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幼少期

リオンside

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マリアンと出会い過ごして二年半…
今日はマリアンの6歳誕生日…そして披露の日
ついに今日か…。
俺は深い溜息をつきながらセバスが見繕った、紺色の服に金の刺繍がところどころ施された騎士風の燕尾服と白いズボンを着ている。
なぜこの洋服なんだ…どこの騎士だ…。
もう一度深い溜息を付きセバスを睨むと平然とし微笑み返してきた。


「お似合いですよ。坊っちゃん」
「俺は普通でいいと言ったはずだが?」
「せっかくの婚約者、マリアン様の誕生日に普通ではつまらないではありませんか。それに黒では良くありませんので」
「ふん…。貴様はそうやって俺をいつも上手く誤魔化し動かすのだな」
「お褒めに預かり光栄です。坊っちゃん」
「ちっ…」
「さ、マリアン様もお待ちです。そろそろ屋敷へ向かいましょう」
「…はぁ…分かった」
「畏まりました。」


セバスに背を向け外に待たせてある馬車の元へ行き、先に乗っているエイザルと共にカーリヒルト公爵家へ俺は向かった。
会場へ入るなり一瞬で周りは静かになった、エイザルと共にいるためか興味の視線も感じられるが嫌悪と畏怖の視線

ちっ…ジロジロと
だが所詮はこんなものか

マリアンに会うまでは屋敷内でも外でも感じ続けた嫌悪と恐怖、畏怖の視線の視線。
マリアンとともに過ごすことが増えたのか慣れたはずの視線も不快に感じる…
少しずつ苛立ちが体の中で登り始めた。

やはり、帰るべきか…。

壁に持たれ、こちらに視線を送る輩に冷えた視線を送れば逸らすそんな奴等の相手をしていると…ホールの扉が開き始めると静かになっていたはずの連中がざわつき始めた。
他の奴等の視線の先を辿り階段上にいる人物を見ればカーリヒルト公爵とそこに現れたのは、いつもは下に降ろしているのを上に一つ纏め緩やかなウェーブがかかっている髪、そのピンクアメジストに合う紅い宝石ルビーの花飾り…。
幼さい少女を落ち着かせた大人び始めた雰囲気にさせる水色の膨らんでいないドレス。
その姿は俺がいつも見ているマリアンとは全然違い6歳の筈なのに綺麗だと思ってしまった……
カーリヒルト公爵の挨拶など欠片も入ってこず気が付くと、マリアンが挨拶をし始めていた。


「皆様、この度は私マリアン・カーリヒルトの為にお集まり下さいまして誠にありがとうございます。まだまだ淑女として怠らない所も多いと思いますがどうかよろしくお願い致しましゅ……。」
「ッ!…………クク…」


最後の最後で締まらないマリアンの挨拶につい笑ってしまった。
口元を押さえ声を出さぬよう肩を少し震わせながら笑っている姿など誰にも見られたくないものだ。
あいにく周りはそんな俺に気づかずマリアンを唖然と見ながらコソコソ話し始めていた。見られていないのは助かるが周りがマリアンに興味を持ち始めたのは気に入らない。


「…クク…」
「リオン様…。マリアン様はまだ6歳なのですよ、それをあそこまで挨拶できるのは本来なら凄いことなのですが…。」
「ああ…分かっている。」


なんとか落ち着きを取り戻し無表情に戻すと音楽が流れ始めた。
カーリヒルト公爵は婦人の元へ向かったようだが…
マリアンを見るとメイドの方へ一人で歩いていき壁の花になろうとしている。

まぁ…これで、悪い虫がつかなければ別にいい。

そう思っていたが…マリアンの周りには様々な男が群がっていく一応断っているが…あの様子だと強引に…


「強引にダンスをされようとする方が現れますね」
「はぁ…。俺が行くお前はカーリヒルト夫妻にこのことを伝えてくれ」
「畏まりました」


他のやつに触れられる前にマリアンをつれうまく抜けるか。
マリアンをに群がる奴の元へ足を進めれば気付いた子息共は逃げるように離れていく。
残る奴に睨み進めば道ができるようにマリアンまで開けた。
目の前付き見れば遠くで見るよりも更に可愛く綺麗に見える。
手を出し「…踊ってやる…」と言えば手と顔を何度も見たあとマリアンは頬を染めながら手を取り頷き見つめ返してきた。
そんなマリアンが俺の中でとても愛しく大切に思えた

……もぅ少し優しく誘えばよかったか

そう思いながら中央へエスコートしゆっくりとしたテンポの音楽に合わせマリアンをリードしながら踊る。
俺よりも小さいが踊れない事はない。
引いて近づければ熟れて落ちてしまいそうな程の顔になり俯く
そんなマリアンが愛しく感じ自然と顔が緩んでいるのを俺は気づかなかった。
ダンスが終わりに近づいたときマリアンから声をかけてきた。


「リオン様、ありがとうございます」


頬を赤く染めながら潤んだ瞳でこちらを見てくる。
そんな顔を見せられた俺の方も赤くなりそうな気がした。
マリアンを見ることができず顔をそらし……


「……別に、僕はこの後抜ける、その口実を作っただけだ」
「そ、そうですか…」


そう、答えればマリアンは残念そうに俯いた。


「お前はどうするんだ」
「え?」


マリアンは俺が言った意味がわからなかったのか首を傾げた。


「だから、お前はこの後まだここに残るのか?」
「 え、あ!私も疲れましたので一緒に抜けたいです」


頬を染めながら嬉しそうに微笑むマリアンをこれ以上周りの奴らに見せたくなくなった。


「…そうか。」


そう言い終わるとタイミングよく音楽が終わった。
マリアンの手を引きこの会場から抜けようとすると、目の前にカーリヒルト夫妻とエイザルが立っていた。
その顔は嫌な笑顔が張り付いていた。
心の中で舌打ちをしているとカーリヒルト公爵が声を上げ始めた。


「皆様、楽しんでいるところ大変失礼します。我が娘マリアン・カーリヒルトと隣にいるリオン・マギア・グラアモールは本日婚約した事を発表させていただきます。不満がある方もいらっしゃると思いますが、本人達もこのように仲が良いのでご心配なく、見守ってもらえたらど思っておりますのでご了承下さい。」


その発言に俺はエイザルを睨みつけると、ニヤニヤしながらマリアンと俺を交互に見た。
顎でマリアンを指しているのがわかりマリアンを見ると驚きながらも嬉しそうに頬をそめている姿が見えた。
その瞬間俺は口元を手で抑え隠しマリアンに見えないように横に顔を逸らした。

こんな顔をマリアンに見せられるか…

そんな様子をカーリヒルト公爵やエイザルは微笑ましそうに見てきていた。
その後すぐに俺達は的にならないよう会場をあとにすることを進められた。
マリアンを一人で部屋に帰らせるわけには行かないためエスコートする。
部屋の前に着くと、残念そうに、物足りなさそうにこちらを見つめながらボソッ…と(おやすみなさい、リオン様)と呟き扉を閉めた。
マリアンが6歳でよかったと俺は心の底から思ってしまったのは誰にも言えない事だった。
その後会場から戻ってきたセバスにマリアンとの婚約について秘密にすることを教えてもらった。
それがマリアンが時折呟く不可解な言葉のせいだと言う事をカーリヒルト公爵に後日聞いた。
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