端でガッツォ先生とメルディー先生が足踏みを避けて一旦距離をとったのが見えた。

「『今…助けるね…。神の意志の元に彼の者に救いの光を…【光の救いサルヴェイション】』」


頭に自然と浮かんだ詠唱
私の声と重なるように聞こえる優しい女性の声
そして私が詠唱を終えるとデスペアブラックホーンは光の玉に包まれ次第に光とデスペアブラックホーンは小さくなっていきその場から消え去った。
そして上空から落ちてきたのはデスペアブラックホーンの魔石…それが地面に落ちるのと同時に私の意識も落ちていった。


誰かに抱き締められて…




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