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第二章 現実に選択肢はなし?

アカツキ君の謎(1)

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 魔法学校での日々は、初回で少々狂いはあったものの、順調に進んでいた。
 学校が始まって、二週間、友達もできたし、先生との関係も好調だ。
 
 これ以上なく生活自体は順調だ。
 だからこそ、今のうちに、自分の方向性を考えなくてはいけないだろう。
 私が、何を大事にし、何を持って行動すれば幸せになれるのか。
 
 もはや幸せとは何か、の哲学的問題になってきてしまってる気がする。
 もし私が、転生者とかではなく、ただの人間としてこの世界に産まれていたら、こんなに考えることはしなかったのだろう。
 
 知ってしまっているからこそ、問題なのだ。
 今、こうしてストーカーしているアカツキ君が、これから悪質なクレームをつけられることを、私は知っている。
 
 順番的に三つ目のイベントだ。
 
 入学式の次の、二つ目の、食堂でのイベントはすでにクリア済みである。
 お弁当とお金を忘れた彼に、私のお弁当を半分差し出した。
 入学式の時とは違って、普通に終わった。
 
 会話の細部は違うかもしれないけれど、それでも、私が想定してたままのイベントだ。

「入学式の時は、何が違ったんだろ……?」

 はてさて。
 本日は魔法学校はお休み。私は一人、街に出ていた。
 主にアカツキ君とのイベントのためである。

 彼が働く仕立て屋さん『シャイニー・フェアリー』は、もうすぐ開店する。
 それと同時に、クレーマーがあの店に押し掛け、イベントが起こるのだ。

『あなたの店で買ったドレスを着ていたから、社交界で笑われたのよ!』
 というクレームである。
 
実際は、クレーマーの社交界でのマナーが悪かったせいで笑われていたのだ。「あんな素敵なドレスを着ているのに、品性は伴っていないね」と。
 
 それを知らないアカツキ君と、そのクレーム現場に居合わせた私は困惑する。
 クレーマーには、ひとまずその日はお帰り頂いて、私とアカツキ君は原因の究明をするのだ。この町の千里眼を持つ人の元に会いにいき、過去を見ることによって。
 
 この件から、アカツキ君の過去を少し見ることができるのだが。
 彼の母親がすでに亡くなって居ること。
 それから、彼が実は王族の血を引いた存在であることを。
 
 母親が王族の血を引いており、駆け落ち同然で彼の父親と結婚したのだ。
 田舎町に小さな仕立て屋を営む中、彼の母親は持病で亡くなる。
 アカツキ君の父親は、それをきっかけに王都に仕立て屋の拠点を移し、経営を開始した。
 彼女と一緒に作ったドレスを、より多くの人に知ってもらうために。

 まぁ、知ってるのだけど。
 手順を踏むことは大事だ。
 私が、話してもいない、アカツキ君の過去を知っているのは、少し怖いだろう。

「なぁ、黒髪の男に会うなら、さっさと会おうぜ? なんで物陰に隠れてんんだよ」
「しーっ! テオはお口閉じといて」
「オレは子供か」

 文句を言いながらも、深く聞くことはせず、テオは黙った。
 物陰から、アカツキ君の仕立て屋を、開店前から監視する。

 なんてストーカーめいた行動なのだろうか。
 私だって、不本意なんだよ。知らなかったら、もっと自然にできたんだよ
 
 気温が暖かくなってきたから、それ用のドレスが欲しくって、アカツキ君の仕立て屋に来た―――とか、そういうことを自然に言いたかった。
 
 いや、いたしかたない、いたしかたない。

「予知……そう、予知したの。今日、アカツキ君が不幸に会うってだから、様子見!」
「……お前が言うなら信じるけどなぁ」

 腑に落ちないという体であるが、テオは大人しくしてくれている。
 ぽろっとでたウソであるが、もしかしたら、これは良い言い訳かもしれない。

「あっ、開店した!」
 黒髪の男の子が、店の中からひょこっと頭を出した。
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