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第二章 現実に選択肢はなし?

白い世界、望みを叶えたい彼は(3)

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 愛ちゃんの声だけが聞こえて、初めて自分が声を出せていたことに気づいた。

「愛ちゃん……」
「イベントのずれは、あなたの行動により、ありうることでした。けれど、これは、私の予想の範囲から外れてます。レイラさんには、悪いことをしました」

 本当に申し訳なさそうな声で、愛ちゃんは言う。

「どうやら、願いを叶える者との行き違いがあったようです。本当なら、彼は、別の世界戦の「まじ☆ふぁん☆えたーなる」に転生させるべきだったのに」

「……ねぇ、愛ちゃん、私って、また死んじゃったの?」

 一番聞きたかったことを聞く。

「はい、そして、いいえです」
 どっちつかずの回答だ。

「イベントのずれにより、あなたは、鏡の中に取り込まれ、その魔法に耐えきれず、死にます。
 死ぬはずでした。ただのイベントのずれならば、私は、あなたを助けません。
 けれど、今回は、私と、望みを叶えるものが起こした過ち。
 時を止め、記憶の狭間に投げ入れて、助けました。」

「じゃあ、私は、生きているんだ……」

「ええ……本当に、申し訳ありません」

 しん、とあたりは静まり返る。
 愛ちゃんは喋らない。

「そんなに、謝らなくてもさ、私、結局、問題なく生きるわけだし、何にも問題ないよっ!」
「いえ、愛を伝えるものとして、あなたの恋の愛の対象を、一人、失うことになります。彼は、ルート通りには動きません」

 そうだ。
 アカツキ君が転生者である限り、私の予想を超えた動きをする。

 つまり、彼と一緒になるエンドを目指し、万が一叶ったところで、そのエンドは必ずしも幸せであると限らないのだ。

 オラオラ系は嫌だ、軟禁のようなエンドは嫌だ、と消去法で選んだ攻略相手であった、アカツキ君。
 何よりも、平和に過ごしたかった、幸せになりたかった私は、彼を―――選びにくい。
 彼も、私を選んでくれるとは限らない。

 もしも、私が、本当にアカツキ君に恋をしているのならば、彼を愛しているのであれば。
 事実が明らかになったとしても、彼の傍に、ずっと、いたいと願うだろう。

 けれど。
 そんな感情は、わかなかった。

 三次元の、前世と今生、生きてきた今までで初めての、性別の違う友達。
 ただ、それだけの存在になってしまったのだ。
 今、この瞬間。
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