美少女の顔に触りたい、月曜日

第六章 多々良さん探し 開始

君は小菊さん（１）

「こないで！」


 　という叫び声も続いて聞こえる。
　小菊さんの声だ。誰に言ってるかなんて―――考える前にわかってしまう。
 　
　僕が図書室に辿りつけば、異様な光景が広がっていた。
　
　床には逆さまになった本が数冊、多分小菊さんが投げたもの。
　ペンも、消しゴムも、さくほど小菊さんの周りに会ったものすべてが落ちていた。
 　
　図書室のカウンターの中には誰もおらず、小菊さんは腰が抜けたように図書室の真ん中で座り込んでいる。
 　
　入り口に立つ僕と、床に座る少女の間を遮る壁のように、次郎丸三郎が立っていた。
 　三郎はこちらを振り返ることなく、ただ、小菊さんを見つめていた。
 　右手に、シャーペンを持って。
 

「多々良、オレは、お前に、危害を、加えたいわけじゃない」


 「信じられるわけ、ないでしょ！」

 　長身の壁のためか、または位置関係のためか、小菊さんから僕は見えていない。


 「告白、を、もう一度、したくて」

 「この前、振ったでしょ！」

 「そうじゃ、なくて」

 　歯切れ悪く、次郎丸。

 　普段の彼は、こんな、日本語を覚えたばかりのような話し方はしない。
 　長身の男は何も喋らない。声を発せずに、一歩、小菊さんの方に近づいた。すぐさま逃げようとするけれど、
小菊さんは足に上手く力が入らないのか、立つこともできない。


 　巨人の様な大きな一歩。

 「こな、いで」

 　いたいけなセーラー服少女まであと一歩というところで、次郎丸は立ち止まり、シャーペンを構えて―――。

 「いや、それは駄目だろ！」