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魔国編
37 時を得て…
しおりを挟む「坊っちゃん、マリアン様お待たせしました」
「ああ」
「ありがとうセバスさん」
木漏れ日が漏れさざめく木々の葉音に耳を傾けながら…
世界樹の根本にある家で私とリオンはセバスさんにいれてもらった紅茶を飲みながら静かで穏やかな時を過ごしている
私がこの世界で前世を取り戻してからもう15年の月日がたった…
世界樹が枯れ始め、穢を消し去った後私は意識を失った
あの後私が次に目を覚した時には、キール様、カイルは勿論サキや力を貸してくれた創造神様達もそれぞれの世界に戻ったあとだった
3年…という長い眠りについてしまった私をリオンとセバスさんは私の側から離れずずっと目覚めるまで見ていてくれたらしく目覚めた時は抱き締めたまま一日中離してくれなかった
必ず二人のどちらからが側にいる状態が続き介護され続け、普通に歩けるようになる頃リオンに導かれながら私は建物から初めて外に出ることができた…
そして目の前の景色に目を奪われた
キラキラと輝く幾千の青葉、風になびく枝葉、包むように降り注ぐ光の粒子、枝葉の間から零れ照らす虹色の光…
汚れ枯れてしまったはずの世界樹がスチルで見た時よりもさらに大きく幻想的に目の前に存在していた
「リ、オンここは…」
「ここはあの時枯れたはずの世界樹の根本だ」
「でも穢れて…枯れたはず…」
「……ああ、そうだな。リアは意識を失くしたから知らないか…、リアが意識を失くした後だが…」
そこから聞いた話はゲームとは全くかけ離れた話だった…
ーーーーー
アースがヴェルトへと向かっていった姿を見たミールはそのまま枯れた世界樹の元へと向かった
『最後の時を分けてくれてありがとう…おかげでこの世界を護れたわ』
ミールは枯れた世界樹の枝を触り神力を込め始めた
『でもこの世界には世界樹が必要なの…だから新たな礎として貴方の全てを貰うね』
そのまま瞼を閉じミールは枯れた世界樹へ己のすべての神力を注ぎ始めた
「ミール様 !!」
ミールが謝った声が届いたサキは枯れた世界樹に神力を注ぎ始めたミールに驚き何をしようとしているのか分かり走り寄って行った
後少しというところでシャィーンと不思議な音がしサキは前へ進むことは出来なくなった
「ミール様 !! ここを、これを解いてください !!」
『ミール !!』
『ミール !!』
サキが走り始めたのとほぼ同時にアースとヴェルトもミールの元へと走り寄っていた…だが二人もその膜の中へと入ることはできなかった
『これを解けミール !!』
『お前、何をしているのか分かっているのか』
アースとヴェルトの言葉にミールは振り向き微笑んだ
『分かっているわヴェル…』
『それがどういう意味か分かっているのか !?』
『うん、アース』
『なんで、なんでだよ !! こうしてまた会えたのに !!』
『私はヴェルトが創ったこの世界もアースの創った世界も…大好きなの、それぞれの世界にしか無いものがあり、それを築き世界を広げていった命あるもの全てが大切なの』
『ああ、だからこうして俺も来た』
『面倒くさがりのヴェルが助けに来てくれてすごく嬉しかった』
『世界樹を生やすなら僕も手伝うよ !!』
『アース…』
『だから消えようなんて考えるなよ !! ミールが消えたらディスティニはどうするんだ !? また、俺達がみてろなんて言わないよな !!』
『…ディスティニの次の管理者はもう決めてあるの』
『なんだって ??』
『誰だよ !!』
ミールの言葉に二人は驚いた表情をしサキの方を向いた
『まさか… 』
『いいえ、サキではないわ』
『ならば、あのエルフか』
『フフ、バレちゃった ??』
ヴェルトが何かに気付いたような反応にアースは誰だと詰め寄る…そんな姿を見てミールは笑った
「ミール様 !!」
段々と薄くなり始めた姿にサキはミールの名前を読んだ
『サキ、私のせいであなたには辛い人生を遅らせてしまった…でもこうして2度目の人生であなたが幸せを掴んだ姿が見れてとても嬉しかった』
「私は、私は貴女がいたから !! こうして転生できて、キールにも逢えて色んなものを手に入れれたの…これからも私は貴女と共に沢山のことを知って楽しんで悲しんで喜んで怒って !! 生きていくつもりだったの !!」
『それはとても楽しそう……ありがとうサキ』
「そんな最後の別れみたいに言わないで !!」
『サキ…私はまたあなたに会えると信じてるの、ううん、分かるの…次に会う時サキはきっと私を色んなことに導いてくれるって』
「そんな、こと…ふっ…」
『だからサキ…次会うときは笑って』
ミールの言葉にサキは零れ落ちる涙を止める事はできず言葉も返せずただ泣いた
そっと追いかけ隣に立ったキールがサキを抱き締めた
その姿を見てミールは微笑みアースとヴェルトの方へ視線を向けた
『アース、ヴェル』
『お前が決めたことなら何も言わん』
『僕は許さないよ !! ミール今ならまだ、また眠れはこうして会えるんだ !! 君自身を犠牲にしてまで世界樹を生やそうとしないでくれ !!』
『アース、もうよせ』
『黙れ、ヴェルト !! ミール !!』
『アース…私は自分を犠牲にするなんて思ってないわ、全ての神力を注ぎ世界樹に生命を与えればたしかに私は神として存在できなくなってしまう…消滅するわ』
『そんなの僕は嫌だ !!』
『でも魂まで消えるわけではない…だからアースやヴェルトにもまたいつか会えるわ』
『そんな、そんなのって…』
『アース、お前がなんと言おうとミールはもう決めている。穢消滅していくよりも世界樹の一部として、時が立ち神ではなくとも命を持ち生まれ変わる方が俺はいいと思うぞ』
『…っ…ああ、くそ !! そうだな、穢消滅するよりも良いことだよな !! ミール !! 絶対また、また俺達三人で世界を見守るんだからな !!』
『うん、ありがとうアース』
『行動する前に一言相談してほしかったがな』
『ごめんね、ヴェルト』
『仕方ない、新たな管理者を厳しく躾けといてやる』
『フフ、あまりいじめ過ぎないでね』
『ならば早く戻ってくる事だな』
『ええ、約束するわ』
ミールがそう言いマリアンの方を向き僅かな神力をマリアンへ飛ばした
それは柔らかくマリアンを包むと消えていく
『ありがとうマリアン…』
そう呟き、アースとヴェルトに視線を戻し微笑んでミールは粒子となり世界樹の中へと消えていった
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