嘘つき山猫は赤面症

nyakachi

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独り暮らしと独りゴト

好きになったらその人がタイプ

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好きになったらその人がタイプ

なーんてのは、可愛いコやイケメンがいってサマになるもんだ。

盛り上がる男女を横目にビールジョッキに入ったコーラを一口あおる。
居酒屋メニューは好きだ。
お酒を飲むと頭痛がするため、めったに居酒屋など酒が出る場には出ない。
というか、そもそもよく知らない人と食事なんかしたくない。
だが定時を少し過ぎたあたりで、既に私服に着替えた先輩に肩を掴まれれば、それを振り払えるほど人間が強くない。
諦めてトボトボついてきたのは私が弱いからだ。

「えー、タイプー?
   やだー、聞いてどーするのー?
   私のこと狙っちゃう感じー?」

おー、こんなこと言う芸人さんいたなー。
総勢10人ほどの集まりの中、キレイ所要員の彼女は同期の清水さん。
終業後だというのに、崩れないメイクとふんわり巻髪は形状記憶合金ではないかと疑いたくなるほど朝と変わらない。
1人隣を挟んだ斜め前、前左右と男性に囲まれてきゃらきゃらと笑う。

「いや、だってこんなにかわいーのにフリーなんだもん、聞きたいよねー?」

こくこく頷く男性陣。
因みに男性7人、女性3人。
清水さんは5人の男性に囲まれている。
先輩は先輩の同期の男性とその友人(?)と話している。
2つのグループの間に挟まれた私は、コーラと『山盛りカリカリポテト』なる皿いっぱいの揚げた芋をつまみながら空気になる。

「タイプなんてわかんないよー。
  好きになったらのその人がタイプだしー」

あー、清水さん。
この間言ってた細マッチョじゃなかったんですか?
自分より背が高くてー、とか言ってましたが清水さん、確か貴方165とかですよね?
ヒール履きたいからそれ以上が好ましいとか聞いたけど。
清水さんのキレイ系な顔立ちだとやっぱり様になるよな。

コーラを一口嚥下して、ポテトを食べる食べる。
 
「今は彼氏より仕事かなー」
「エー、若いのにもったいないよー、今度またこうやって飲もうよ」

副音声は『2人で』かな?
勝手な想像にニヤける顔をジョッキを傾けることで隠す。

ん?

「あ、ポテト食べます?」
ジョッキを下げると隣の男性が顔だけ向けている。

さっきからポテト食べすぎて、唇が塩辛い気がする。
そそ、と幾分減った皿を動かして取りやすいように移動すると苦笑された。

「いや、いいよ」

芋臭いって思われたのかな?

口の中から熱くなった顔を冷やしたくて、つい小さくなった氷を吸い込むようにコーラを含む。

チラリとスマホの時計を見ると、既に8時を回ってる。
コーラとポテトで1時間。
こんなんで腹を満たすには物足りない。
かと言ってがっつり食べるほど肝は座っていない。

はぁー。
氷のおかげて冷たい吐息が漏れた。

また、チラリと隣の男性が目を向けてくる。

「退屈?」
ええ、そりゃーもう。
「そんなことないですよ」
「へー」
興味ないなら聞くなよ、とは大人だから言わない。
「男いないの?」
直球だな!
「モテナイんで」
わかりきったこと聞くなよー
「なんで眼鏡なの?」
「視力悪いんで」
「コンタクトは?」
「異物混入は無理です」

なんだこれ、新手の拷問か?
非リア充への洗礼か?

正しい回答がわからない。
目がくるくるまわりそう!
助けて、先輩!







そういえば、先輩は我が子じゃなくても谷に突き落とすタイプの人だった。
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