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第三章 最後の攻略者襲来!

騒がしいお昼ご飯(6)

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「妹に、いやらしい目を向けないで頂けますか」
「こんな、ちんちくりんに、誰がいやらしい眼をむけるか!」

 ち、ちんちくりん……!

 テオが小さく笑ったのを、私は聞き逃さなかったぞ!
 食堂の中、生徒会長と生徒会長補佐が火花を飛ばしあっている様をみて、周りに生徒が私たちを中心に円を描くように集まってきている。

 注目の的だ。

 意識した瞬間、落ち着かなくなってくる。
 こんな、人の視線を浴びることなんて今までなかった。

 どうしたら……いや、まて、落ち着こう。
 今は、周りの人たちより、目の前のディオン様だ。

 彼の言葉に怒り、ここでちょいと反論でもしたら、彼の好感度が上がってしまう。
 彼は、批判されることに慣れていない。

 クルト君のように、真正面からぶつかってくる人間に好意を持つ傾向がある。
 選択肢でもそうだった。

 であれば、ここは、従順におとなしく、笑っていればいい。
 そうすれば好感度は上がらない。

「ディオン様のおっしゃる通りですー」
 にこにこ、と愛想笑いを忘れない。

「レイラ、言い返していいんだよ? 君はとっても魅力的な女性なのだから。もし、ディオン様が、王族であるかもしれないことを思っているなら関係ないからね」

「おい、王族かもしれないってなんだ、俺は正真正銘この国の第三王子だ!」

 言い返すディオン様の声など耳にも入れず、クルト君は私の頭をなでる。

 な、慰められている。

 大きな掌が、少し気持ちいい。
 と同時に、三次元の男の人の感触に、瞬間で頭に火が付いた。

「あ、あわ、ク、クルト君、大丈夫だから」

 今すぐ、撫でるのをやめてください。うろたえます。
 ろれつが若干回らない。

 思考もできない。

「大丈夫、だよ、クルト君、私別に、この人に、特に興味ないし」
「あぁ?」

 地獄の底から出たような嫌悪の声は、ディオン様から聞こえた。

 噴き出すような笑い声は、テオとクルト君だ。

「今なんて言った、妹」

 いけない、ディオン様が私に興味を持ってしまった。
 これはまずい、これは本当にまずい。

 しかし頭が撫でられたままだ。
 この状況を打破するための言葉が考えられない―――いや、もう手遅れ。

 ならば、クルト君の庇護下であるということを活かし、徹底的に嫌われるしかない。
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