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第七章 君が多々良さんで、僕は

答え合わせの美少女(1)

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 彼女に会うなら、月曜日しかないと思っていた。
  
 橙色の柔らかい光が、木々に、地面に、すべり台に、ぶらんこに当たる、あの場所しかないと思った。
  

 風が吹く。葉の緑の匂いが鼻をかすめた。
  
 つみき公園には、カッターシャツの少女。
  薄水色のジャングルジムのてっぺんに腰掛けて、本を読んでいる。
  
 この場所で、一番美しいものが、一番目立つところにある、正当性。
  
 黒髪は、風が吹くたび、揺れ動き、ふわふわと舞っているようだった。
  
真っ白いシャツは乱れることなく、制服のリボンにシワひとつなくて。プリーツスカートは彼女のを柔らかく包んでいて、ぴったりとした紺色のハイソックスは彼女の肌と対比されて。
  

 少女はこちらに顔を向ける。
  
 靄が、少女の顔を覆っている。
  
 見たい。

  見たい。

  見たい。


  見たくて、たまらない、顔。

  心臓が、破れてしまいそうなほどの、感情は欲望と言って差し支えないかもしれない。
  取り払えるのならば、手で払ってしまいたい靄。

  彼女の顔が見えるのならば、僕は、目をえぐり取って交換する。
  靄に包まれた彼女は、透明な声で僕に話しかける。


 「遅かったわね」

  ああ、多々良さんだ。
  たった一言声をかけられただけで、感傷に浸ってしまう。

  ジャングルジムをとの距離は一メートルほど。てっぺんにいる彼女との距離はそれ以上。


 「あなたがこの公園にくる月曜日を待っていたんです」

 「そうね。週に一回だけしか、この公園にくることはないから、当たり前の選択よね」

  神様みたいだった彼女の発言を、卑しくも拝借して突きつけるならば


「ダウト」


  眉がピクリと動く。


 「ダウトです。多々良さん。いや、小椿さん」

  彼女の言葉には、嘘が多く含まれていることを、僕は知ってしまった。

  回りくどい彼女の罵倒の数々の中にある、本当を、僕は気付いたから。


  だから、月曜日。
  小椿さんに会うための日に、やってきたのだ。


 
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