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第三章 最後の攻略者襲来!

騒がしいお昼ご飯(2)

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「最近、レイラが元気ないって聞いてさ、もしかして学校でいじめられてるんじゃないかと思って、でも、考えすぎだったみたいだね。レイラの友達に敵意は一つもなかったし、同じ授業を取る人間全部を見ても、特に問題のある奴はいなかったし。あと、レイラの担任教師も、特に悪い魔法を使った履歴はないし」

 今、さらっと恐ろしいことを言った気がする。
 敵意を見る魔法だとか、対象の人間が使った魔法の記録を盗み見る魔法だとか。
 というか、私の交友関係すべて確認されている……?

 いやいや、クルト君の好意だろう。

 好意からしてくれた行いだ。悪くは言えない。
 うん、過保護……ううん、考えない、考えない。

 一瞬だけ、テオもギョッとしていたが、どうやら彼は聞かなかったことにしたらしい。

「レイラにはテオもいるし、大丈夫だとは思ったんだけど、やっぱり、心配だから……元気出してほしくてさ」

 つい先日、死にかけた身としては、反省するしかない。
 テオにみっちり5時間ほど怒られた、あの件は、クルト君も知らない。
 アカツキ君の正体について、テオにも言っていない。

「心配してくれて、ありがとう、クルト君。でも、大丈夫、私、元気!」
 ふんす、と力こぶしを作ってみる。

「あはは、そうだねっ」
 笑いしわを作って、クルトくんは大きく笑ってくれた。

「ちょっと―――考えなきゃいけないことがいっぱいあって、ね。それでぼーっとしてたからかもしれない」

 そう、考えなきゃいけないことは、たくさん、ある。

 この世界に、もう一人の転生者としてアカツキ君がいる限り、彼のルートは望めない。
 そして、彼が少しでも関わる事柄は、イベントとして変化が訪れる。
 ほんのわずかな、間接的なかかわりであっても。

 クルト君と一緒にお昼ご飯を食べるイベントは合っても、細部は変わってきている。
 細部が違った―――もとい、今回の場合は、導入が違ったせいで、避けるべきだったクルト君のイベントに入ってしまった。

 本来なら、中庭でお昼を食べようとしていた私に、クルト君が「生徒会の雑用を手伝ってくれないか」とお願いにくるのだ。

 本来ならば、そこで断れば、イベントは始まらなかった。

 アカツキ君の影響は、少しずつ、少しずつ、ルートを狂わせる。
 彼が、悪いわけではないのだけど。

 そう、望みを叶えるものが悪いのだ! このっ!

「考えなきゃいけないこと?」
「あ、うん……えっと、魔法のね、薬草の調合方法とか難しくって」

「なんだ、そんなことか、一年生の範囲なら、教えられると思うから、どんどん頼って欲しいな」

 主席を、入学時からキープしてるクルト君に、教えられない魔法はないだろう。

「そうだね」

 ただ、彼のルートのエンドは遠慮したい。このまま話を続ければ、放課後に二人っきりの勉強会にでもなりかねないため、話を逸らす。

「そ、そういえば、クルト君、生徒会は楽しい?」
「生徒……会?」

 一瞬、一瞬だけ、クルト君の周りの空気が邪悪なものに変わった気がした。
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